市場の混乱は、売り方による悲観ムード演出

著者:小野山功
投稿:2016/06/18 09:01

〜 小野山功が見通す「来週の株価材料」 〜

★【EU離脱の道のりはまだ長い?】市場の混乱は、売り方による悲観ムード演出

来週23日(木)に予定されるイギリスの欧州連合(EU)離脱を問う国民投票を巡って、市場ではリスク回避ムードが強まっています。

16日(木)に日経平均は15500円を割り込み、今年2番目の安値圏に沈みました。週間では1,001円安と3週連続で下落しています。

また、主力以上に売られたのが新興株です。14日(火)に東証マザーズ指数は下げ幅を10.3%に広げ、約10年ぶりの下げ幅を記録しました。

創薬ベンチャーの(4565)そーせいグループは週間で28.7%安と急落。歩行補助ロボットなどの開発を手掛ける(7779)サイバーダインは、14.8%安と大きく売られました。

■混乱が長引くことはない

マーケットは不確実性を最も嫌うため、どっちに転ぶか分からない状況では身動きが取れず、投資家が様子見姿勢を強める中で、空売りが下げを主導しました。

売買代金に占める空売りの比率は、先週10日(金)に過去最高の47.0%まで上昇しましたが、今週に入っても衰えることはなく、空売り比率は40%台の高水準が続きました。日経平均が485円下げた16日(木)には、44.8%と過去2番目に高い水準を付けています。

ただ、仮に来週の選挙で「EU離脱」が決まったとしても、一時的に金融市場が混乱する恐れはあるものの、混乱が長引くことはないのではないでしょうか。

■イギリスがEU離脱できるのは「2018年中頃」

23日(木)の国民投票でEU離脱の審判が下った場合、EUとの交渉や手続きが必要になります。

選挙後に英国議会の承認を経て、次はEU側との協議に移ります。イギリスを除く加盟27の国のうち、20ヵ国の承認が必要になるため、離脱の道のりはまだ長いのです。

加盟国の承認が得られない場合も、条約によって通告から2年経過すれば、離脱は可能になるとされています。離脱できるのは、2018年中頃になる見通しです。

果たして、2016年の株式市場が織り込むほどの材料なのでしょうか?冷静に考えてみると、EU離脱を巡る市場の混乱は、売り方による悲観ムード演出の為のポジショントークに過ぎないとみることもできるのではないでしょうか。

逆に「EU残留」が決ればどうなるのか?6月に入って日経平均は1600円超下落していることを考慮すれば、溜まっている売りポジションの巻き戻しで、一気に800円くらい戻しても不思議ではありません。いづれにしても、23日の英国の国民投票が試金石となります。

小野山 功
小野山功
株式会社SQIジャパン 金融コンサルタント
配信元: 達人の予想