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―岸田首相は年頭所感で強い決意、基本方針とりまとめで関心高まる―
岸田文雄首相は1日、2023年の年頭所感で「戦後日本が直面し、積み残してきた多くの難しい問題、先送りできない問題に正面から立ち向かい、一つ一つ答えを出していく」と政権運営への意気込みを示した。その重要課題の一つとして挙げたのが、化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心に転換する「GX(グリーントランスフォーメーション)」だ。日本は今年、主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)の議長国として広島サミットを主催し、世界に対して気候変動問題への取り組み姿勢をアピールする絶好の機会となることもあり、GX関連銘柄は引き続きマークしておきたい。
●今後10年のロードマップ提示
政府は22年12月22日、GX実現に向けた基本方針(案)をとりまとめ、今後10年を見据えたロードマップを提示した。エネルギーについては、需要側の徹底した省エネルギーの推進や製造業の燃料転換を進めるとともに、再生可能エネルギーや 原子力といった 脱炭素効果の高い電源を最大限活用するとの考え方を明記した。また、発電・運輸・産業など幅広い分野での活用が期待される 水素・ アンモニアの導入促進、再生可能エネの主電源化に不可欠な蓄電池及び部素材の製造工場への投資、30年までのCCS(CO2を分離・回収し、地中などに貯留する技術)事業開始に向けた環境整備なども盛り込まれている。
岸田首相は基本方針を受けて「150兆円超のGX投資を官民で実現していくため、国として20兆円規模の大胆な先行投資支援を実行する」「技術や各国の政策を踏まえ、機動的で柔軟な対応が必要」「各プロジェクトの進捗状況をレビューし、基本方針のバージョンアップを連続的に行う」などと述べており、国際公約である「温室効果ガスの排出量を30年度に13年度比で46%削減、50年のカーボンニュートラル実現」に強い決意を示している。脱炭素につながる技術を持つ企業にとっては、今後更にビジネス機会が広がることになりそうだ。
●再生可能エネ・原発関連
再生可能エネ発電所のEPC(設計・調達・施工)や自社所有発電所による供給事業を展開するテスホールディングス <5074> [東証P]に注目したい。
このほか、太陽光パネル付き住宅を販売するフィット <1436> [東証G]、超軽量太陽電池モジュールを製造するフジプレアム <4237> [東証S]、太陽光発電システムを展開するサニックス <4651> [東証P]、風力発電の開発・建設を手掛ける日立造船 <7004> [東証P]やレノバ <9519> [東証P]なども要マークだ。
また、原発プラント工事を行う高田工業所 <1966> [東証S]、多くの原発建設実績を誇る太平電業 <1968> [東証P]、原子炉に使用される鍛鋼部材を扱う日本製鋼所 <5631> [東証P]、核燃料輸送容器や核燃料濃縮関連機器などを手掛ける木村化工機 <6378> [東証S]、原子力用バルブを提供するTVE <6466> [東証S]、模擬燃料集合体などの原発関連機器を展開する助川電気工業 <7711> [東証S]などからも目が離せない。
●水素・アンモニア関連
アンモニアを燃料として安定燃焼させる技術を持つ中外炉工業 <1964> [東証P]、金属複合水素透過膜に関する技術を持つ山王 <3441> [東証S]、水素吸蔵合金システムを扱う那須電機鉄工 <5922> [東証S]、小型オンサイト水素製造装置「HyGeia(ハイジェイア)シリーズ」を展開する三菱化工機 <6331> [東証P]、水素関連事業向け圧縮機を提供する加地テック <6391> [東証S]、液体水素用バルブなどを手掛ける宮入バルブ製作所 <6495> [東証S]などが折に触れ関心を集めることになりそうだ。
加えて、直近ではIHI <7013> [東証P]が、マレーシアの国営石油ガス会社であるペトロナスの子会社と、再生可能エネ由来のグリーンアンモニア製造・販売の事業性を検討・調査する覚書を締結した。26年の商業プラント完成と運転開始を目指すとしており、発電や船舶燃料への活用を目的に日本やアジア各国への輸出も検討するという。
日揮ホールディングス <1963> [東証P]、豊田通商 <8015> [東証P]、岩谷産業 <8088> [東証P]の3社は昨年12月、廃プラスチックガス化設備を活用した低炭素水素製造事業に関して、名古屋港近郊での協業を検討する基本合意書を締結したと発表。20年代中ごろをメドに年間1万1000トンの水素製造(廃プラ回収量は年間8万トン)を開始する予定で、同事業で製造する水素は天然ガスからの製造と比較して温室効果ガス排出量を85%削減する見込みだとしている。
●蓄電池関連
ナトリウムと硫黄を使用したメガワット級の電力貯蔵システム「NAS電池」を手掛ける日本ガイシ <5333> [東証P]、住宅用・産業用蓄電システムを提供する正興電機製作所 <6653> [東証P]、再生可能エネ用鉛蓄電池を展開する古河電池 <6937> [東証P]、安全性に優れたオリビン型リン酸リチウムを電池セルに採用した公共・産業用の蓄電システムを扱うニチコン <6996> [東証P]などにビジネスチャンスがありそうだ。
これ以外では、ウエストホールディングス <1407> [東証S]が昨年11月、同年4月に大阪ガス <9532> [東証P]と結んだ資本・業務提携の取り組みの一環として、蓄電池分野における新規事業の共同検討に関する覚書を締結したと発表。ウエストHDが太陽光開発のプラットフォームを生かして蓄電設備を設置し、大ガスが蓄電設備を複数の電力市場で取引する運用を行い、電力系統の安定化につなげる考え。
昭文社ホールディングス <9475> [東証S]と子会社のマップルは昨年10月、住宅用蓄電池をカーボンニュートラル関連事業全般に向けた新ブランド「mapple GX」として提供を開始した。これは21年に資本・業務提携したヘッドスプリング(東京都品川区)と共同検討を進めてきたもので、太陽光発電と組み合わせることで効率的な再生可能エネの活用を支援するという。
●CCS関連
主な関連銘柄は、新たなCO2回収技術の開発を行うオランダのスタートアップ企業に出資しているINPEX <1605> [東証P]、CO2の分離・回収や地中貯留技術の調査・研究開発などを手掛ける日本CCS調査(東京都千代田区)の株主に名を連ねている東洋エンジニアリング <6330> [東証P]、CO2回収プラントの納入実績が豊富な三菱重工業 <7011> [東証P]、国内CCSの事業化調査に取り組んでいるJパワー <9513> [東証P]など。
また、レゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]と日本製鉄 <5401> [東証P]は昨年10月、6つの国立大学と連携し、工場排出ガスに含まれる低濃度CO2の分離・回収技術開発を本格始動させた。研究開発期間は22年度から30年度までの9年間で、事業総額約84億円を予定している。
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