衣雲さんのブログ

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STAP細胞騒動について、バイオ研究者の立場から

個人的「ぶっちゃけ」話。「そんなことはない、お前はバカか」という人も多いかと思いますが・・・

1.博士論文の盗作疑惑ってどうなの?
 「盗作」は悪いことですが、博士論文は「極めてドメスティックな文書」と本心ではみんな思っているので、博士論文なんてそんなものだろうとしか思いませんでした。だいたい27歳とか28歳とかの学生で、自力で100ページ以上の論文を英語で書けなんてよほど優秀な学生だけです。実際、今回の騒動で嫌な脂汗が出てる研究者さんは多いんじゃないでしょうか。でも、多分優秀な研究者さんの中には博士論文がテキトーな人が多いんじゃないかな?優秀な研究者なら、博士課程最終年度の冬なんて博士論文まじめに書いてる暇がないくらい研究に忙しいはずですから。知り合いの優秀な研究者の中に、まとめの文章がイントロのコピペで、第三章が第二章のコピペという人もいましたし。(ちなみに私は優秀じゃなかったので真面目に博士論文を書きました・・・暇だったんですね。)

2.早大の博士論文審査ってそんなに杜撰なの?
 早大に限らずテキトーです。博士論文なんてほとんど読まないんじゃないでしょうか。主査の先生は学生の研究内容をよく知ってるから読む必要なんてないし、副査の先生方も読む暇なんてないでしょう。大抵は日本語の要訳書類をしっかり読み込んで、本文はイントロと結論だけ斜め読み、発表論文の本数と雑誌名を確認して「3報も出してるのか、立派立派。」とそんなもんでしょう。あとは研究発表・審査会で研究成果を圧迫面接のごとくみっちりと審査することになるわけですが、コースドクターの場合は「論文が立派か」を審査するわけではなく「博士号に価する研究能力があるか」を審査するわけですからそれで問題はないのではないでしょうか。

3.論文の画像疑惑は?
 Natureは修正修正の嵐で書き手が混乱することもしばしばですが、ああいった取り違いが本当に起こるのかなあ・・・とは思います。あくまで想像ですが、「博士論文で似たような実験やったし、こっちの方が画像として見栄えがいいから」くらいの気持ちで使ってしまったのかもしれません。いえもちろん、それって捏造ですし、明らかにやっちゃダメなことですが。いずれにせよ自分たちで「取り違え」と言ってるのなら、それなりにやましい気持ちがあって使ったんじゃないかな、とは思います。ちなみに、博士論文で使った画像で雑誌に投稿したり、雑誌に投稿した論文の画像を博士論文に使ったりするのは全く問題ありません。その辺を勘違いしているメディアもあるみたいなので注意しましょう。問題なのは「違う実験の画像」を流用したことです。

4.どうして小保方ユニットリーダーは隠れたの?
 私が彼女の立場だとして、仮に研究成果そのものに自信があったとして、これだけメディアに突き上げられたら(中には不勉強からくる理不尽な突き上げもた〜っ・・・・くさんあります)同じように隠れます。研究者はテレビタレントでもないし、そういった訓練も受けていない普通の人か、普通の人以下のコミュニケーション能力しか持たない引き籠もりがほとんどです。そんな人があのような状態に置かれたらどうやったって隠れるほかないでしょう。

5.で、ぶっちゃけSTAP細胞は本物なの?偽物なの?
 私は、少なくとも「捏造ではない」んじゃないかな〜?、と思ってます。明らかに不備や問題はありますし、そういう意味でNatureに価する論文かというと疑問ですが。でも、韓国の黄博士の捏造があった分野で、何度も何度もリジェクト(掲載拒否)の審査を受けて、全方位から強烈にマークされている状態でそれでも投稿し続けて厳しいNatureの査読を通過したわけですから、研究成果によほどの自信があるか、あるいは頭がおかしいかのどちらかでしょう。・・・あ、そうか。単純に「頭がおかしい」という可能性もありました(笑)でも仮に捏造ではないとしても、それは「本物」か「偽物」かは別の話です。捏造じゃなくても間違ってる論文なんて掃いて捨てるほどあります。でも、それを検証する権利はメディアにはありませんし、そもそもそんな能力もメディアにはありません。研究成果が「本物」か「偽物」か検証できるのは研究者だけです。発表した研究者本人が「間違ってました」または「捏造でした」と認めるか、あるいは別の研究者が追試して「正しかった」「間違ってた」と検証する以外の自称「検証」は、すべてノイズでしかありません。

