堅実さんのブログ

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秋子の退職(1) 24年9月16日(日)10時29分

女房が言った。「今日は、会社に辞めると言うと、言っていた。」

「ふうん。」

 

秋子は、ここ2年程前から、会社を辞めると口癖にしていた。最近は、度々言うようになった。今回はさすがに、気持ちが動揺したが、いろいろ、考えても、どうしようもないと思った。怒らず、怒らず、事態を見るしかない。冷静さを欠いては、良い方向には、向かわない。

 

秋子が、女房に言っていたことは、こうだ。その携帯電話の販売店は、日曜日に休みがとれない。休日には、休みをとれる会社で働きたい。毎日、残業がある。ここ2年の間に20人くらい辞めている。お客は、待ち時間が多いためか、いらいらして、怒鳴ってくる。常に職場で、ストレスを抱えている。残業時間が長い。一日に10時間労働である。

 

はっきりと辞めると決断したのは、社労士の受験で試験日に、休暇をとりたいと言ったら、店長が、とらせてくれないのが、そう決断させたらしい。

 

その販売店は、今まで、女子従業員が、何人も辞めていて、定着率が低いと思う。女子従業員が30人いる職場で、3年の間、20人が退職するのは、店長の経営が悪いのかと思う。店長でもどうにもならないのか。その店長の能力はどのくらいなのかと、いろいろな事を知りたくなる。あるいは会社の経営方針であるのか。あるいは、業界の競争が激しくて、そんな従業員への希望やを聞いている余裕が無いのかとか、あれやこれやと考える。経営に余裕が無ければ、当然従業員の心にも余裕が無くなってくると思う。

 

携帯電話は、新しい機種が次から次へと出てきて、それを使いこなすには、大変である。また、あれもこれもと機能が増え、それを販売するには、それなりの製品の知識が要る。従業員の定着率が低いのは、この操作が難しいのが、原因かもしれない。

 

秋子は、この日は、23時過ぎに家に帰ってきた。黙って帰って来て、相変わらず、明彦とは口をきかない。避けるようにしている。

 

 秋子については、過去に、こんな事がある。それは、かなり昔の、秋子の中学2年の頃のことだった。その出来事は、夜になって聞いたことは、こうだった。

 

母親にも、何だかよく訳が分からないが、その朝、何かが家で有った。最初は家の中で、何か悶着があったと思うが、それから母親が、家の外で秋子を何度呼んでも、遠くに行ってしまう。距離をとってしまう。それは何が原因なのか定かでないが、女房が呼んで近づけば、秋子は遠くに離れて行ってしまうというのである。その日は、明彦君は、いつもの様に出勤した。その後の家での事なので、その事は、後になって知った。

 

午後3時くらいになって、秋子の通学している、5中の担任から、明彦の職場に電話があった。担任からの電話は、初めてであった。「今日、秋子は通学していない。中学に直ぐ来て欲しい。」というのである。どこにいるのか不明。家にも居ないらしい。そこで明彦は急いで、職場から5中に行ってみた。

 

この出来事の内容は、整理すると、こうだ。

 

「明彦は朝早く家を出て、このことは知らなかった。朝、秋子に、何か不満なことがあったかもしれないが、外に出てから、理由もなく母親が呼んでも、離れていく。母親はその日は、秋子が中学に出かける制服を着て、支度は出来ているので、それでも学校に行ったものと思い、用事があって家を出た。秋子は家の鍵を持っていないので、中には入れない。明彦一家は集合住宅の1階に住んでいた。そこで集合住宅の1階のベランダによじ登り、ほぼ一日中、そこに坐っていたという。数時間もそうしている間、ベランダの外側のグミの木の低木に飛んで来る、スズメなどを見ていたという。」

 

明彦が中学の職員室に行った時は、既に、その場に秋子がいた。女房もいた。女房が家に帰って来て、ベランダに居る秋子を見つけたのだった。

 

担任は秋子に「みんなに心配をかけてはだめだよ。」と言っていた。しばらくして、部活の竹内先生が来て、一日中、秋子がベランダに居たことを聞き、呆れていた。こんな出来事である。今でも、何が原因で、秋子がそんなことをしたのか、分からない。この年齢は理解できない行動をとるとは聞いていたが、親でも分からない。

 

 今回の辞める話の背景には、こんな子供の時の訳のわからない、行動が、今でも秋子には有ると思う。そして、ある種の我がままが、あると思う。

 

 

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