「小幅反発も、ファストリが押し上げただけ」

著者:黒岩泰
投稿:2016/06/04 10:39

「米雇用統計は下振れ、円高が進行」

 6月3日(金)の日経平均は79.68円高の16642.23円で取引を終了した。朝方は上昇幅を拡大させる場面があったものの、買い一巡後は徐々に上値の重くなる展開。基本的に手掛かり材料に乏しいほか、今晩は米雇用統計を控えている。米利上げに関する重要な指標であることから、警戒感から様子見ムードが広がった。ただ、ユニクロを展開するファストリ(9983)が既存店売上高の好調を受けて、前日比6%を超える上昇。日経平均のけん引役となった。

 日経平均の日足チャートでは、ローソク足で上影陽線が出現。上値の重さを示しており、チャートの弱気形状に変化はない。昨日の急落によって日経平均には窓(16819.85円―16908.92円)が空いている。これが強い抵抗帯として機能することが予想され、戻り余地は限定的といえるだろう。チャートはすでに崩れており、下値不安が非常に大きい状態となっている。週明けにも改めて下値を試す動きとなりそうだ。

 目先の株価下落の要因となりそうなのが、急激な円高だ。足元では米利上げ観測の高まりから、外国為替市場では円安が進行。日本株には追い風となっていた。

 しかし、「金利」要因で為替が円安に動いても、「経常収支」や「物価」の要因では、円高になりやすくなっている。実際、米雇用統計は下振れしており、米国の利上げ観測が急速に後退。「金利」「経常収支」「物価」すべての面で円高を後押ししやすくなっている。私の個人的な分析では、1ドル=93円程度が適正値と計算されており、それに向けて一気に相場が動く可能性もある。日経平均の「チャートの崩れ」はそれを予感させるものであり、目先の急激な株価変動には注意をしなければならない。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想