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東都水産のニュース
■中期経営計画
1.ビジョンと環境認識
東都水産<8038>は「『消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活を第一義に考え、その満足度向上に貢献する』ことを社会的使命・存在意義と定め、このミッションのもと、『ワンランク上の対応ができる水産物流通企業』をめざします」としている。こうしたビジョンの実現に向けては、東京中央卸売市場という「伝統的で信頼性の高い」市場の維持・発展に貢献するとともに、時代の変化に即した「革新的で将来性のある」新しい流通市場を創出していく考えである。また、新たな事業への挑戦とリスクの適切なコントロールを両立させ、持続的な成長を達成するため、「変化に興味を持つ」「広い視野を持つ」「鮮度と旬を極める」という行動指針(バリュー)を掲げている。こうした行動指針に従いながら、高度な倫理観に基づくフェアで透明性の高い組織運営を実現し、卸売業者としての社会的責任の遂行に努めていく方針である。
そのようなミッションのもと、同社は、強靭な収益構造と強固な財務体質の確立が持続的成長のための課題と認識している。しかし、外部環境は逆風であり、少なくとも短期的にはソリューションを見出せないばかりか、豊洲市場への移転で手一杯である。そのうえ、豊洲市場への移転自体が、同社の事業構造や収益構造に変化を生じさせる可能性がある。だから、厳しい外部環境や豊洲市場と築地市場の違いが生む事業構造の変化に積極的に向き合い、市場内で培ったノウハウをもって市場外へ積極的に打って出ることで、卸売市場の長期低落傾向に対応しようと考えている。
「市場外」をキーワードに厳しい環境を乗り越える
2.中期成長イメージ
当面は、主力事業である水産物卸売事業についての持続的成長を経営の最優先課題と認識して取り組んでいく方針である。そのために新規取引先の開拓や、消費者目線に立った集荷・販売、収益性を重視した取引に注力するとともに、営業部門担当取締役の少人数化によって意思決定や指揮命令の迅速化を目指し、利益の源泉である仕入・在庫・販売についてきめ細かく指導・管理を進めていく考えである。一方で、苦しい業績が続いている子会社の東水フーズを解散するなど、グループ経営の効率化にも取り組む。
さらに、グループのネットワークを生かして「市場外」へ向けた新たなトライも開始した。2017年4月に事業開発統括本部を設置し、新規の海外事業をグループ横断的に推進することになり、同年6月の総会で久我勝二(くがしょうじ)氏と長谷幸一郎(ながたにこういちろう)氏が取締役に就任した。大手量販店などによる市場外流通の拡大に対して、市場内にこだわらず市場外流通にも積極的に取り組む方針に転じる見込みである。担当の久我取締役の量販店向け鮮魚卸で培った経験を生かし、従来積極的でなかった大手量販店との取引をより積極化する方針である。子会社の埼玉県魚市場における物流センターの新設は、こうした動きにも対応していると考えられる。
営業本部担当で主に食品加工と輸出を担う長谷取締役は、同社の大株主で同社と大きな商売がある九州の卸売会社(株)三陽の代表取締役である。三陽は子会社に仲卸があり、アジフライやアジのたたきなどの加工を得意にしている。さらに九州から中東への輸出も行っている。そうしたルートやノウハウを生かし、同社も中東やアフリカなどへの輸出拡大を検討している。一方で、同社子会社のAERO TRADING CO.,LTD.の良質な魚加工ノウハウや輸出ネットワークも利用する考えである。AERO TRADING CO.,LTD.の加工品の中には日本人向けの商材も多く、こうした商材を増やすことも考えている。1~3次産業業者と農水省がコラボする水産事業の国際化を目指したプロジェクト「波崎地区6次産業化推進プロジェクト」への参画も、同社のグローバル化に符合した動きといえよう。
水産卸売市場の厳しい環境に対して、「市場外」というキーワードでカバーしていこうという変革の意志は固いように思われる。その実現策として中期経営計画を策定している模様だが、豊洲市場への移転の影響が不透明なため、移転が落ち着いてから精査して発表することになると思われる。楽しみである。
■株主還元策
東都水産<8038>は、創業以来一貫して株主への利益還元を最重要な課題の1つと認識して経営にあたっており、業績に対応した配当を行うことを基本とし、かつ経営基盤の強化と今後の事業展開に備えて内部留保の充実も考慮しつつ、できる限りの安定配当に努めてきた。内部留保資金については、市場環境変化に対応すべく経営基盤の一層の強化と新たな事業展開に備えるために使用する考えである。このため、2018年3月期の配当金は、1株当たり60円の普通配当に1株当たり5円の創立70周年記念配当を加え、1株当たり65円とした。また、2019年3月期の配当金は、引き続き厳しい事業環境を想定していることから、現時点では1株当たり60円とする方針である。中期的には、成長イメージに沿った増配に期待したい。
■情報セキュリティ
ほとんど個人情報を扱っていないが、統合脅威管理システムを導入し不正アクセスなどをブロックする一方、従業員情報については別サーバーの人事ソフトで管理している。内部情報についてはクライアント側のウイルスソフトで対応している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<TN>
