中国元安と豪ドル安

著者:矢口 新
投稿:2016/10/19 19:55

人民元安は中国当局が意図しているものなのか

人民元対ドル月足チャート
今年に入り人民元がじわじわと元安になってきており、対ドルではリーマンショック後から2010年の間に推移していた6.80に迫りつつあります。
この人民元安は中国当局が意図しているものなのでしょうか。

中国元の対ドルレートは、10年前の7.90台から、2013年末には6.04台にまで23%以上元高となりました。それ以降は元安で推移、直近は高値から11%以上元安の6.74台です。

この元安を中国当局が意図しているとすれば、利下げ、あるいは元売り、外貨買いによる、外貨準備高の増加が見られることになります。

政策金利は2013年当時の6%から、現状は4.35%にまで引き下げられています。これは、景気刺激策としての利下げと考えられ、元安放置も同様の効果を持つと言えます。その意味では、2014年以降の元安トレンドには、中国当局の意向が働いています。

一方で、経済成長と共に急増していた外貨準備高は、2014年には4兆ドルに達する勢いでしたが、2016年9月末には3兆1663億ドルと、2011年5月以来の低水準を更新しました。これは、外貨売り、元買いとなりますので、2014年以降の元安トレンドには逆行します。

これらを総合して判断すると、景気刺激のために金利安、元安に誘導したいが、行き過ぎると投資家が懸念を抱いたり、主要国から「通貨安戦争」の疑いをかけられるため、市場での元買いで、元安の行き過ぎを抑えるスムージング・オペレーションを行っている様子が伺えます。それでも、この1年間で元は高値6.30台から7%近く下落しています。この変動幅を見ていると、中国元はほぼ変動相場制に移行していると言ってもいいかもしれません。

中国元の今年最大のトピックは、IMFのバスケット準備通貨、SDRへの採用でしょう。SDRの今後5年間の構成比率は、米ドル41.73%、ユーロ30.93%、中国元10.92%、日本円8.33%、英ポンド8.09%と、新規採用の中国元は一気に第3の主要通貨となりました。これは、国際貿易などに占める重要性が認知されたものだと言えます。

SDRに採用されたことは、国際金融市場における中国元の存在感を高めると同時に、責任も伴い、IMFや主要国の監視が厳しくなることも意味しています。

中国元のSDRへの採用は、前回の構成比率の見直しから5年後の、2015年に行われる予定でしたが、「為替操作」がないかの審査のために、1年間遅らせたと言われています。
その結果、採用されたと言うことは、2014年以降の元安トレンドに伴う、市場での元買いというスムージング・オペレーションは「為替操作」ではなく、IMFや米国から容認されていることになります。もっとも「通貨安戦争」と呼ばれるように、IMFや米国は「通貨高」阻止には敏感ですが、「通貨安の行き過ぎを防ぐ」ことは容認どころか、内心、歓迎しているかもしれません。

今後の展開としては、米国が利上げしても、中国は少なくとも利上げの方向にはないことから、元安トレンドの進行が予想される。その程度においては、スムージング・オペレーションが継続し、外貨準備高が減少していくことかと思います。

人民元安=豪ドル安 実際の影響は?

豪ドル人民元月足チャート
豪ドルとの関連性は、中国がオーストラリアの最大の輸出先であることで、連動するイメージを持っている投資家が多いようです。
しかし、実際のオージー元は、2008年の安値4.1454から2011年の高値7.1206まで、3年間で72%近くも値上がりしました。この1年でも昨年11月の4.4691から、この10月の5.1507まで15%以上値上がりしています。

これらから、中国元安=豪ドル安は、あまり意識しないでいいかと思います。
配信元: 達人の予想