貿易摩擦高まれば、22000~22500円台の中での神経質な動きへ

著者:出島 昇
投稿:2018/06/04 18:05

先週は、イタリア政局の悪材料でいったん急落するも、22000円を守って推移

 先週の予測では、6月12日の米朝首脳会談がいったん中止発表されたものの再び再開される可能性が高まり、北朝鮮リスクが後退して、下値は限定的になるとし、25日移動平均線を回復できれば、戻りを試す動きが想定できるとしました。

 週末には5月の雇用統計を控えるものの好調な結果であればアメリカ株高となって日経平均のサポート要因になるとしました。

 結果的には、イタリアの政局不安から欧州株の下落、つれて連休明けの5月29日(火)のNYダウは一時500ドルを超す下落となったことで30日(水)の日経平均は、一時22000円を割れる全面安となりました。その後はイタリアの政局が一服するものの貿易摩擦懸念や円高方向の動きがでて戻り弱く22000円を下値にもみあい状態となって▼30円の22171円で引けました。

 28日(月)は、中止されていた米朝首脳会談が再び開催に向けて動き出したことで北朝鮮リスクが後退し、△30円の22481円と小幅続伸となりました。

 しかし、材料不足のため売買代金は4月2日以来の2兆円割れの1兆8136億円と低水準でした。

 29日(火)は、前日のアメリカ市場は休場でしたが、イタリアの政局不安を背景に欧州株が下落した流れを受け、対ユーロでの円高進行も嫌気され▼122円の22538円と3日ぶりの反落となりました。

 30日(水)は、前日のアメリカ市場でイタリアの政局混乱を受け欧州株が大幅続落し、これを受けてアメリカ株式も急落(NYダウは一時500ドル超の下げで終値は▼391ドルの24361ドル)となったことで、日経平均も▼306円の22051円で寄り付き、一時▼426円の21931円と22000円を割り込み、終値は▼339円の22018円で引けました。

 31日(木)は、前日のアメリカ市場でイタリアの政局不安が一服したことで、NYダウが△306ドルの24667ドルと大幅反発し、これを受けて日経平均も△183円の22201円と反発しました。

 週末の6月1日(金)は、前日のアメリカ市場でトランプ政権が、EU、カナダ、メキシコに追加関税の発動を決定したことで貿易戦争の懸念からNYダウは▼251ドルの24415ドルと反落したことで、日経平均も売り先行で始まり、一時▼103円の22098円まで下落するものの、売り一巡後はドル高・円安の動きを支えにプラスに転じ、一時△115円の22316円まで上昇しましたが、結局は▼30円の22171円で引けました。

 しかし、6月1日(金)のアメリカ市場では、注目の5月雇用統計は、非農業部門雇用者数は予想を上回り、失業率は3.9%→3.8%と2000年4月以来の低水準となりました。これで6月のFOMCでは、追加利上げが確実視され、年内利上げの回数が増加する可能性があります。本来ならば利上げペースの加速懸念で株価は上昇しずらいところですが、賃金の伸びが市場予想並みだったことでインフレ懸念が後退し、NYダウは△219ドルの24635ドルとなりました。シカゴの日経先物は△145円の22365円でした。

貿易摩擦高まれば、22000~22500円台の中での神経質な動きへ

 イタリアの政局リスクの後退や、週末のアメリカの5月雇用統計の好結果を受けて、アメリカ株式が大幅高となっていることで先物主導で戻りを試す展開が想定されます。

 その場合、まず22000~22500円台の中での戻りであり、問題は25日移動平均線を突破して戻りを試せるかどうかは、貿易摩擦によってアメリカ株式がどう動くかに影響を受けることになります。6月12日の米朝首脳会談まで順調に進めば先物主導での買いが期待できます。過去の経験則からは6月を月間ベースでみると、月後半には3月期決算企業の株主総会を控えているため、個別企業の好材料が出やすく、1月に続いて上昇確率が高い月となっています。