 個人的な意見としては、研究者による正式な検証結果が出るまではどんな研究でも信じてあげてほしいです。「たくさん税金を投入してるんだから国民には突き上げる権利がある!」というなら、納税者の横暴というものです。研究者もオリンピック選手同様に、自分のために(出世のために、生活のために、欲求のために)頑張ってるという一面はもちろんありますが、自分の持つ能力を世に供するために頑張っているという面の方が遥かに大きいのです。少なくとも日本の研究者の多くは、能力に見合わない僅かな給料を貰い(私のように民間で働く研究者が聞いて驚くような安月給です)、「多額の研究費(税金)」という燃料を使って「人類の未来」を掘り当てる探鉱夫のようなものだと私は思っています。中には見当違いの鉱脈もあるかもしれませんが、あんまり安給料で「燃料を無駄にするな!」と酷使すると、探鉱夫はもっとよい環境へと逃げてしまうのが道理というものです。

7件のコメントがあります
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    >だいたい27歳とか28歳とかの学生で、自力で100ページ以上の論文を英語で書けなんてよほど優秀な学生だけです。

    小保方晴子は優秀だと思います。

    でも、想像妊娠だと半分思います。妊娠を研究に置き換えて
    原因
    妊娠という事柄に対する強いストレスが原因とされる。
    妊娠に対する過度の願望
    妊娠に対する過度の恐怖

    マウスはハツカネズミと同じですぐ成長するはずで
    1ヶ月たって世界で誰も追試できてない。

    検証は難しいのですか。
    どっちだろう。

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    衣雲さん
    2014/3/12 21:46
    > 株はがまんが出来ないさん
    「想像妊娠」・・・言い換えれば「先入観」ですね〜。
    「先入観」は人を誤った結論に導いてしまうものです。「あんなに高かった銘柄がこんな安く買える!」と思ってどれだけの人がボロ株を掴まされるか・・・(笑)

    マウスはハツカネズミと同じですぐ成長するはずで
    > 1ヶ月たって世界で誰も追試できてない。
    > 検証は難しいのですか。
    > どっちだろう。
    一般論として、真偽の結論を出すことに研究者は慎重です。「偽物だ」といって本物だったら相手に申し訳ないですし、「本物だ」といって偽物だったら科学者としての資質を疑われます。だから、わりと「この論文、嘘っぱちだな」と思っても心の中にとどめておくことは多いです。
    それにしても、iPS細胞のときは追試が非常に再現よくスムーズにいったのに対して、STAP細胞の追試は全然うまくいってません。これは論文自体が捏造か、勘違いか、現時点では技術的に未熟かのいずれかという、どう転んでも「Natureに載る価値はない」という結論しか導かれないという・・・
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    みやまな鉄砲長さん
    2014/3/16 10:11
    こんにちは、衣雲さん

    なかなかHOTなトピックですやん!!

    >博士論文なんてそんなものだろうとしか思いませんでした。

    私もそんな気がしています。
    理科系学部卒なので、コピペなんてザラなんじゃないかなぁと思ったりコピペじゃなくてもどこかの本から文言を打ちかえたりするような人は、
    結構いるかなと(* ̄m ̄)プッ

    >早大に限らずテキトーです。

    私も同じ感想だったり・・・(^^ゞ
    Natureにでてしまっておおごとになってから動いてる感がありありな・・・

    >ぶっちゃけSTAP細胞は本物なの?偽物なの?

    報道がいろいろ行っている割に私自身
    「結果STAP細胞が本物か?だけが知りたい」
    ってのが正直なところだったりします。

    本物であれば後追い研究で
    ナンボでも実証データは取れると思ってしまうのです(^^ゞ
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    衣雲さん
    2014/3/18 01:48
    みやまな鉄砲長さんは理系男子でしたか!
    さすがに投稿論文ともなればそれなりに慎重に書きますが、学内提出の論文だったら手抜きするのが普通ですよね〜。ホントは博士論文はそれじゃいけないという建前はありますが・・・

    > Natureにでてしまっておおごとになってから動いてる感がありありな・・・
    もしファーストオーサーが女の子じゃなければ、あるいはもし理研の広報がもう少しヒッソリとやってれば、どこにでもある「間違ってるかもしれないけどだれも文句を言わない論文」で済んで、小保方さんにとっても「とりあえずNatureを一報持ってる」という業績になったはずなんですが、残念ながら登場人物がそれ以上のものを求めてしまったというのが一番の敗因なんじゃないかな、と思います。

    > 報道がいろいろ行っている割に私自身
    > 「結果STAP細胞が本物か?だけが知りたい」
    > ってのが正直なところだったりします。
    個人的には、「勘違い」から話が大きくなって、行くところまで行っちゃったというよくあるパターンじゃないかなあと思いましたが、実際のところどうなんでしょうね。ただ「ストレスで細胞が初期化する」というのはあり得なくはない話なので、もやもやと「実はホントなのかなあ?」と期待が残ってしまうわけですが・・・


