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勝負に出るサントリー 非上場を貫く戦略を転換




中核子会社が上場、思惑どおりに成長できるのか。

 

 サントリー食品インターナショナル(BF)が7月3日、東京証券取引所に上場した。時価総

額は9700億円に上り、今年最大規模の上場案件だ。

  サントリーBFはサントリーグループ全体の売上高の5割強、営業利益の7割強を稼ぐ中核子会社。加えて、創業者の直系のひ孫で、サントリーホールディングス(HD)佐治信忠社長の後継最有力とみられている鳥井信宏HD取締役が社長を務めている。

  2010年に親会社のサントリーHDと、キリンホールディングスの統合話が破談してから3年半。創業来114年間非上場を貫いてきたサントリーは、単独で世界戦略を加速させる。

 

■急成長するアジア市場
 今回サントリーBFが上場するのは、海外での飲料事業拡大が最大の目的だ。同社が掲げる長期計画では20年までに現状約1兆円の売上高を2倍に拡大する考えで、このうち4000億~5000億円は海外企業への出資や買収などを通じて稼ぎたいとしている。

 上場で手にした約2800億円のうち約2000億円をこうした戦略投資に充てる考えだ。

 世界の飲料市場はダイナミックな変革期を迎えている。

 従来、飲料の主戦場は欧米だったが、近年は新興国で需要がうなぎ上り。「先進国だけでなく、新興国での健康志向の高まりなどを受けて、需要拡大と同時にニーズも多様化しており、市場は世界規模で拡大している」と、調査会社フロスト&サリバンの食品部門アナリストのナターシャ・ディコスタ氏は話す。

 米コカ・コーラやペプシコ、仏ダノンといった欧米食品・飲料大手に加え、近年は欧米のビール会社が新興国の飲料企業を買収して参入するケースも増えている。

 

■利益の大半は海外で
 サントリーHDやキリンHDなど日本勢も、ここ5~6年ほどは怒濤の勢いで海外へ進出「豪州やニュージーランドのアルコール、飲料企業はほとんど日本勢に買収されている」(ディコスタ氏)ほどだ。その成果もあって、サントリーBFの場合、利益の大半を海外で稼ぐようになっている。
 今後も各社の成長には海外の拡大は必須。そのためには、新たな成長市場に地盤を築く現地企業との協業は欠かせない。

 こうした中、日本勢だけでなく世界の食品・飲料大手が目下、熱い視線を注ぐのが東南アジアである。

 同地域は人口約6億を擁するほか、08年時点で2億人程度だった年間可処分所得5000ドル以上の中間層は20年に4億人に膨らむと予想され(みずほ総合研究所調べ)、「飲料などパッケージ食品の浸透率はシンガポール以外の国では低く、今後の市場拡大余地は大きい」(消費財調査会社ユーロモニターのケルヴィン・チャン氏)。

 新興国の中でも、中国に比べて「政治的なリスクが低く、海外企業が事業をやりやすいのも魅力だ」(アバディーン・アセットマネジメントの投資マネジャー、クリス・ウォン氏)。

 

■優良企業めぐる争奪戦も
 日本勢も、アサヒグループホールディングスがマレーシアやインドネシア企業に出資しているほか、サントリーもインドネシア企業に出資するなど市場開拓に余念がない。

 「アサヒやサントリーは各国のトップ企業を買収、もしくは出資しており、欧米企業に引けを取らない地位を獲得している」(ディコスタ氏)。

 だが、さらなる拡大にはハードルもある。一つは「各国の飲料市場はすでにトップ企業が固まりつつあり、買収先や合弁をする相手は限られる」(世界の飲料業界の調査を手掛けるカナディーンのフィリップ・チャン氏)ことだ。
 手つかずの企業の多くはオーナー系の非上場企業で、「単独で収益を確保できているかぎり、短期的に身売りを考えるかは微妙」と、東南アジアの飲料企業向けのコンサルティングを手掛けるサントン・エムズ・ストラテジー・コンサルタンツ代表のトニー・エムズ氏は話す。
 優良企業には世界各国の食品・飲料企業が目をつけているだけでなく、現地企業からも「生き残るにはほかの現地企業と統合するか買収するしかない」(フィリピン食品大手ユニバーサル・ロビナ経営企画室長のマイケル・リワナ氏)との声が聞こえる。サントリーBFは「これまで結果を残しているので、そうした点を理解してもらえるのではないか」(鳥井社長)と話すが、最終的にはカネが物を言う可能性が高い。
 また、「東南アジアといっても、各国で文化もニーズも大きく異なる。市場開拓を進めるには、各国の文化をしっかり理解する必要がある」(ディコスタ氏)との指摘もある。

 「世界で米コカ・コーラ、ペプシコに次ぐ飲料会社になりたい」と鳥井社長は言う。

 非上場という方針を転換して、グローバル化加速へと舵を切ったサントリー。これまで以上に経営手腕が問われることになる。




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