「下げ渋ったものの、弱気形状は維持」

著者:黒岩泰
投稿:2016/06/10 19:34

「仮想通貨から始まる未来像とは?」

 本日の日経平均は67.05円安の16601.36円で取引を終了した。朝方は下落幅を拡大させる場面もあったが、売り一巡後は下げ渋った。積極的に売り込む材料に乏しく、値ごろ感から買いが入った。

 日経平均の日足チャートでは、下影陰線が出現。安値圏での押し目買いの強さを示唆しており、さらに下値を探る雰囲気にはなっていない。一定の買い圧力が掛かっているようであり、現時点で急落のリスクはないように見える。

 しかし、日経平均の日足チャートでは上方の窓(16830.92円-16908.92円)埋めを拒否しており、典型的な弱気形状。軸は完全に「下向き」のようだ。目先は下値を探りやすくなっており、急激な株価下落には注意が必要だろう。

 特に来週は日米で金融政策を決定する会合が開かれる。雇用統計の予想外の悪化から米利上げ観測は急速に後退しているが、その後の利上げスピードが気になるところだ。日銀も三菱UFJ(8306)がマイナス金利に反旗を翻しており、一方的なマイナス金利の拡大は難しくなっている。新味のある大胆な政策を決定できるかが焦点となりそうだ。

 そしてその翌週には、イギリスの「EU離脱」を賭けた国民投票が実施される。最近では「離脱派がやや優勢」と伝えられており、欧州の政治的な混乱には注意が必要となる。世論調査でさらに離脱派が増えることになれば、ユーロ売りが加速、その反動で円が買われやすくなる。独自計算によれば円の理論値は、1ドル=93円程度であり、ファンダメンタルズ面でも円高が進みやすい。投機的な動きが加われば、1ドル=100円の節目にチャレンジするのは時間の問題となる。日経平均のチャート形状が「弱気」に傾いていることもあり、急速な円高を要因とした株安には警戒しなければならない。

 そのほか、最近気になったニュースとしては、「三菱UFJが独自の仮想通貨を発行する」という話だ。一見、「仮想通貨」というと、我々はどうしても「生活に便利な決済機能」というイメージを持ってしまう。しかし、その背景には壮大な陰謀が隠されている可能性もあるのだ。

 そもそも「通貨」というものは、その発行権者が巨大な支配能力を持っている。現在の国際金融の世界でいえば、BIS(国際決済銀行)を頂点として、その傘下にFRB、ECB、日銀がぶら下がっている構図だ。そして彼らは、通貨と国債をバーター取引することによって、無からお金を生み出すことができる。最近の「量的緩和」とか「QE」とかいうのは、専門的な金融用語ではあるが、実質的には通貨と国債で「紙と紙の交換」を行っているだけだ。それが中央銀行や市中銀行のバランスシートを占有している。

 だから、独自に仮想通貨を作るということは、ある意味、この巨大権限に切り込むことを意味している。国際金融資本家(いわゆる支配者)からしてみれば、「勝手にお金を作るな!」という話になってしまうのだ。
しかし、三菱UFJというメガバンクの一行がこの領域に踏み込むということは、それなりの意図・背景があると読まざるをえない。なぜならば、国際金融資本家にとって、最終目標は「世界統一通貨」「世界政府」であり、そのなかで決済手段として国境を越えた仮想通貨(いわゆる電子マネー)が必要不可欠となるからだ。

 将来の世界政府樹立の方向性からいえば、この仮想通貨というのは避けて通れない道である。最近の国民総背番号制であるマイナンバー制度とリンクすることによって、仮想通貨(電子マネー)によって徴税がスムーズにいくという利点が生まれてくる。体内に埋め込まれた電子チップによって日常の商取引が決済されるほか、世界政府による税金の徴収が自動的に行われる仕組みとなる。そういった背景のなかで、仮想通貨が誕生するわけだ。今は一市中銀行の試みにすぎない仮想通貨が、いつの間に、政府や中央銀行とリンクして、最終的にはペーパーマネーの代替品となっていく。そんな将来像が描けるのである。

 そういった流れを考えると、再来週の英国民投票は、何だかんだ言って「離脱反対派」が勝利、イギリスはEUに残ることになりそうだ。そして、いずれはその反動でポンドを捨てて、ユーロに統合するのであろう。世界統一通貨誕生の流れからは、ポンドはユーロに統合されるべきである。

 そして米大統領選に関しては、既得権益を破壊するトランプ氏は敗北。ヒラリー女史に軍配が上がることになるはずだ。既存勢力の力が維持できていればそうなるはずであり、株価もそれに対応して動くことになるだろう。まあ、そんな妄想をしても、チャートが弱気形状なので、結局は売ることになるのだが・・・。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想