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*16:56JST マイクロアド Research Memo(6):2023年9月期も「UNIVRESE」好調により増収増益
■業績動向
1. 2023年9月期の業績概要
マイクロアド<9553>の2023年9月期の連結業績は、売却子会社分を控除した売上高が前期比11.2%増の12,868百万円、営業利益が同32.9%増の833百万円、経常利益が同24.6%増の738百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同13.9%増の565百万円と増収増益だった。顧客属性に特化した営業組織への変革により顧客属性に応じた製品開発や製品提供体制を整えたこと、リモートワークが普及するなかでオンラインセミナーの強化やオンラインでのリード獲得を目的としたインサイドセールス特化型の営業組織を構築したこと、新たなプロダクトの市場投入や既存プロダクトの性能強化を継続して実施したこと、などにより主力サービスである「UNIVERSE」の業績が好調に推移したことが連結ベースの業績を押し上げた。収益性の高い「UNIVERSE」が好調だったことを受け、営業利益以下の各利益の伸びは、売上高の伸びを上回る成長を見せ、営業利益率も前期比プラス1.4ポイントの6.5%まで高まった。収穫逓増・高収益の「データプロダクト」に注力するなかで、同社の収益性が高まってきている状況である。加えて、メディア向けコンサルティングが前期比で増収増益と好調だったことも業績の拡大に寄与した。
通期の業績予想を比較すると、売上高は95.3%、営業利益は88.7%、経常利益は79.7%、親会社株主に帰属する当期純利益は80.7%の達成率となった。売上高に関しては、大手顧客の広告予算縮小により顧客単価が想定よりも減少したことをうけ、2023年9月期第4四半期における「UNIVERSE」の売上が想定よりも伸び悩んだことが影響した。その他、経常利益以下の各利益に関しては、第3四半期における海外拠点を含めた連結会計において、為替レートの変動によるギャップ調整を目的として為替差損を計上したことなどが響いた。通期の業績予想に関しては未達となったものの、それでも営業利益は32.9%と非常に高い伸びを見せており、同社ビジネスモデルの強みが業績に現れていると弊社は考える。
なお同社は、データソリューションサービス、デジタルサイネージサービス、海外コンサルティングサービスという従来の3つのサービス区分を、2023年9月期第1四半期からデータプロダクト、コンサルティングの2つのサービス区分に変更している。
サービス区分ごとの業績は、以下の通りである。
(1) データプロダクト
データプロダクトの売上高と売上総利益は、それぞれ前期比26.8%増の6,008百万円、同28.4%増の2,306百万円だった。「UNIVERSE」に関しては、先述の通り、顧客属性に特化した営業組織への変革や外部データとの連携による業種別プロダクトの性能強化などにより稼働アカウント数が順調に拡大した。新規の流入に加えて、リピートアカウントの割合が高かったことも稼働アカウントが安定して拡大する一因となったようだ。業種別プロダクトでは、BtoB業界向けの「シラレル」、人材向けプロダクトである「マーブル」、などが好調に推移した。これらにより、「UNIVERSE」の売上高と売上総利益は、それぞれ前期比35.8%増の4,989百万円、同41.8%増の1,913百万円に急伸した。既出の通り、広告市況悪化の影響による大手顧客の予算縮小を受け、平均顧客単価が減少し、2023年9月期第4四半期の売上は伸び悩んだものの、足元では稼働アカウント数が順調に回復し、顧客単価の減少分が戻ってきている状況である。加えて今後は、顧客単価の大きい大手顧客が業績へ与える影響が過度に大きくならないよう、顧客基盤の多様化を進め、業績の安定化を目指していく方針だ。
デジタルサイネージに関しては、売上高が前期比4.0%減の1,020百万円、売上総利益が同12.1%減の393百万円と減収減益だった。コロナ禍に対する措置が緩和されたことを受け、人流が回復したことはプラス要因となったものの、タクシーサイネージにおける一部パートナーとの契約更改によって第3四半期から売上・粗利が減少したことが響いた。ただ、契約更改は期初から想定されていた事象であり、業績に関しては想定通りの着地となった。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高と売上総利益は、それぞれ前期比8.4%減の6,860百万円、同8.3%減の1,824百万円だった。中国・ベトナムの両拠点を売却したことにより、海外コンサルティングの売上高が前期比19.8%減の2,981百万円、売上総利益が同15.0%減の685百万円の減収減益となったことが影響した。ただ、海外コンサルティングの業績に関しては期初の時点で海外拠点売却の影響を見込んでおり、おおむね想定通りの着地となったと言えるだろう。また、海外コンサルティングにおける各種クロスボーダー事業においては、業績は前期比で確実に拡大した。足元では中国からのインバウンドが戻り切っておらず想定よりも伸びなかったものの、今後、中国からの訪日観光客の増大にともなって各種クロスボーダー事業の業績寄与度は上昇していく見込みである。