1.ビジョンと環境認識
東都水産<8038>は「『消費者の皆様の豊かで魅力的な食生活を第一義に考え、その満足度向上に貢献する』ことを社会的使命・存在意義と定め、このミッションのもと、『ワンランク上の対応ができる水産物流通企業』をめざします」としている。こうしたビジョンの実現に向けては、東京中央卸売市場という「伝統的で信頼性の高い」市場の維持・発展に貢献するとともに、時代の変化に即した「革新的で将来性のある」新しい流通市場を創出していく考えである。また、新たな事業への挑戦とリスクの適切なコントロールを両立させ、持続的な成長を達成するため、「変化に興味を持つ」「広い視野を持つ」「鮮度と旬を極める」という行動指針(バリュー)を掲げている。こうした行動指針に従いながら、高度な倫理観に基づくフェアで透明性の高い組織運営を実現し、卸売業者としての社会的責任の遂行に努めていく方針である。
そのようなミッションのもと、同社は、強靭な収益構造と強固な財務体質の確立が持続的成長のための課題と認識している。しかし、外部環境は逆風であり、少なくとも短期的にはソリューションを見出せないばかりか、豊洲市場への移転で手一杯である。そのうえ、豊洲市場への移転自体が、同社の事業構造や収益構造に変化を生じさせる可能性がある。だから、厳しい外部環境や豊洲市場と築地市場の違いが生む事業構造の変化に積極的に向き合い、市場内で培ったノウハウをもって市場外へ積極的に打って出ることで、卸売市場の長期低落傾向に対応しようと考えている。
「市場外」をキーワードに厳しい環境を乗り越える
2.中期成長イメージ
当面は、主力事業である水産物卸売事業についての持続的成長を経営の最優先課題と認識して取り組んでいく方針である。そのために新規取引先の開拓や、消費者目線に立った集荷・販売、収益性を重視した取引に注力するとともに、営業部門担当取締役の少人数化によって意思決定や指揮命令の迅速化を目指し、利益の源泉である仕入・在庫・販売についてきめ細かく指導・管理を進めていく考えである。一方で、苦しい業績が続いている子会社の東水フーズを解散するなど、グループ経営の効率化にも取り組む。
さらに、グループのネットワークを生かして「市場外」へ向けた新たなトライも開始した。2017年4月に事業開発統括本部を設置し、新規の海外事業をグループ横断的に推進することになり、同年6月の総会で久我勝二(くがしょうじ)氏と長谷幸一郎(ながたにこういちろう)氏が取締役に就任した。大手量販店などによる市場外流通の拡大に対して、市場内にこだわらず市場外流通にも積極的に取り組む方針に転じる見込みである。担当の久我取締役の量販店向け鮮魚卸で培った経験を生かし、従来積極的でなかった大手量販店との取引をより積極化する方針である。子会社の埼玉県魚市場における物流センターの新設は、こうした動きにも対応していると考えられる。
営業本部担当で主に食品加工と輸出を担う長谷取締役は、同社の大株主で同社と大きな商売がある九州の卸売会社(株)三陽の代表取締役である。三陽は子会社に仲卸があり、アジフライやアジのたたきなどの加工を得意にしている。さらに九州から中東への輸出も行っている。そうしたルートやノウハウを生かし、同社も中東やアフリカなどへの輸出拡大を検討している。一方で、同社子会社のAERO TRADING CO.,LTD.の良質な魚加工ノウハウや輸出ネットワークも利用する考えである。AERO TRADING CO.,LTD.の加工品の中には日本人向けの商材も多く、こうした商材を増やすことも考えている。1~3次産業業者と農水省がコラボする水産事業の国際化を目指したプロジェクト「波崎地区6次産業化推進プロジェクト」への参画も、同社のグローバル化に符合した動きといえよう。
水産卸売市場の厳しい環境に対して、「市場外」というキーワードでカバーしていこうという変革の意志は固いように思われる。その実現策として中期経営計画を策定している模様だが、豊洲市場への移転の影響が不透明なため、移転が落ち着いてから精査して発表することになると思われる。楽しみである。
■株主還元策
東都水産<8038>は、創業以来一貫して株主への利益還元を最重要な課題の1つと認識して経営にあたっており、業績に対応した配当を行うことを基本とし、かつ経営基盤の強化と今後の事業展開に備えて内部留保の充実も考慮しつつ、できる限りの安定配当に努めてきた。内部留保資金については、市場環境変化に対応すべく経営基盤の一層の強化と新たな事業展開に備えるために使用する考えである。このため、2018年3月期の配当金は、1株当たり60円の普通配当に1株当たり5円の創立70周年記念配当を加え、1株当たり65円とした。また、2019年3月期の配当金は、引き続き厳しい事業環境を想定していることから、現時点では1株当たり60円とする方針である。中期的には、成長イメージに沿った増配に期待したい。
■情報セキュリティ
ほとんど個人情報を扱っていないが、統合脅威管理システムを導入し不正アクセスなどをブロックする一方、従業員情報については別サーバーの人事ソフトで管理している。内部情報についてはクライアント側のウイルスソフトで対応している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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