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―循環物色の流れを読み次を探る、値がさ主力株から中低位株への資金シフトを捉えよ―
日本株は第2四半期入りとなった7月早々に、目を見張るハイパフォーマンスを演じ、日経平均株価とTOPIXが足並みを揃えて史上最高値を更新。くしくもそれは7月4日、米国の独立記念日であったが、海外投資家の動きがフリーズするこのタイミングで、東京市場は想定外のダイナミズムを発現させた。とりわけTOPIXについては1989年12月以来約34年7カ月ぶりとなる最高峰への到達である。当然ながらこれは終着点ではない。新たなスタート地点との認識が必要であり、文字通り青空圏への飛翔を年後半相場で試すことになる。
世界的にインフレに対する警戒感が薄れ、欧州中央銀行(ECB)は6月に2019年9月以来となる利下げに踏み切ったが、これに追随する形で米連邦準備制度理事会(FRB)も9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに踏み切る可能性が意識されている。株式投資の観点では、再び流動性相場に向けた地ならしが始まったとみてよい。その際、4月中旬から6月中旬まで2カ月にわたり狭いゾーンでのもみ合いに終始していた日本株は、再評価される対象としてがぜん存在感を高めている。
●どこから見ても“円安上等”の日本株
折からの円安進行はポジティブな側面とネガティブな側面の2つの要素を内在させているが、株式市場にとっては強力なフォローウインドであることに相違なく、円安・株高の黄金セオリーは今なお健在だ。ハイテクや自動車セクターだけではなく、円安はインバウンド消費を極大化させる魔法の杖でもある。円安効果によって為替差益を得る輸出セクターばかりがクローズアップされがちだが、実は内需も強く刺激されている。百貨店の業績躍進などは円安を味方につけた典型だ。
また、海外の投資マネーを誘引する効果も見逃せない。円安によってポートフォリオに占める日本株の割合は株数が同じでも金額ベースでは減少してしまう。資産価値の増減に伴って比率のズレが生じれば、その分を埋め合わせる必要性に迫られる。結果として海外機関投資家のリバランスの買いを誘導する形となる。円安と同時進行で急勾配の株高トレンドを形成したアベノミクス相場の初動と同様、今の東京市場もそのメカニズムが働いている。
ただし、そうした中も個別株物色の流れ、いわば相場の波紋は常に変化する。足もとでは海外投資家のポートフォリオ組み入れニーズを反映し、主力大型株が表舞台に上がっている状況ではあるが、モメンタム相場を地で行く展開でやや過剰に買われている部分も否めない。上昇相場においてもその修正局面は遠からず訪れる。循環物色の流れのなかで、中小型の好実態株への資金還流にスポットライトが当たるまで、それほど時間はかからない。そのタイミングを示唆するのは日経平均株価やTOPIXが上昇一服となった局面であり、さながら今は中小型株の出番到来に向けたカウントダウンが始まったところである。
●3ケタ銘柄は業績変化が急騰のスイッチ
最近の相場で注目すべきは、株価が3ケタ台(1000円未満)に位置する銘柄が大きく動意するケースが多いことだ。例えば特定用途向け半導体を独自開発するザインエレクトロニクス <6769> [東証S]は、昨年来の株価推移を見ても分かるように地相場が3ケタ台で、今年も5月中旬以降は1カ月にわたって900円台でもみ合っていた。しかし、6月中旬に上放れるや怒涛の資金攻勢によって7月3日に1999円の高値をつけた。あっという間にダブルバガーと化した。きっかけとしては光半導体事業への参入やエッジAI分野での展開が囃(はや)されたわけだが、その背景には「今期(24年12月期)業績の高変化が投資マネーの琴線に触れた」(中堅証券ストラテジスト)と指摘される。前期の営業赤字から今期は一気に10億円強の黒字転換を見込んでいる。
半導体や電子部品の主力銘柄など値がさの大型株は中期保有でキャピタルゲイン妙味を堪能できるケースも多いが、3ケタ台の中低位株の見直し人気がもたらす株価パフォーマンスは、その瞬発力で圧倒的な優位性を持っている。業績の急拡大見通しを会社側が開示しても、株価の見直しにつながるまでタイムラグが生じることは多いが、その半面、一回火が付くと水準訂正の動きは加速する。これが、万年優等生の値がさ株にはみられない“味”である。今回の株探トップ特集では、今期収益が急拡大見通しにある1000円未満の中低位株の中から、変身妙味を内包する8銘柄を厳選した。
●この8銘柄に躍動の季節が訪れる
◎ヤプリ <4168> [東証G]
ヤプリはスマートフォンアプリの開発・運用・分析がノーコード(プログラミングなし)でできるクラウドサービスを提供する。収益の柱はユーザー層からのサブスクリプション課金で小売業界が主要顧客となっている。業績はトップラインの伸びが続くなか、損益面でも23年12月期に営業黒字転換を果たし、24年12月期の営業利益は前期比9割増益となる5億円を見込むなど様変わり。株価は大底圏に位置するが、業績変化が現実味を帯びるなか見直し必至といえ、5日移動平均線を足場に上放れの機が熟している。株価を800円台まで戻せば日足一目均衡表も雲抜けを果たす形となり、トレンド転換が明確となる。
