欧州金融リスク懸念で上値重い、米9月雇用統計を前に手控え

著者:冨田康夫
投稿:2016/09/30 19:43

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、週末の米9月の雇用統計発表を前に買い手控え姿勢が強まりそうだ。そのなか、欧州大手ドイツ銀行の経営悪化観測を巡り、欧州金融リスク再発懸念がくすぶり続けることが予想され、上値の重い展開となりそうだ。日経平均株価の想定レンジは、1万6100~1万6800円とする。

 市場関係者からは「石油輸出国機構(OPEC)でのポジティブ・サプライズな減産合意による原油価格の上昇で、好転したかに見えた地合いがドイツ銀行の経営不安問題再燃で一気に暗転した。今回のケースは、世界主要国の銀行株の株価下落にとどまらず、金融システム不安のリスクが高まる事態も招きかねない」との見方が出ていた。

 ただ、今週も29日を除く4日間、日銀が指数連動型上場投資信託受益権(ETF)733億円の買い入れを実施しており、下落局面では日銀によるETF買い思惑が支えとなり、極端な下げは回避されるとの見方もある。

30日の動意株

 チェンジ<3962>=連日のストップ高。
同社は27日に東証マザーズ市場に新規上場した直近IPO銘柄で、現場の業務を支援するシステムのITベンダーで、モバイル、セキュリティー、クラウド、IoT、ビッグデータ/アナリスティックスなどを用い、「NEW-ITトランスフォーメーション」と呼ぶ事業を展開していることから、IoT関連のテーマ性や成長性への期待から買いが継続しているもよう。また、直近IPO銘柄は需給面でしこりがなく、短期的な値上がりが期待できることも資金を呼び込む要因となっている。

 きょくとう<2300>=後場一段高。
同社は午後2時ごろに発表した第2四半期累計(3~8月)単独決算が、売上高39億6100万円(前年同期比1.3%減)、営業利益5億200万円(同41.7%増)、純利益3億1300万円(同30.6%増)と、営業利益が4割強の大幅増益となったことが好感されている。不採算店の閉鎖などで店舗数が前年同期比32店舗減少した影響で売上高は減少したものの、工場・プラントにおける生産性改善に継続して取り組んだことや、不採算店の閉鎖や営業時間の見直しなどを行ったことで売上原価および販管費が縮小し、利益は大幅に改善した。

 桜島埠頭<9353>=続急伸し年初来高値を更新。
政府が2025年の万博(=万国博覧会)の大阪への誘致について、前向きに検討する考えを示したことを受けて、関連銘柄として物色の矛先が向かっているもよう。同社は、万博誘致が予定されている夢洲の近隣である此花区の梅町に倉庫を保有しており、仮に誘致がなされ、大規模な開発が行われれば、恩恵を享受するとの思惑が働いているようだ。

 イオンモール<8905>=後場プラス圏に急浮上しジリ高歩調。
この日正午ごろ、消却前発行済み株数の0.23%にあたる53万4058株の自社株を、9月30日付で消却すると発表しており、需給改善を期待した買いが入っている。また同時に、長期保有株主優待制度の新設も発表し、これも好材料視された。保有継続期間が3年以上の株主を対象に、毎年2月末時点の保有株数に応じて、イオンギフトカードを贈呈するというもので、1000株~1999株で2000円分、2000株~2999株で4000円分、3000~4999株で6000円分、5000株以上で1万円分を贈るとしている。

 フジ・コーポレーション<7605>=大幅高。
29日の取引終了後、東京証券取引所の承認を受けて、10月6日付で東証2部から東証1部市場へ指定されることになったと発表しており、TOPIX連動ファンドなどによる買い需要を先取りする格好で買われている。同社は、カー用品のタイヤ・ホイール専門店チェーン。16年10月期連結業績は、売上高285億円(前期比3.3%増)、経常利益24億5000万円(同2.9%増)を見込んでいる。

 ソフトバンク・テクノロジー<4726>=一時、連日のストップ高。
29日に、ソフトバンクグループソフトバンクグループ<9984.T>が傘下に収めた英半導体設計大手のアーム社とパートナー契約を締結したことを発表し、これを材料にストップ高に買われたが、この日は、子会社サイバートラストが、「セキュアIoTプラットフォーム」サービスの提供を開始すると発表しており、これを好感した買いも入っているようだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想