メディア向けコンサルティングの売上高は前期比3.0%増の2,257百万円、売上総利益は同7.2%増の704百万円だった。顧客への提案内容を精査し、粗利率の高いサービスの提供に注力したことにより、売上総利益に関しては、売上高の伸びを上回る成長を見せた。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2023年9月期には47%まで高まっている。これを受け、売上総利益に占める割合も35%から56%まで高まった。今後も同社は高収益である「データプロダクト」に注力していく方針であり、収益性が高まっていくものと弊社は予想する。
2. 財務状況と経営指標
2023年9月期末時点の財務状況を見ると、総資産は前期末比919百万円増加の6,844百万円となった。この内、流動資産は現金及び預金の減少310百万円、受取手形及び売掛金の減少130百万円などにより、9百万円減少した。固定資産は、投資有価証券の増加424百万円、ソフトウェアの増加106百万円などにより、928百万円増加した。
負債合計は前期末比61百万円増加の3,114百万円となった。この内、流動負債は短期借入金の増加300百万円などにより、36百万円増加した。固定負債は、資産除去債務の増加38百万円などにより、25百万円増加した。純資産合計は前期末比857百万円増加の3,729百万円となった。これは主に、利益剰余金が564百万円増加したことなどによるものである。
経営指標を見ると、流動比率と固定比率は、それぞれ前期末比2.4ポイント減の165.5%、同17.7ポイント増の48.9%となった。流動比率は前期末比マイナス、固定比率は同プラスになったものの、依然として健全な数値であり、長短の支払い能力に問題はないと弊社は考える。また、自己資本比率は45.4%と前期末比6.2ポイント上昇した。今後も自己資本比率は高まっていくと弊社は推察する。利益率の高いデータプロダクトに注力するなかで当期純利益をしっかりと積み上げることによって、純資産の厚みが増していくためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
<SO>
1. 2023年9月期の業績概要
マイクロアド<9553>の2023年9月期の連結業績は、売却子会社分を控除した売上高が前期比11.2%増の12,868百万円、営業利益が同32.9%増の833百万円、経常利益が同24.6%増の738百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同13.9%増の565百万円と増収増益だった。顧客属性に特化した営業組織への変革により顧客属性に応じた製品開発や製品提供体制を整えたこと、リモートワークが普及するなかでオンラインセミナーの強化やオンラインでのリード獲得を目的としたインサイドセールス特化型の営業組織を構築したこと、新たなプロダクトの市場投入や既存プロダクトの性能強化を継続して実施したこと、などにより主力サービスである「UNIVERSE」の業績が好調に推移したことが連結ベースの業績を押し上げた。収益性の高い「UNIVERSE」が好調だったことを受け、営業利益以下の各利益の伸びは、売上高の伸びを上回る成長を見せ、営業利益率も前期比プラス1.4ポイントの6.5%まで高まった。収穫逓増・高収益の「データプロダクト」に注力するなかで、同社の収益性が高まってきている状況である。加えて、メディア向けコンサルティングが前期比で増収増益と好調だったことも業績の拡大に寄与した。
通期の業績予想を比較すると、売上高は95.3%、営業利益は88.7%、経常利益は79.7%、親会社株主に帰属する当期純利益は80.7%の達成率となった。売上高に関しては、大手顧客の広告予算縮小により顧客単価が想定よりも減少したことをうけ、2023年9月期第4四半期における「UNIVERSE」の売上が想定よりも伸び悩んだことが影響した。その他、経常利益以下の各利益に関しては、第3四半期における海外拠点を含めた連結会計において、為替レートの変動によるギャップ調整を目的として為替差損を計上したことなどが響いた。通期の業績予想に関しては未達となったものの、それでも営業利益は32.9%と非常に高い伸びを見せており、同社ビジネスモデルの強みが業績に現れていると弊社は考える。
なお同社は、データソリューションサービス、デジタルサイネージサービス、海外コンサルティングサービスという従来の3つのサービス区分を、2023年9月期第1四半期からデータプロダクト、コンサルティングの2つのサービス区分に変更している。