◎グッドコムアセット <3475> [東証P]
グッドコムAは都内で投資用マンションの企画・開発・販売を手掛ける。東京23区の物件を中心に「GENOVIA(ジェノヴィア)」ブランドで展開を図っており、販売先は不動産運用会社を対象とした1棟売りを主力とするが、リテールセールスも手掛ける。仕入れ物件の大型化を進める一方、コスト圧縮にも取り組み24年10月期は業績急回復が見込まれる。営業利益は前期比2.5倍の53億4200万円と変貌を果たす見通しで、PERも7倍台に過ぎず、株価の水準訂正が急速に進んでいる。5月下旬の急落で開けたマドを埋め切り更に上値を慕う展開に。年初来高値更新から1000円大台活躍も有望。
◎アーレスティ <5852> [東証P]
アーレスティは自動車向けを主軸とするダイカスト大手で、売り上げの過半を海外で占め、世界5カ国で積極展開を図っている。25年3月期営業利益は前期比75%増の40億円予想と急拡大を見込んでいるが、想定為替レートは1ドル=140円で設定しており、実勢との差は大きく大幅な為替メリットが生じる公算が大きい。PBRが0.3倍台と割安感が際立つほか、PERも9倍台で円安効果によって利益増額となれば一段の低下が見込まれるだけにここは買い場。株価は4月24日の急落で開けた大きなマドを順調に埋めに行く段階にあり、早晩マド埋めから800円台の攻防へと舞台を移す公算が大きい。
◎ラクーンホールディングス <3031> [東証P]
ラクーンHDはアパレルや雑貨のECサイト「スーパーデリバリー」を運営するほか、掛け売り決済代行ビジネスや売掛債権保証、家賃保証なども手掛ける。25年4月期は広告宣伝や販売促進にかけたコストが減少する一方、回収期突入でプロモーション効果が収益に反映される。大幅な利益率向上により、営業利益は前期比2.2倍の12億5000万円と変貌を見込み、21年4月期以来4期ぶりに過去最高更新となる見通し。年間配当も前期実績から6円増配となる20円を計画しており、配当利回りは3.6%前後と高い。株価は6月20日に532円の年初来安値をつけたが、既に底入れを確認し戻り本番へ。
◎丸運 <9067> [東証S]
丸運は石油などの液体輸送や貨物物流を手掛けており、石油元売り最大手のENEOSホールディングス <5020> [東証P]の持ち分法適用会社だ。業績は価格改定効果によって収益性が高まり、25年3月期はトップラインこそ微増にとどまるが、営業利益は前期比65%増の8億4000万円と急拡大を見込む。年間配当も前期比1円増配の10円を計画するなど株主還元にも前向きだ。更に同社の一株純資産は856円あり、株価はその半値以下のPBR0.4倍台に放置。6月3日に上ヒゲで449円の年初来高値をつけた後は調整を強いられたが、25日線をサポートラインに再び下値を切り上げる展開へ。
◎京三製作所 <6742> [東証P]
京三は鉄道向けを主力とした信号の大手メーカーで、プラットホームの安全性やバリアフリー化で注目されるホームドアでも高水準の需要を取り込んでいる。中期的にはスマートシティー対応の付加価値製品への展開などで収益機会が高まりそうだ。また、信号システム技術のほかに 半導体製造装置用の電源装置でも実力を発揮する。業績は足もと急拡大途上にあり、25年3月期営業利益は前期比2.3倍の57億円を見込んでおり、これは1997年3月期以来実に28年ぶりの過去最高更新というメモリアルな期となる。PERやPBRでも割安感が強く、ここから一段と株価の居どころを変えそうだ。
◎ツバキ・ナカシマ <6464> [東証P]
ツバキナカは鉄製やセラミック製の精密ボールや精密ローラーを製造しており、需要先は工作機械や自動車(EVも含む)向けが主軸。また、半導体製造装置関連の需要もしっかり取り込んでいる。精密ボールは2万種類を超える商品を手掛け、専業メーカーならではの圧倒的なラインアップを誇る。業績は既に前期に底が入り、24年12月期は急回復局面に向かっている。営業利益は前期比37%増となる68億6000万円を予想し、年間配当は前期実績から22円の増配となる35円を計画。配当利回りにして4%を超える。株価はここ継続的な実需買いが観測されるが、PBR0.5倍台はなお大幅な上値余地を示唆する。
◎豊和工業 <6203> [東証S]
豊和工は自動車向けを中心とした工作機械のほか、防衛省を顧客に火器(小銃や火砲)及び防音サッシなどを手掛けており、防衛関連の位置づけでテーマ買い対象として存在感を放っている。防衛予算の拡大は自衛隊向けなどで納入実績の高い同社にとって商機拡大につながる。また、特装車両でも強みを持っており、路面清掃車では国内シェアトップに位置し、受注残も豊富だ。25年3月期は売上高が前期比22%増の241億円、営業利益は同96%増の7億6000万円とほぼ倍増する見通し。ここ株価は動意含みだが、PBRは依然として0.6倍台であり、指標面からも時価近辺は買いに分があろう。
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