【井川純一の今夜も兜町で一杯】恐るべし！ＮＨＫ大河関連

　今日１１月２１日（月曜日）の日経平均株価は、１３８円６１銭高の１万８１０６円０２銭と４日続伸。終値で１万８０００円台は久々です。そして、為替はなんと１１１円突入と円安加速、少々スピード違反の気もします。今日も「秋の低位株祭り」は継続、神戸発動機<6016.T>をはじめと突飛高があちらこちらで発生中。う～ん、どこまで行くのやら。こんな時は利食い千人力、こればっかりは分かりませんが深追い禁物ですかねぇ。

　相場に勝つには、チャートに加え直観も必要となる。さらには、アノマリー（法則や理論から見て、説明できない事例）という、世にも不思議な解釈も時折だが必要になる（かも知れない）。相場の世界、この「アノマリー好き」な人間は結構多い。

　日曜日、趣味のひとつもない僕は、日がな一日だらだら過ごしていた。仕事場と称する自室にこもり、窓の外から秋の風景を、なにをするでもなく眺めていると、携帯の着信音が鳴る。金曜日に、「エンシュウ<6218.T>が急騰している」と連絡をよこした奴だ（先週末１８日に当欄で登場）。実は、奴も大のアノマリー好きで、時折、理外の理とでも言おうか、わけの分からぬことを言ってくる。

　開口一番、彼は「なっ、やっぱり“大河関連”だろ」と意味不明なことを言う。前回も書いたが、まったくもって面倒くさい奴だ。「なにが、大河なんだよ」と、適当に返した。前もって解説しておくが、彼は例年この時期になると「ＮＨＫ大河関連銘柄」とやらの活躍を唱えだす。簡単に言えば、来年の大河ドラマの舞台となる地域に本拠地を置くなど関連性の深い企業に株式市場でもスポットライトが当たるという説だ。いつごろからかは不明だが、兜町の片隅で、年末になるとそんなことを唱える者が出てくるようになった。まぁ、年末恒例の暇ネタといったところだろうか。

　「来年の大河は『おんな城主　直虎』だろ。で、舞台はどこだと思う？」と彼、「そうねぇ、どこだっけ」と気のない返事をする。「静岡県の浜松でしょ！浜松に本社があると言えば、さあなんでしょ」と、なかなか答えを言わない。「ヤマハあたりか」と答えると、「それじゃ、当たり前すぎる」とご立腹。まったくもって面倒くさい奴だ。

　ようやく正解発表である。「例のエンシュウの本社は浜松市にあるのよ。やっぱりＮＨＫ大河関連恐るべし」と、妙な感激にふけっている。彼の説では、「来年の大河関連銘柄は、静岡県全体で考えれば面白い銘柄が多い」とのこと。調べてみると、なるほどではある。浜松ホトニクス<6965.T>、スズキ<7269.T>など浜松市に限っても拠点を置く銘柄は多く、静岡県全域でみればTOKAIホールディングス<3167.T>、東芝機械<6104.T>、スター精密<7718.T>をはじめとして相当数の有望企業が存在する。

　なるほどねぇ、そう言われれば、確かにそうではあるが、まったくもって裏付けのない話なので、なんとも答えようがない。「お前、天才だな」と、取りあえず褒めてやる。褒めてやると「いやぁ、照れるなぁ」と返って来る。もう、面倒くさすぎるので、「申し訳ない、これから重要な打ち合わせがあるのよ」と言って電話を切った。当然、重要な打ち合わせなどあるはずもない。ちなみに、彼は面倒な奴ではあるが、僕の長年の飲み仲間であり、苦楽を共にしてきた愛すべき人間だ。

　再び静寂が訪れた。窓の外から見える庭では、深まる秋の空に、灯台躑躅（ドウダンツツジ）の葉がオレンジ色から赤色へと彩りを濃くし始めていた。
《ＫＣ》

出所：株経ONLINE（株式会社みんかぶ）