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    こんにちは。


    私もこの話題は気になっていましたけど、私自身理系でも、大学院も行ってない

    のでましては早稲田大学なる、超ブランド難関校のことなど皆目わかりませんので、

    上記文章は非常に興味深く読ませてもらいました。


    いくら理系の論文でも一からすべてオリジナルで作成するのは難しいので、多少

    の引用もありうるとの解釈でよろしいでしょうか。


    ただこの、STEP細胞の学術発表でお粗末なのは理化学研究所なる組織の内部

    統制組織の貧弱さ、チェック体制の甘さだと思います。

    早稲田大学にしても、理化学研究所にしても、発表したのは小保方ユニットリー

    ダーかもしれないですが、組織としての名前も世間に出る訳ですから、論文や

    学術結果が外に出して恥じないものか否かは、大学や研究所の組織として、

    きちっとしたフィルターにかけてОKの物しか出してはいけなかったんです

    よね。もっときちっとチェックかければ良かったと大いに反省して欲しいです。


    ただ我々素人はあとでこんなに袋叩きにあう論文がいとも簡単に公表されたか?

    ここが一番しりたいですね。この小保方女史のプレゼンがそこまで素晴らしか

    ったのでしょうか。(中身はいい加減でも)

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    衣雲さん
    2014/3/24 15:22
    > ピーマンショック!さん

    論文のオリジナリティについては、実はちょっと複雑です。少し詳しく説明すると、学術論文というのは「投稿論文」と「学位論文」と「それ以外の論文」(学内だけで読まれる要旨集や学会のプロシーディングなど、あとは特許など)に分けられます。

    「投稿論文」は基本的にオリジナルでなければいけないです。引用はもちろんありますが、その場合は引用元を明らかにしなければならないルールがあります。また引用が大半の論文ならば「で、どの辺がオリジナルなの?」ということになって、掲載拒否となるでしょう。

    「学位論文」についても、理想はオリジナルです。海外で博士論文のある一章がほとんど剽窃なんてことはありえないし、そんなことになれば学位を取り消されるでしょう。学位とはそれくらい権威のあるものです・・・が、現状では、日本でそれを求めるのは不可能なんです。これは、欧米諸国では博士過程の学生が「学費を払って指導を受ける学生」という立場であるのに対して、日本では「タダ働きさせられる研究員」という立場だからです。たとえば米国の研究室ではたくさん研究員を雇って研究を担わせているわけですが、日本の研究室にそんな予算はないので学生がタダ働きで研究を担っています。その状態で実験以外のことに時間を割く余力はないため、多くの優秀な学生の学位論文は小保方さんの博士論文の様にお粗末なものになってしまいます。まじめにちゃんとした学位論文を書けるのは、私のようにある程度お金に余裕があって、しかもあまり優秀じゃなかった(=実験が忙しくなかった)学生だけじゃないかなと思います。

    「それ以外の論文」に関しては様々ですが、基本的に書く方も読む方も誰も重視していません。特に今回小保方さんは「特許の文章に剽窃があった」などという見当違いの叩かれ方もしてましたが、特許の文章を研究者が書くということはありえませんし、そもそも書くことができません。99.9%弁理士さんにおまかせです。だから叩くならば弁理士さんを叩くべきでしょう。

    そして、大抵の研究者は、論文を書き上げて投稿する段階では完全に疲弊しています。私の大学時代のボスなど、投稿作業を完了してすぐに入院してしまったことがありました。精神的にも、他の研究者に先をこされないか一日一日胃に穴のあく思いで論文投稿の準備をしています。そんな状態なので、もし研究機関が組織として論文をチェックするならば、それ以外の投稿作業の大部分を組織としてバックアップすべきでしょう。そうしないと、日本の科学技術は死んでしまうと思います。

    今回のSTAP細胞の論文がヒドイというもっぱらの話ですが、実は、論文のクオリティとしては「よくある誤りを含む論文(※故意か過失かは別として)」程度のものです。あのくらい「あやしい」論文は掃いて捨てるほどあります。だから研究者の間では「あの論文は誤りだ」とか「あのひとはあやしい」なんて話も出ることがありますが、それを叩いたり潰したりすることは稀です。今回のSTAP細胞が袋叩きになった理由は、単に筆頭著者が若い女性であったことと、それを理研が組織として華々しく広報してしまったことに尽きると思います。
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    yoc1234さん
    2014/12/16 06:38

    おはようございます。


    この問題、いまだに本人ができないというのは変ですが。


    失敗がほとんどの世界で、何かの間違いで、


    出来てしまったならそれはすごいこと。


    よく、朝青龍や横綱の取り口について文句を言う人いますが、


    自分が勝てるならいい、尊敬というものが欠けてる。


    それは、総理大臣についてもそうです。


    ツイッターでいろいろ書いているのを見ますが、


    自分がなれるものならいい。


    小保方さんについても、理研に入るの事態ものすごく難しい。


    一新聞記者が入れもしない世界を、かくこと自体恐れ多い。


    この問題は、司法に任せて、そっとしてあげるのがいい。


    本当に作っていたなら、凄いことなんだし。



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