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―WTOは空気感染の可能性認める、ビルや商業施設の空調施設に改装需要も―
新型コロナウイルス 感染症の拡大が世界規模で続くなか、7月上旬に200人を超える科学者が同ウイルスの空気感染に関する可能性を示す科学的根拠があると共同意見書を発表し、世界保健機関(WHO)に対応策を見直すよう求めた。WHOでは、これまで浮遊するウイルスが感染経路になるという見方には説得性がないとの立場だったが、共同意見書を受けて新たなガイドラインを示し、一転して空気感染の可能性を一部認めている。こうした状況のなかで、微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体である「エアロゾル」を介した新型コロナウイルスへの感染を防ぐ対応が世界各国で迫られている。株式市場でも「エアロゾル感染防止」関連株を物色する動きが本格化しそうだ。
●新型コロナウイルスは長時間空中を浮遊することも
新型コロナウイルスによる感染は、一般的には感染経路の中心が接触感染及び飛沫感染とされている。接触感染においては手洗いやうがいなどが有効で、飛沫感染の対応策としては飛散を防止するマスクやフェイスシールドなどが有効だ。しかし、閉鎖空間において複数人が近距離で会話するなどの一定の環境下であれば、咳やくしゃみなどがなくても感染を拡大させるリスクが当初から指摘されている。更に、一定の距離を保っていたとしても、前出のように飛沫よりも細かい霧状の粒=「エアロゾル」としてウイルスが空気中を長時間浮遊し、エアコンから排出される風の流れなどによって、十分距離をあけている人にも実は感染リスクがあるとされた。
感染を予防するためには、基本的な予防の実施や不要不急の外出の自粛、「3密(密閉、密集、密接)」を避けることなどが重要とされ、国や各自治体が主導してこれらの実施を継続して訴えている。厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議によると、これまでに国内で感染が確認された人のうち重症・軽症に関わらず約8割の人は、他の人に感染させていない一方で、一定の条件を満たす場所において、1人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されている。同会議の見解として、集団感染が生じた場の共通点として、換気の悪い密閉空間、多くの人が集まる密集場所、互いに手が届く距離で会話などが行われる密接場面において感染を拡大させるリスクが高いと改めて強調している。
一方で、高い関心を集めているGo Toキャンペーンの実施からもわかるように、政府は感染予防を継続しつつも、これ以上の経済的影響も避けたいとしており、経済活動の再開を推進している。新型コロナウイルスの感染が再び全国的に拡大し、連日で3ケタの新規感染者が報告されているなかではあるが、経済活動の本格的な再開を推進するうえでは、これまでの感染予防策のほか、今回指摘された空気感染による対策が今後、経済活動を本格的に推進するうえで重要な位置付けとなるだろう。
●空気清浄機や空調システムには需要増の追い風
空気感染の防止については、室内換気が本来もっとも有効性があるが、その代替として空気清浄機の需要が増える可能性が高いだろう。カビ菌の除去やウイルスの働きを抑えるイオン「プラズマクラスター」機能を搭載した製品を展開しているシャープ <6753> や花粉汚れに強い「ナノイー」を搭載していることで知られるパナソニック <6752> 、花粉と有害物質の分解やPM2.5を除去する「ストリーマ」技術を搭載しているダイキン工業 <6367> などが関連銘柄として挙げられる。
また、企業や大規模設備などの空調システムにおいては設備需要が見込まれる。新型コロナウイルス感染拡大に伴い工場など一部施設への入場が制限され、メンテナンスや工事業務が延期となった企業は多く、足もとの業績においては新型コロナウイルスによる影響を受けているだろう。しかし、経済活動が再開されるなかで、コロナ対策は避けられない最重要課題でもあるため、空調設備のメンテナンスやリニューアル工事の需要が今後増えてくる可能性は十分に期待されるところだ。
この分野では日本空調サービス <4658> や空調自動制御システムを手掛けている日本電技 <1723> [JQ]のほか、感染症対策製品としてクリーンルームやエアシャワー、HEPAフィルター付空気清浄機などの感染症対策機器を手掛けている日本エアーテック <6291> が注目されるだろう。
その他、ビルや商業施設など工業向け空調システム機器を手掛けている木村工機 <6231> [東証2]、空調、換気などの環境エネルギー商材や換気、除菌などウイルス対策商材などを手掛けている橋本総業ホールディングス <7570> 、それに因幡電機産業 <9934> は空調部材を手掛けており、学校向け空調設備に実績がある。また、三機サービス <6044> は全国のセブン-イレブンなど小売チェーンの空調などの設備メンテナンスを一括で受け持っている。
●ポエックやクオールHD、日機装などにも注目
更に、ウイルスを死滅・除去する取り組みも活発化してくると考えられる。これに関連する銘柄としては、ポエック <9264> [JQ]、ウシオ電機 <6925> 、クオールホールディングス <3034> 、日機装 <6376> などが挙げられる。ポエックは、ポンプを通じて水と空気に重点を置いた環境装置全体に事業分野を広げている。同社はウイルスを酸化させる作用を持つオゾン水製造装置や脱臭装置を開発しているほか、7月28日には東北大学とウイルス感染作用を取り除く不活化技術の開発と製品化に向けた共同研究契約を締結したと発表している。
ウシオ電機は、ウイルスを不活化する「222nm紫外線殺菌・ウイルス不活化ユニット」の開発に着手している。人体に直接照射しても急性障害である紅斑が発生しないことが臨床試験で確認されており、製品化を目指している。クオールHDは、感染者が滞在した部屋を消毒するオゾン発生器を医療機関向けに手掛けている。日機装は深紫外線LED搭載空間除菌消臭装置Aeropure(エアロピュア)とオゾン水手洗い装置Handlex(ハンドレックス)などを手掛けており、4月には東京都に寄贈している。
株探ニュース
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