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飯野海運のニュース
*14:31JST 飯野海運 Research Memo(1):さらなる成長に向けて共通価値の創造に向けた取り組みを一段と強化
■要約
飯野海運<9119>は1899年の創業以来120年以上の歴史を誇る海運会社である。現在は資源・エネルギー輸送を主力とする海運業(外航海運業、内航・近海海運業)と、本社の飯野ビルディングを主力とするオフィスビル賃貸の不動産業を両輪としている。さらなる成長に向けて、経済的価値の向上に加え、サステナビリティへの積極的な取り組みで社会的価値の創造を図り、同社の掲げる共通価値の創造に向けた取り組みを一段と強化している。
1. 海運業はケミカルタンカーに強み、不動産業は安定収益源
海運業は業界有数の船隊規模を誇るケミカルタンカーや、中長期契約を積み上げる大型ガス船などを特徴・強みとしている。不動産業は飯野ビルディングなど東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを複数所有していることが特徴だ。海運業は市況変動の影響を受けるが、不動産業が安定収益源となっている。従来から環境負荷軽減に取り組み、海運業における環境配慮型船舶の投入や不動産業における保有ビルの省エネ向上を推進している。
2. 2023年3月期は円安・市況上昇を背景に大幅増収増益・過去最高
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比35.8%増の141,324百万円、営業利益が同163.6%増の19,835百万円、経常利益が同119.2%増の20,677百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同81.1%増の22,681百万円、大幅増収増益で過去最高益だった。前中期経営計画の最終年度として目標値を大幅に超過達成して着地した。不動産業は電力料金上昇による光熱費の増加などで減益だったが、海運業は円安・市況上昇効果を背景に、従来から進めている既存契約の有利更改や効率配船など運航採算向上に向けた各種取り組みが寄与した。
3. 2024年3月期は前期の反動で減収減益予想だが前々期を上回る水準
2024年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比13.0%減の123,000百万円、営業利益が同41.0%減の11,700百万円、経常利益が同46.3%減の11,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.9%減の10,000百万円としている。前提の平均為替レートが125円/米ドル(前期実績は135.07円/米ドル)である。前期の円安や海運市況上昇の反動で減収減益予想としている。海運業の市況変動には注意が必要となるが、全体として為替や海運市況の想定に保守的な印象が強く、弊社では会社予想に上振れの可能性があると考えている。また、2024年3月期は好条件が揃った前期の反動で減収減益予想はやむを得ないと考えるが、会社予想は売上高、各段階利益とも前々期実績を上回る水準である。これまでに推進してきた安定収益源積み上げに向けた各種取り組みの成果が表れていると言えるだろう。
4. 新中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」を策定
長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、2023年5月に新中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(2024年3月期~2026年3月期)を策定した。新中期経営計画の策定と合わせて理念体系を整理し、企業理念のIINO PURPOSEには「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」を掲げた。新中期経営計画のテーマは「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」としている。重視する財務指標と数値目標については、2026年3月期に収益性で経常利益130~140億円、EBITDA280~290億円、資本効率性でROE9~10%、ROIC4~5%、財務健全性でD/Eレシオ最大1.5倍を掲げた。重点戦略としては、「経済的価値の創造」で事業ポートフォリオ経営の推進(成長事業への経営資源配分、グローバル事業の拡張、環境配慮への取り組みと投資推進)、「社会的価値の創造」でマテリアリティの克服(脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行、人的資本の強化、人権尊重への対応)を推進する。海運業では、現在は成長事業に位置付けている外航ガス船を積極的な投資によって将来的には主力事業にシフトさせ、ケミカルタンカーに並ぶ柱とする方針だ。
5. 安定収益基盤の強化で中長期的に持続的な収益拡大を期待
同社の収益は特に為替や海運市況の影響を受けやすいが、従来から市況変動の影響を軽減すべく、中長期契約を中心とする安定収益基盤の強化を推進している。こうした基本戦略に加えて、新中期経営計画で打ち出した事業ポートフォリオ経営やマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の克服に向けた対応により、市況変動の影響を受けにくい収益構造への転換が進展すれば、中長期的に持続的な収益拡大が期待でき、株式市場においても投資対象としての評価の高まりにつながるだろうと弊社では考えている。
■Key Points
・歴史ある海運業と不動産業が両輪
・2023年3月期は円安や市況上昇を背景に過去最高益
・2024年3月期は反動で減収減益予想だが前々期を上回る水準
・新中期経営計画で共通価値の創造に向けた対応を一段と強化
