重要イベント前に買い手控え、OPEC総会を注視

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/01 21:36

明日の東京株式市場見通し

 2日の東京株式市場は、欧州中央銀行(ECB)理事会、石油輸出国機構(OPEC)総会という2つの重要イベント開催を目前にして、買い手控え姿勢が強まりそうだ、きのうまでの5日続伸で日経平均株価は合計736円と短期間に急上昇をみせていただけに、市場ではきょうの反落は“スピード調整”との見方も出ていた。

 とくに、OPEC総会は、米原油先物指標油種のWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)の価格が最近一時、1バレル=50ドル台を回復するなど、相場が回復基調となっている。このため、生産量を据え置く増産凍結などの合意が見送られるとの見方が多く、原油価格への影響に注目が集まる。

 市場関係者からは「きょうは、午後2時過ぎから株価指数先物に海外のCTA(商品投資顧問業者)からとみられる仕掛け的な売りが円高・ドル安を誘発して下げが加速した」との見方が出ていた。

 1日の東京株式市場は、終日利益確定の売りに押される展開。日経平均株価は外国為替市場での円高進行と歩調を合わせ後場後半になって大きく下げ幅を広げ、終値は前日比279円25銭安の1万6955円73銭と6日ぶりに大幅反落した。

1日の動意株

 東芝<6502>=反発し年初来高値更新。
不適切会計問題で株価は今年2月に155円まで下落したが、その後、下値を切り上げて280円台を回復してきている。原子力事業や半導体のNANDビジネスの収益回復が見込まれ、業績は16年3月期が底になるとの観測がある。また、不適切会計の発覚で昨年9月に「特設注意市場銘柄」に指定されたが、指定から1年経過後に内部管理体制などの審査を受け、問題無しとなった場合、同銘柄からは解除される。

 日本エアーテック<6291>=後場一段高。
この日昼過ぎの日経速報ニュースで、「米疾病対策センター(CDC)はこのほど、すべての抗生物質(抗菌薬)が効かない薬剤耐性菌への感染例が米国で初めて見つかったと発表した」と報じられており、クリーンルームに対する需要増への思惑から買いが入った。記事によると、米ペンシルベニア州に住む49歳の女性から、「MCR―1」と呼ぶコリスチン耐性遺伝子を持つ耐性菌が見つかったという。MCR―1は15年11月に中国で初めて報告され、欧州などでも見つかっているが、米国では初めて。この耐性菌に感染すると、最大50%が死亡する可能性があると記事では伝えている。

 チエル<3933>=後場に入ってストップ高。
文部科学省による「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会があす2日に開催される予定となっており、再び物色人気が高まっているもよう。また、5月31日付のフジサンケイビジネスアイに川居社長のインタビュー記事が掲載されたことも株価を刺激しているようだ。

 日本航空電子工業<6807>=大幅高で6日続伸。
同社は31日の取引終了後、NEC<6701>が同社の子会社化に向けTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。TOB価格は1株につき1920円で、株価は同価格にサヤ寄せする動きとなっている。買い付け予定株数の上限は1000万株で買付金額は約192億円。買い付けは11月頃を目指している。全株を買い付けた場合、NECの航空電子に対する所有割合は、現在の39.82%が50.79%に上昇する見込み。なお、航空電子の株式上場は維持される見通しだ。

 日本エスコン<8892>=急反発。
不動産運用を手掛けるいちごグループホールディングス<2337>が同社と業務提携することを発表、これに伴う業容拡大期待から買いを呼び込んでいる。同社は関西と首都圏を基盤に分譲マンションを手掛け、不動産流動化ビジネスにも展開しており、業績は好調だ。16年12月期の第1四半期(1~3月)連結最終利益は12億3600万円(前年同期比2.2倍)と高変化を示し、通期の最終利益32億円(同5.3%増)予想に対する第1四半期時点の進捗率は約39%に達している。PERがわずか6倍台で3.8%前後の高配当利回りも注目されている。

 はてな<3930>=大幅続伸。
同社は5月31日取引終了後、16年7月期第3四半期累計(15年8月~16年4月)の単体決算を発表し、売上高は12億100万円、営業利益は2億2800万円、最終利益は1億2100万円と、営業利益が通期予想1億8700万円(前期比8.6%増)を既に超過していることが好材料視されている。なお、前期は四半期決算を行っていないため比較はない。コンテンツマーケティングサービスで、ネイティブ広告の売り上げが大きく増加し成長を牽引した。また、運営サイト「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などでのアフィリエイト広告や課金売り上げが堅調に推移した。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想