急落の後遺症が尾を引く、経済対策の動向を注視

著者:冨田康夫
投稿:2016/04/01 20:27

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、きょうの日経平均株価大幅下落の後遺症が尾を引く展開となりそうだ。日経平均株価の想定レンジは1万5700~1万6500円とする。

 新年度入り早々1日の東京株式市場は、いきなり急落に見舞われた。日経平均株価終値は、前日比594円51銭安の1万6164円16銭と大幅安で4日続落。寄り付き前に発表された日銀短観3月調査の内容が、事前の市場予想に比べて悪化したことに加え、外国為替市場で円高・ドル安が進行したことも株価下落を加速させた。

 日経平均株価は3月の1カ月間、1万7000円を挟んでの小幅な値動きに終始していたことから、上放れを期待する市場参加者も多かっただけに、逆に下放れが鮮明になったことで、落胆による見切り売りも多かったようだ。

 日本時間1日夜に発表される米3月の雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比で20万5000人程度の増加と予想されている。ただ、米利上げの先送り見通しは浸透しており、予想よりも強めの結果が出ても、円安・ドル高が加速する可能性は限定的といえる。

 ただ一方では、今回の株価下落を“政策催促相場”と受け止める向きもあり、緊急景気対策、日銀による量的追加金融緩和、消費増税の先送りといった政府主導の経済対策が前倒しされる議論が浮上すれば、全体相場の買い戻しを誘発する可能性もある。

1日の動意株

 エボラブルアジア<6191>=ストップ高。
3月31日に東証マザーズ市場に新規上場したばかりのIPO銘柄で、上場初日は公開価格1800円を870円(48.3%)上回る2670円で初値をつけ、3170円まで上昇した後、引けにかけて売られ結局、2550円と初値を下回って引けたが、この日は朝方から買いが先行した。同社は、オンライン旅行事業が主な事業で、自社サイトによる直販のほか、検索予約エンジンのOEM提供なども手掛けており、2月の取扱高は前値同月比59%増の21億1057万円と大幅増。このことから、成長性への期待が高いうえ、直近IPO銘柄ならではの値動きに期待した買いが株価を押し上げている。

 メディカル・データ・ビジョン<3902>が大幅4日続伸。
「ポケットドクター」への期待からMRT<6034>が上昇していることから、直近では同社にも物色人気が波及していたが、この日は、同社が保有する大規模診療データベースの現況を発表したことも好材料視されている。3月末現在で、実患者数が1393万人、2次利用の許諾を受けたデータ提供病院数が242病院(がん拠点病院99病院を含む)と順調に拡大しており、業績への貢献が期待されている。

 ANAP<3189>=ストップ高。
前日に夢展望<3185>がストップ高したことが刺激材料となっているようだ。両社ともに10代から20代までのリーズナブルにおしゃれを楽しみたい女性向けファッションブランドを展開しているほか、ネット通販に強いという特徴がある。また、ANAPでは、1月29日に上限を10万株(発行済み株数の4.69%)、5000万円を上限とする自社株買いを発表したが、2月末時点の買付株数は1万6100株、買付総額は688万円にとどまっており、これが株価下支え要因になるとの安心感も働いているようだ。

 ウェルネット<2428>=5日続伸で連日の年初来高値更新。
リアルタイムで購入代金を手数料なしで決済できる「マルチペイメントサービス」を手掛ける。同サービスはその利便性から、コンビニはもちろん、ヤフージャパン、楽天オークション、Eストアーなどの大手通販会社向けや国内主要航空会社や主要高速バス会社、さらに米アマゾンが導入しその収益源を占めるなど、成長エンジンとして注目され、フィンテック関連の一角としても業容拡大の可能性を内包している。

 オープンドア<3926>=大幅続伸。
同社は午前11時ごろ、国内宿・ホテル・旅館比較サービスおよび海外ホテル比較サービスにおいて、米ホテルズ・ドットコム(テキサス州)の「Hotels.com」との直接連携を開始したと発表しており、これを好材料視した買いが入っている。今回の直接連携の開始により、オープンドアが運営する「トラベルコちゃん」国内宿・ホテル・旅館比較サービスの提携サイト数が国内トップ(同社調べ)の25サイトに拡大したほか、「トラベルコちゃん」海外ホテルでは、宿泊プラン掲載がよりスムーズになったとしており、利便性向上によるユーザー獲得への期待が高まっているようだ。

 日本エマージェンシーアシスタンス<6063>=ストップ高カイ気配。
損保会社に代行して海外渡航者に医療機関を手配する業務などを手掛ける同社は、訪日客急増に伴うインバウンド需要が収益面で強力な追い風となっている。3月30日に、中国国内で最大級の医療ポータルサイト「就医160」を運営する中国現地法人と提携し、中国患者を呼び込むための日本の医療機関の情報発信を行うことを発表した。インバウンド特需の囲い込みに期待した短期資金を呼び込んでいるが、売り物が薄く値がつかない状況にある。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想