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ニチモウのニュース
―相場の波乱局面で強さ発揮、マクロ系ファンドがつくり出した潮流に乗る銘柄作戦とは―
東京株式市場では足もとでリスク回避の売り圧力が強まっている。週末14日は日経平均が一時600円安で2万8000円台を割り込む場面があった。米国ではインフレ警戒ムードのなか米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め前倒しに対する思惑が高PERのグロース株を売る動きを誘発しており、投資マインドを冷やしている。ただし、株式市場から資金流出が加速しているというような局面ではなく、その多くはマーケットに滞留している。投資マネーの潮流は同じ株式市場を舞台にバリュー株へと向かっているのだ。そして、海外投資家の売買シェアが高い東京株式市場もその流れに準じている。
全体が波乱相場となっても元々指標面で割安なバリュー株は下値が固く、これに成長シナリオが加われば株価は大きく上値を追うことも可能だ。ここから要注目となる、上値期待十分の銘柄にフォーカスした。
●FRBの変節が相場の流れを変えた
日本国内ではあまり実感が湧かないが、昨年来、欧州や中国、そして米国でインフレに対する懸念が急速に高まっている。新型コロナウイルスのパンデミックがサプライチェーン問題などを引き起こし、コモディティ価格の高騰などによる川上インフレの波及と合わせて物価上昇圧力が庶民の生活を直撃した。米国では、バイデン政権の支持率低下が目立つようになったが、その要因の大半はインフレ放置に対する不満が反映されたものだ。
これまでFRBや欧州中央銀行(ECB)は、インフレは一時的との見解で、金融政策の急速な転換に慎重な姿勢をみせてきたが、最近になってFRBは豹変ともいえる政策スタンスの変更を明示した。以前は筋金入りのハト派とも揶揄されたパウエルFRB議長だったが、長引くインフレを前に、量的金融緩和の縮小いわゆるテーパリングの加速に舵を切り、「インフレは深刻な脅威」であるとして利上げに対しても前向きな発言を示した。また直近では、次期FRB議長候補としても注目を浴びたブレイナード理事(次期FRB副議長)も、これまでのパウエル氏以上のハト派というイメージを払拭するがごとく、タカ派的な発言を行い市場関係者の耳目を驚かせた。
●グロースが売られてもバリューは買われる
こうなると米国株市場も金利の先高思惑から逃れられない。これまで相場の牽引役を担っていたハイテクセクターをはじめとするグロース株には強い逆風が意識されている。ただし、グロース株売りは相場の崩壊を意味するものではない。米国株市場をよく見ると、マーケットからの明確な資金逃避は起きていない。マクロ系ヘッジファンドがグロース株を外し投資指標の割安なバリュー株を組み入れる、いわゆるバリュー株シフトを行っていることでナスダック指数は崩れ足となっているものの、S&P500指数は75日移動平均線の上で底堅い動きを堅持していることからもそれは裏付けられている。
東京株式市場でも、PERやPBRなどの株価指標に関係なくハイパーグロースがもてはやされるような地合いではなくなっているが、逆に新たな投資チャンスが生まれている。これまで蚊帳の外にあった割安株に物色の矛先が向かい始めた。そうした割安株は総じて業績も低迷期を脱出しているものが多く、昨年の海運株の急騰劇はバリュー株相場の先駆けだったともいえる。数兆円単位で運用するマクロ系ファンドの影響力を考えると、日米ともにバリューシフトの流れは当面続く。米長期金利が急騰するような怒涛の債券シフト(リスク資産売り・債券買い)が起これば状況は変わるが、米10年債利回りが2%にも達しない現状では、株式市場でマネーは循環し、PERやPBRが低いバリュー株に位置づけられる銘柄への資金誘導が今後も断続的に生じることが想定される。
●ディープバリューが産み落とす出世株
なかでも、最近では「ディープバリュー(超割安株)」という観点が投資資金の動向に影響を及ぼしている。際立って割安に放置されている銘柄には相応の理由があるとはいえ、企業のファンダメンタルズ的要素から離れた要因、つまりIRの弱さ(投資家に対する経営情報提供力の弱さ)や、テーマ買いの俎上に載りにくい業態あるいは銘柄としての人気度の低さなどに起因しているケースが少なくない。しかしそうした銘柄でも、スポットライトが当たりひとたび投資家の視線が向かえば、実態と遊離した株価の再評価が始まる。
押さえておきたいポイントとしては、割安なだけではなく足もとの業績変化率の高い銘柄もしくは今後それが期待できる銘柄に株価妙味が大きいということだ。当該企業に成長余力がないとみなされれば、株価の水準訂正はあっても単発的なものに終わり、結局狭いボックス圏での往来に逆戻りしやすい。投資家サイドとしては、ディープバリューでなおかつ収益成長にも前向きな取り組みをみせる企業に照準を合わせたい。今回のトップ特集では、それを成長キャパシティーと定義し、中長期投資の切り口でもリターンが期待できる「成長キャパシティーの大きいディープバリュー株」を6銘柄厳選した。
●この6銘柄に新たな株高ストーリー
◎丸文 <7537>
