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京浜急行電鉄のニュース
―夢を乗せて大空に飛び立つ国産ドローン、大資本企業との協業体制もポイントに―
●スマート保安の担い手となる「ドローン 」
経済産業省は昨年6月に、官民連携による「スマート保安」を強力に推進するため、官民のトップを構成員とした「スマート保安官民協議会」を設置しており、12月には「スマート保安シンポジウム」を開催した。
「スマート保安」とは、(1)国民と産業の安全の確保を第一として、(2)急速に進む技術革新やデジタル化、少子高齢化・人口減少など経済社会構造の変化を的確に捉えながら、(3)産業保安規制の適切な実施と産業の振興・競争力強化の観点に立って、(4)官・民が行う産業保安に関する主体的・挑戦的な取り組みのこと。ひとことで言えば、IoTなど先進デジタル技術を活用したスマートな保安体制ということになる。
スマート保安が重要視されている背景としては、日本のプラント設備が高度経済成長期に建てられた設備を現在まで維持しているものが多く経年劣化が進んでいることに加え、産業保安を支えてきたベテラン人材が大量に退職しつつある一方で、働き方改革や少子高齢化などを要因に現場では人手不足が生じているなどの事業環境の変化が背景にある。また、そもそもの土砂災害(気象災害)リスクに加えて近年の災害激甚化、更に新型コロナウイルス感染症を機に非接触や遠隔による検査体制に対するニーズが高まるなど、産業保安を取り巻く環境の大きな変化も挙げられる。
産業保安現場の課題であるこれらインフラ維持コストの増大、熟練ノウハウの喪失、新しい生活様式への対応に向けて、スマート保安による安全性向上と効率化を進めることで、国民・企業の安全確保と企業の競争力強化の両立を図る狙いがある。その際、従来の人の感覚や経験に頼った方法に限らず、公共インフラの点検で新技術の利用を促すことで、ドローンの産業利用が増えてくることが見込まれる。
●AI技術なども活用してサポート
現状スマート保安で期待されるところでは、ドローンやセンサーによる現場点検の機械監視、ロボット やデジタルデバイスの活用による現場作業の省力化・危険作業の回避、異常事態に関する状況判断を人工知能(AI)によりサポートすることなどが想定されている。例えば石油業界においては、ENEOSホールディングス <5020> がAI技術を利用したプラント自動運転、ロボットを用いた巡回点検の自動化を進めているほか、出光興産 <5019> では特殊球体ドローンを活用したタンク内部点検による効率化を進めている。
ダイキン工業 <6367> は知床世界自然遺産地域保全事業として森を復元する活動を行っており、これまでの活動の成果を森林の成長量やCO2削減量などで測るために、ドローンで撮影した空撮画像を用いて科学的な知見に基づき解析する取り組みに着手している。また、昨年9月から工場内の点検にドローンを本格導入。地上8メートルの高所にある設備をカメラで撮影し異常の有無を確認するほか、エアコンの室外機を搬送するローラーの劣化もチェックすることで点検時間を6分の1に短縮する。
ALSOK <2331> は京浜急行電鉄 <9006> 、NTT <9432> 傘下のNTTコミュニケーションズと共同で「羽田空港第3ターミナル」駅を対象としてローカル5Gを活用した警備業務の実現に向けた実証実験を進める。4K映像を用いたドローンやロボットによる自動巡回または遠隔巡回を試すとしており、行動検知AIで不審行動や歩行サポートが必要な人の自動検知を行うシステム、ALSOKスタッフなどとの連携システムなど全ての情報を集約する遠隔統制席(監視センター)を現場に構築する方針という。
三菱重工業 <7011> は子会社の三菱パワーと漏洩(ろうえい)不適合時などの初動調査(漏洩部位の特定)や足場を仮設しない中間点検時に使用可能なドローンを開発している。火力プラントの停止期間短縮による稼働率向上のニーズは高く、特にボイラーにおける計画外停止期間の短縮や不適合未然防止は重要な課題になっている。足場を仮設せずに点検することができれば、大幅な停止期間の短縮が可能となる。
●中国製から国産ドローンに切り替え進む
また、ドローンはこれまで中国製が世界シェアを握っており、価格・性能の両面で日本は出遅れ感が否めなかった。しかし、中国は2017年に制定した「国家情報法」で、いかなる中国の組織も情報提供で政府・共産党に協力しなければならないと義務付けていることもあり、ドローンに限った話ではないが、国家安全保障という観点から中国製への信頼は揺らいでいる。これは5Gにおけるファーウェイ排除などの構図でも明らかだ。
