socialcolorさんのブログ
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券闘士(ギャンブラー)
Round1 '09有馬記念
「大分変わったなー。」
今日は、12月27日、日曜日。食事どきも少し過ぎた午後2時頃、私はWINS難波の地下1階(?)にいた。
ここ(正確にはここじゃなくて、建て替えられる前の馬券売場だけど。)に来るのは約10年ぶり、グラスワンダーが勝った1999年の有馬記念の日以来だ。
建物は、大阪球場の取り潰し、なんばパークスの建設に伴って新しく建て替えられ(と言ってもかなり経つけど。)、その一角にある。
私は人でごった返す馬券売場の入口近く、レース結果を示すボードの前を注意深く目で追った。
「いるとすればこの辺りなんやけど・・。いた!」
小脇に競馬新聞を抱え、ボードを背にポケットに手を突っこんだまま、銜えたばこで寄り掛かる初老の男、間違いない。
「お久しぶりです。」
と私。
「どなたでっしゃろ。どっかでお目にかかりましたかいなー。」
「忘れたんですか?10年前の有馬記念の日に、ほら・・。」
男は怪訝な顔で私をながめた後、
「おー、あの兄ちゃんかいな。忘れるはずありまへんがな。よう覚えとりまっせ。」
今の今まですっかり忘れてたくせに。この辺の調子の良さは相変わらず。まー、そこが憎めないとこでもあるんだけど。
その男’山さん’は、馬券で生計を立てている(らしい)自称’プロ’で、勝負レースでないときは、いつも大体入口近くにいる。
「儂も弱い人間やがな。実況見てたら誰かの耳よりな話や、具合よさそうな馬見つけて余計な馬券買いとうもなるからな。」
とは、本人から聞いた昔の話。ならば、ここ(馬券売場)でなくても良さそうなんだけど、そこは根っからの競馬好き、他では落ち着かないらしい。
「あれから顔見かけんかったけど、どないしてたんや?ショックでもう競馬やめたんかとおもたで。」
「いろいろあって。でもぼちぼちやってますよ。相変わらずあんまり勝てないけど。」
「そらせや。兄ちゃんらにあんまり勝たれたら、こっちがおまんまの食い上げやがな。そうそう、この世界もやさしいことおまへんで。」
「おっと、そうゆっくりもしとられへんがな。そろそろ、有馬のパドックが映るはずや。兄ちゃんももちろん有馬やろ、話はそこでしよか。」
と一番近いモニターの前に「すんまへんなー。」(全然すまなさそうじゃないけど。)と強引に割り込む。
「馬体重は問題なさそうや。それにしてもブエナビスタは異常に落ち着いとる。とても3歳牝馬とは思えんわ。ドリームジャーニーは相変わらず、ちょっといれこんどるな。また出遅れるかもしれん。ところで、兄ちゃんの見立てはどや。わざわざ儂に声かけたからには、自信あるんやろ。」
「僕はこのレース、ドリームジャーニーで堅いと考えてます。相手も絞れば、ブエナビスタ、フォゲッタブル、エアシェイディの3頭じゃないでしょうか。」
「ほー、その理由はなんや?」
「乗り替わりと枠順です。まずブエナビスタの乗り替わり。これは、オーナーサイドがアンカツの後方待機の乗り方に不満があると考えて間違いないと思います。乗り役は今回、たとえ負けても前の馬だけは絶対捕まえなければならない。この枠(2枠)を考えれば、出遅れない限り前につけるはずです。大外枠のフォゲッタブルも前に行くしかない。じゃなきゃ、コーナーを6つも回る中山2500mでは、コースロスが大きすぎる。ハーツクライを先行させたルメールなら下げるようなことはしないはずです。この2頭が前の競馬で、逃げ馬が3頭(リーチザクラウン、テイエムプリキュア、ミヤビランベリ)なら、先行馬は相当苦しい。展開の助けがない以上、実力が見劣るリーチザクラウン、ミヤビランベリらの逃げ馬、距離に壁のあるアンライバルドはいらない。逆に追い込み馬のドリームジャーニー、エアシェイディにはおあつらえ向きの展開になりそうです。」
「マツリダゴッホとスリーロールスはなんでいらんのや?」
「この馬(マツリダゴッホ)の中山での強さは特筆ですが、全てスローペースでの先行です。今回、ハイペースは必至で自分のペースで行けそうにない。それに横山がブエナビスタを選んだこと、札幌記念、天皇賞の結果から考えて、ブエナビスタ、ドリームジャーニーより上にはこないと考えてます。スリーロールスは、正直良くわかりませんが、騎手が問題かなと。」
「ふーん。いかにも兄ちゃんらしい読みやな。」
「山さんは?」
「さて、どうしたもんやろ。」
と、考えるそぶり。この男、昔からレース前には手の内を明かさない。が、珍しく別れ際にぽつりと一言つぶやいた。
「せやけど兄ちゃん。儂はこのレース、本気で万(馬)券狙とるで。」
「えっ?」
「まー、お互いがんばろや。勝ったらいつものところや。」
私は耳を疑った。このレースが万馬券?あり得ない。山さんが勝負という以上、大荒れはない(と考えている)。万馬券など、おいそれと狙って取れるものではない。
ましてプロならば、そんなリスクの大きな勝負などしないものなのだ。
私の動揺をよそに、山さんは人ごみに消えてしまった。
(つづく)
※この物語は、フィクションです。登場人物は、一切、実在の人物とは関係ありません。
みんかぶ運営事務局によって削除されました。
>私はWINS難波の地下1階(?)にいた。
なつかしい場所だなぁ...( = =) トオイメ
>この男、昔からレース前には手の内を明かさない。が、珍しく別れ際にぽつりと一言つぶやいた。
本当の勝負師なら
最後まで手の内は明かさないでしょうね!(笑)
こういう近い人物には何度も合ったことがありますわw
やはり文才のある方は違いますなぁ~(o゚ω゚))コクコク
きっちり読ませていただきました(*^^)v
ご無沙汰しておりました。久々の日記がギャンブラーの私のハートに火をつけるような内容とは。いい光景ですね。昔はこういう光景が場外馬券売り場(まだWINSではない)や競馬場で見ることができました。
懐かしいような郷愁を誘うような、そうあの頃の自分が重なって見えるような気がしました。最近は競馬場ではお祭り騒ぎですからね。鉄火場の雰囲気が残るあの頃が大好きです。
今年もお暇があるときにはギャンブル日記もぜひお願いします。もちろん相場日記もお願いします。
今年もsocialcolorさんにとってよい1年になりますように!
みやまな鉄砲町さん
ヨッシーさん
あけましておめでとうございます。
大変ご無沙汰しておりました。
久々の日記にも関わらず、温かいコメントありがとうございます。(特に、みやまな鉄砲町さん、ヨッシーさんには、長らくご心配おかけしました。)
去年は、公私共に色んなことがありまして、とても日記を書けるような状況ではありませんでしたが、また今年からぼちぼち、気ままな日記を書いていけたらと考えております。
不定期更新で拙いストーリーになるとは思いますが、続編を暫く書きたいと思いますので、何卒よろしくお願い致します。