半導体商社でシステム機器も取り扱う。半導体製品や電子部品販売の米アロー・エレクトロニクス
◎東京製鐵 <5423>
独立系の電炉大手で実力は国内トップクラス。自動車減産の影響などはあっても鉄鋼需給は構造的に逼迫しており、鋼材価格の上昇に伴い同社の収益環境に吹く追い風は強い。同社は機動的な販売価格の値上げにより、利幅を追求できる強みを持っている。電炉鋼材はグローバル規模で進む脱炭素志向で注目度が上昇している。そのなか、H形鋼など建設向け鋼材のほか、汎用鋼材の熱延コイルを手掛け高水準の需要を取り込んでいる。22年3月期業績は期中2度にわたる上方修正を経て、売上高が前期比94%増の2740億円という倍増近い伸びを見込む。また、増収効果を反映して営業利益は同7.8倍の310億円と大変貌する見通し。株価は直近13日に昨年来高値1523円をつけた後ひと押し入れているが、目先の押し目は強気に対処したい。時価は約13年ぶり高値で実質青空圏を走るが、PER6倍台は依然として割安さが光る。バリュー株シフトで鉄鋼セクターへの関心が高まるなか一段と存在感を高めそうだ。
◎エイチワン <5989>
ホンダ系自動車部品会社で車体骨格部品を手掛ける。22年3月期業績は半導体不足によるホンダ <7267> の生産台数減少の影響を受け、増収ながら営業利益段階で前期比68%減の12億円予想と大きく落ち込む見通し。年間配当も前期実績比2円の減配を見込む。ただ、株価的には今期業績の低迷については織り込みが進んでおり、減配でも配当利回りは3.5%前後と高い。そして23年3月期は合理化努力の結実で利益急回復の公算が大きい。営業利益は19年3月期の水準である56億円前後に達する可能性もある。1株純資産が前期実績ベースで2400円弱あり、現在の株価で換算したPBRは0.2倍台という超低水準。株価見直し余地はかなり大きい。電気自動車(EV)普及に国策として取り組む中国では新興EVメーカーが数多く誕生しており、それらをターゲットに主要製品の自動車フレームを売り込む計画で、今年1月に広東省にEV部品子会社を設立し需要獲得に本腰を入れる構えにある。
◎ニチモウ <8091>
水産品の専門商社で漁具資材など海洋事業も手掛ける。株主でもある日本水産 <1332> とは密接な関係を築いている。食品事業はすり身生産が好調で収益に貢献。また、食品製造工場向けに加工機械を提供する機械事業も展開するが、近年の巣ごもり消費が食品加工需要を喚起しており、追い風が強い。22年3月期業績は期初予想を増額修正し営業利益段階で前期比29%増の28億円を予想する。PER4倍前後でPBR0.4倍台、3%を超える配当利回りはあまりに評価不足。新市場区分ではプライム市場を選択申請も現状は上場維持基準を満たしていない。しかし、適合に向けた計画書と中期計画を公表しており、成長に対する貪欲な取り組みは評価できる。中期計画では25年3月期に売上高1300億円、営業利益33億円、ROE10%以上などを目標に掲げている。株価は昨年来高値近辺でもみ合っているが、ここを上放れ、約16年ぶりとなる3000円大台(修正後株価)を視野に捉えそうだ。
◎JKホールディングス <9896>
住宅資材の専門商社で、建材のほか合板の製造販売も行っている。M&A戦略により業容拡大路線をまい進するが、足もとの利益成長は特筆され、22年3月期営業利益は前期比57%増益の85億円と急拡大を見込む。これは過去最高利益の大幅更新となる。23年3月期も増収増益基調は維持されそうだ。コロナ禍に対応しながらも営業力の強さを発揮して需要を開拓、素材価格の高騰も販売価格転嫁でこなし、好調に収益を伸ばしている。建材は買収子会社による売り上げ押し上げ効果も発現。新市場区分のプライム市場の上場基準にも問題なく適合している。そうしたなか、投資指標面の割安さが際立っており、時価予想PERは5倍近辺、PBR0.6倍台で水準訂正妙味は抜群といえる。今期年間配当は前期実績比11円増配の年30円としていることも見逃せない。株価は年初から全体相場波乱の影響で調整を強いられたが、早晩切り返しを期待。昨年12月につけた最高値1184円奪回から青空圏飛翔が有力視される。
◎日亜鋼業 <5658>
日本製鉄系の普通線材及び特殊線材の加工製品を手掛け、めっき技術は高く評価されている。需要先は土木や農林、電力通信、自動車など多岐にわたるが、22年3月期は世界的な自動車販売の回復を背景に同業界向け特殊線材の売り上げを伸ばしているほか、インフラ整備が進む高速通信5G基地局向けで特殊線材や締結ボルトなどの引き合いが旺盛となっている。海外では中国とタイに関連会社を持ち、アジアを中心としたグローバル展開にも注力していく方針だ。22年3月期営業利益は前期比28%増の19億円を見込む。23年3月期も一段の自動車向け需要獲得をバネに2ケタ成長が続く見通し。10倍未満のPERもさることながら、前期実績ベースで1株純資産が930円強ある点に注目。解散価値の3分の1以下である0.3倍弱のPBRは株価水準訂正余地の大きさを示唆する。200円台後半は拾い場で、昨年来高値337円を通過点として19年3月の高値水準である400円近辺は戻り射程圏といえる。
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