 ただし、8、9日にカナダで開かれる主要7カ国首脳会議(G7)が開催されますが、先週、トランプ政権がEU、カナダ、メキシコに鉄鋼、アルミの輸入関税発動を発表し、各国はこれに対して報復措置を表明しており、貿易戦争の懸念が高まっています。2日(土)のG7財務相・中央銀行総裁会議では、カナダが議長総括としてアメリカの輸入制限を名指しで批判しました。トランプ政権の対応次第では神経質な取引になってきます。

 本日は、先週末のアメリカ株高と109円台後半の円安を好感し、買い先行で始まり、日経先物買いを支えに後場は一時△344円の22515円まで上昇しました。今週はメジャーSQを週末に控え、先物主導の売買が想定され、本日は目先筋の買い戻しが入って一時22500円台を回復しました。25日移動平均線(約22500円水準)を一気に抜けると調整、一巡感もでるところですが、外部要因の不透明なままでは考えにくく週末のSQを前に大きな上下動も考えられるところです。

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(指標)日経平均

 先週の予測では、25日移動平均線を下回って引けているので、調整が少し長引くとし、基本的には22000~22500円のレンジの動きと想定しました。

 週前半は、イタリア政局不安からの欧米株式の急落を受けて5月30日(水)は一時22000円を割り込み、終値では22000円台を守ったものの、その後はトランプ政権のEU、カナダ、メキシコへの追加関税の発動決定で上値は重く、22000~22500円のレンジの前半でのもみあいとなり、週の終値は▼30円の22171円でした。しかし、大引け後のアメリカ市場では、5月の雇用統計の結果を受けて株式は大幅高となり、シカゴの日経先物は△145円の22365円となっています。

 今週は、先週末のアメリカの5月雇用統計の結果を受け、アメリカ株式は大幅上昇し、これを受けて買い先行で始まると思われ、貿易摩擦問題が大きくならなければ先物主導で戻りを試す展開が想定されます。基本は22000~22500円のレンジの中の動きが想定されます。25日移動平均線が22550円水準ですので、ここが現時点の上値ポイントといえます。
 

 

(指標)NYダウ

 先週の予測では、週末の5月雇用統計を始め、経済指標が株価に影響を与えることになるとしました。アメリカ経済は好調な見通しのため雇用統計が良ければ6月のFOMCでの追加利上げが確実視され、年内の利上げ回数が増える可能性が高まります、株価にとってはマイナス材料であるが、6月12日の米朝首脳会談の再開の可能性がでて地政学的リスク後退で株価のサポート要因になるとしました。

 結果的には、連休明けの週始めはイタリアの政局不安を受けて一時500ドルを超す下げとなりましたが、政局不安が一服すると好調な経済指標を受けて反発し、次にはトランプ政権の追加関税発動で大幅下落というように大きな上下動となり、週末は雇用統計の予想を上回る結果を受け△219ドルの24635ドルで引けました。

 先週末の5月の雇用統計では、雇用者数は予想を上回り、失業率は50年ぶりの低水準(3.8%)となったことで、6月の利上げは確実視され、年内の追加利上げ見通しも拡大することで、株価にとっては上値の重い展開となります。今週はEU、カナダ、メキシコへの輸入関税発動で各国は報復措置をとることも表明しており貿易摩擦をめぐる動きが注目されます。
 

 

(指標)ドル/円

 先週の予測では、トランプ大統領がいったん中止した米朝首脳会談が予定通り再開される可能性がでてきたことで、地政学的リスクが後退し、ドルが買い戻される動きを想定しました。

 結果的には、イタリア政局不安から株価の一時的大幅下落、貿易摩擦懸念でドル売り材料、一方で北朝鮮の地政学的リスク、5月雇用統計の予想を上回るドル買い材料で大きな上下動となりました。

 イタリア政局不安や貿易摩擦懸念で108.11円までドルが売られ、5月の雇用統計を受けて109.73円までドルが買われ109.54円で引けました。

 今週も、もみあいが想定されます。ドル売り材料としてはイタリアの政局不安は一服したもののイタリアの債務問題が残っていますし、EU,カナダ、メキシコとの貿易摩擦もあります。一方でFRBの利上げのペース次第では日米金利差からドル買い・円売りの動きとなります。109~111円のレンジを想定。
 

 

配信元: みんかぶ株式コラム