また、日本政府も昨年9月に「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針」を示している。端的に言えば、重要インフラの点検業務を行うドローンなどについて、内閣官房に事前に計画書を提出し、審査を受けることを義務付けるものだ。政府は保有するドローンも早期にセキュリティー性の高い機種に置き換えを進める方針であり、これらを背景として、結果的には中国製ドローンが排除され、国産に切り替わる形になるとみられている。
●自律制御シ研、双葉電子に注目
ドローン関連としては、自律制御システム研究所 <6232> [東証M]が中核銘柄として位置づけられる。大学発ベンチャーである同社はVisual SLAM と呼ばれる画像認識による自己位置認識技術など独自のドローン制御技術を有しており、産業用途に焦点を当てた商品開発を進めている。昨年12月にはエアロジーラボ(大阪府箕面市)が開発した最大飛行時間180分、最大飛行距離120キロメートル、最大ペイロード10キログラムのハイブリッドドローン「Aerorange pro」に活用されているハイブリッド技術を活用したドローン機体の開発・製造委託契約を締結している。自社開発にとどまらず他社との連携を積極的に行うことで要素技術開発から製造・販売までのバリューチェーンを構築していく。
双葉電子工業 <6986> はラジコン機器で有名だが、産業用ドローンのほか、ロボット・無人機用機能部品などを手掛けている。また、産業用ドローンのオペレーター育成を目的にドローンスクールを展開している。取り扱いに必要な知識や飛行技量の充実を自社所属のインストラクターや社有する屋内・外飛行場を使用しラジコンで培ったノウハウを教える。その他、ソフトバンク <9434> と橋梁や鉄塔、建設現場などでの点検をはじめ、測量や災害支援などに活用できる産業向けドローンの共同開発を昨年9月から開始している。双葉電子の産業用ドローンをベースに、LTE対応の通信モジュールを搭載しているほか、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」に対応している。「ichimill」を活用することで、誤差数センチメートルの精度で飛行制御でき、空撮した画像の位置情報も高精度化できる。
●松屋R&D、ニックスなどにも活躍余地
松屋アールアンドディ <7317> [東証M]は医療用縫合装置、エアバッグ・シートベルトなどの安全装置縫合システムの開発を手掛けているが、ドローン用エアバッグも開発している。このエアバッグはドローンが空中でバランスを崩して落ち始めるとすぐに自動で開くほか、水面に落ちても沈まない。また、高価なカメラのプロテクトという観点からも重要な部品だ。
ニックス <4243> [JQ]は工業用のプラスチック製品を手掛けているが、新規事業としてドローンに搭載するアタッチメントユニット「D-ACT」を展開する。ドローンで運搬する荷物の固定装置を開発しており、今夏ごろの販売を目指しているもよう。半導体工場でプリント基板を保管するラックなどの技術を生かしている。農業分野向けのD-ACT:AGRICULTURE、防災分野向けのD-ACT:RESCUEと順次展開をしていく予定。
KDDI <9433> とアイサンテクノロジー <4667> [JQ]は、KDDIスマートドローンとアイサンテクノロジーの大規模3D点群高速処理ツール「Wing Earth」の連携により、国土交通省が推進するi-Construction(ICTの全面的な活用)に対応した施工管理を効率化させる。スマートドローンプラットフォームを活用し測量対象の静止画撮影、レーザー測量から、作成した点群データを解析、施工管理で利用できるようデータを加工する。
●富士通、NECもドローンに熱視線
富士通 <6702> は子会社富士通コミュニケーションサービスにおいて、ドローントータルサポートソリューションを展開しており、ドローンの業務利用において、「導入検討」の段階から「運用サポート」までトータルに支援する。NEC <6701> は「空飛ぶクルマ」と重量物に特化した産業ドローン「カーゴドローン」を開発するSkyDrive(東京都新宿区)に出資している。NECでは、航空管制システム・衛星運用システムなどで培ってきた管制技術や無線通信技術、無人航空機の飛行制御技術の開発実績のほか、サイバーセキュリティー対策に関する知見を活用しSkyDrive社との連携を強化させる。
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