サービス区分ごとの業績は、以下の通りである。
(1) データプロダクト
データプロダクトの売上高と売上総利益は、それぞれ前期比26.8%増の6,008百万円、同28.4%増の2,306百万円だった。「UNIVERSE」に関しては、先述の通り、顧客属性に特化した営業組織への変革や外部データとの連携による業種別プロダクトの性能強化などにより稼働アカウント数が順調に拡大した。新規の流入に加えて、リピートアカウントの割合が高かったことも稼働アカウントが安定して拡大する一因となったようだ。業種別プロダクトでは、BtoB業界向けの「シラレル」、人材向けプロダクトである「マーブル」、などが好調に推移した。これらにより、「UNIVERSE」の売上高と売上総利益は、それぞれ前期比35.8%増の4,989百万円、同41.8%増の1,913百万円に急伸した。既出の通り、広告市況悪化の影響による大手顧客の予算縮小を受け、平均顧客単価が減少し、2023年9月期第4四半期の売上は伸び悩んだものの、足元では稼働アカウント数が順調に回復し、顧客単価の減少分が戻ってきている状況である。加えて今後は、顧客単価の大きい大手顧客が業績へ与える影響が過度に大きくならないよう、顧客基盤の多様化を進め、業績の安定化を目指していく方針だ。
デジタルサイネージに関しては、売上高が前期比4.0%減の1,020百万円、売上総利益が同12.1%減の393百万円と減収減益だった。コロナ禍に対する措置が緩和されたことを受け、人流が回復したことはプラス要因となったものの、タクシーサイネージにおける一部パートナーとの契約更改によって第3四半期から売上・粗利が減少したことが響いた。ただ、契約更改は期初から想定されていた事象であり、業績に関しては想定通りの着地となった。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高と売上総利益は、それぞれ前期比8.4%減の6,860百万円、同8.3%減の1,824百万円だった。中国・ベトナムの両拠点を売却したことにより、海外コンサルティングの売上高が前期比19.8%減の2,981百万円、売上総利益が同15.0%減の685百万円の減収減益となったことが影響した。ただ、海外コンサルティングの業績に関しては期初の時点で海外拠点売却の影響を見込んでおり、おおむね想定通りの着地となったと言えるだろう。また、海外コンサルティングにおける各種クロスボーダー事業においては、業績は前期比で確実に拡大した。足元では中国からのインバウンドが戻り切っておらず想定よりも伸びなかったものの、今後、中国からの訪日観光客の増大にともなって各種クロスボーダー事業の業績寄与度は上昇していく見込みである。
メディア向けコンサルティングの売上高は前期比3.0%増の2,257百万円、売上総利益は同7.2%増の704百万円だった。顧客への提案内容を精査し、粗利率の高いサービスの提供に注力したことにより、売上総利益に関しては、売上高の伸びを上回る成長を見せた。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2023年9月期には47%まで高まっている。これを受け、売上総利益に占める割合も35%から56%まで高まった。今後も同社は高収益である「データプロダクト」に注力していく方針であり、収益性が高まっていくものと弊社は予想する。
2. 財務状況と経営指標
2023年9月期末時点の財務状況を見ると、総資産は前期末比919百万円増加の6,844百万円となった。この内、流動資産は現金及び預金の減少310百万円、受取手形及び売掛金の減少130百万円などにより、9百万円減少した。固定資産は、投資有価証券の増加424百万円、ソフトウェアの増加106百万円などにより、928百万円増加した。
負債合計は前期末比61百万円増加の3,114百万円となった。この内、流動負債は短期借入金の増加300百万円などにより、36百万円増加した。固定負債は、資産除去債務の増加38百万円などにより、25百万円増加した。純資産合計は前期末比857百万円増加の3,729百万円となった。これは主に、利益剰余金が564百万円増加したことなどによるものである。
経営指標を見ると、流動比率と固定比率は、それぞれ前期末比2.4ポイント減の165.5%、同17.7ポイント増の48.9%となった。流動比率は前期末比マイナス、固定比率は同プラスになったものの、依然として健全な数値であり、長短の支払い能力に問題はないと弊社は考える。また、自己資本比率は45.4%と前期末比6.2ポイント上昇した。今後も自己資本比率は高まっていくと弊社は推察する。利益率の高いデータプロダクトに注力するなかで当期純利益をしっかりと積み上げることによって、純資産の厚みが増していくためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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