・安定収益基盤の強化で中長期的に持続的な収益拡大期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<SI>
飯野海運<9119>は1899年の創業以来120年以上の歴史を誇る海運会社である。現在は資源・エネルギー輸送を主力とする海運業(外航海運業、内航・近海海運業)と、本社の飯野ビルディングを主力とするオフィスビル賃貸の不動産業を両輪としている。さらなる成長に向けて、経済的価値の向上に加え、サステナビリティへの積極的な取り組みで社会的価値の創造を図り、同社の掲げる共通価値の創造に向けた取り組みを一段と強化している。
1. 海運業はケミカルタンカーに強み、不動産業は安定収益源
海運業は業界有数の船隊規模を誇るケミカルタンカーや、中長期契約を積み上げる大型ガス船などを特徴・強みとしている。不動産業は飯野ビルディングなど東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを複数所有していることが特徴だ。海運業は市況変動の影響を受けるが、不動産業が安定収益源となっている。従来から環境負荷軽減に取り組み、海運業における環境配慮型船舶の投入や不動産業における保有ビルの省エネ向上を推進している。
2. 2023年3月期は円安・市況上昇を背景に大幅増収増益・過去最高
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比35.8%増の141,324百万円、営業利益が同163.6%増の19,835百万円、経常利益が同119.2%増の20,677百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同81.1%増の22,681百万円、大幅増収増益で過去最高益だった。前中期経営計画の最終年度として目標値を大幅に超過達成して着地した。不動産業は電力料金上昇による光熱費の増加などで減益だったが、海運業は円安・市況上昇効果を背景に、従来から進めている既存契約の有利更改や効率配船など運航採算向上に向けた各種取り組みが寄与した。
3. 2024年3月期は前期の反動で減収減益予想だが前々期を上回る水準
2024年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比13.0%減の123,000百万円、営業利益が同41.0%減の11,700百万円、経常利益が同46.3%減の11,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.9%減の10,000百万円としている。前提の平均為替レートが125円/米ドル(前期実績は135.07円/米ドル)である。前期の円安や海運市況上昇の反動で減収減益予想としている。海運業の市況変動には注意が必要となるが、全体として為替や海運市況の想定に保守的な印象が強く、弊社では会社予想に上振れの可能性があると考えている。また、2024年3月期は好条件が揃った前期の反動で減収減益予想はやむを得ないと考えるが、会社予想は売上高、各段階利益とも前々期実績を上回る水準である。これまでに推進してきた安定収益源積み上げに向けた各種取り組みの成果が表れていると言えるだろう。
4. 新中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」を策定
長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、2023年5月に新中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(2024年3月期~2026年3月期)を策定した。新中期経営計画の策定と合わせて理念体系を整理し、企業理念のIINO PURPOSEには「安全の確保を最優先に、人々の想いを繋ぎ、より豊かな未来を築きます」を掲げた。新中期経営計画のテーマは「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」としている。重視する財務指標と数値目標については、2026年3月期に収益性で経常利益130~140億円、EBITDA280~290億円、資本効率性でROE9~10%、ROIC4~5%、財務健全性でD/Eレシオ最大1.5倍を掲げた。重点戦略としては、「経済的価値の創造」で事業ポートフォリオ経営の推進(成長事業への経営資源配分、グローバル事業の拡張、環境配慮への取り組みと投資推進)、「社会的価値の創造」でマテリアリティの克服(脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行、人的資本の強化、人権尊重への対応)を推進する。海運業では、現在は成長事業に位置付けている外航ガス船を積極的な投資によって将来的には主力事業にシフトさせ、ケミカルタンカーに並ぶ柱とする方針だ。
5. 安定収益基盤の強化で中長期的に持続的な収益拡大を期待
同社の収益は特に為替や海運市況の影響を受けやすいが、従来から市況変動の影響を軽減すべく、中長期契約を中心とする安定収益基盤の強化を推進している。こうした基本戦略に加えて、新中期経営計画で打ち出した事業ポートフォリオ経営やマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の克服に向けた対応により、市況変動の影響を受けにくい収益構造への転換が進展すれば、中長期的に持続的な収益拡大が期待でき、株式市場においても投資対象としての評価の高まりにつながるだろうと弊社では考えている。
■Key Points
・歴史ある海運業と不動産業が両輪
・2023年3月期は円安や市況上昇を背景に過去最高益
・2024年3月期は反動で減収減益予想だが前々期を上回る水準
・新中期経営計画で共通価値の創造に向けた対応を一段と強化
・安定収益基盤の強化で中長期的に持続的な収益拡大期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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