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―対中国を念頭に置き日米連携体制を強化、自動運転分野などで更なる技術飛躍へ―
●日米連携で6G時代を切り拓く
4月中旬にワシントンで開催された日米首脳会談を受け、両首脳が発出した共同声明では、日米両国が共有する安全および繁栄のためには21世紀に相応しい新たな形の協力が必要であることを認識し、「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」を立ち上げることが示されている。そのなか、安全でオープンな5Gネットワークを推進するほか、5G および次世代通信規格(6G)を含む先端的なICTの研究開発に米国は25億ドル(約2675億円)、日本は20億ドル(約2140億円)を投資することで合意した。両国はデジタル分野における競争力を連携して高めていく戦略だ。
また、共通の脅威に対処するための日米両国のパートナーのサイバーセキュリティー能力を構築するなど、安全なデジタル経済を促進すべく、「グローバル・デジタル連結性パートナーシップ」を立ち上げるとしている。その他、ICT専門家による連携・情報交換の強化のほか、 半導体などを念頭にサプライチェーンや重要技術の育成保護においても協力を深めていくことになる。
●5Gの100倍の通信速度、覇を競う日本企業
米国という世界経済の巨人との連携が強化されていく流れの中、国内では総務省が昨年6月に、2030年代の実用化を目指している5Gの次の世代にあたる「Beyond 5G(=6G)」に向けたロードマップを公表している。Beyond 5Gに求められるのは、端的に言えば「5Gからの更なる高度化」であり、例えば「超高速・大容量」という観点ではアクセス通信速度が5Gの100倍、「超多数同時接続」の観点では5Gの10倍、「超低消費電力」の観点では現在の100分の1程度が目標となっているようだ。
これらを達成する上で必要かつ日本が強みを持つ分野(積極的に取り組んでいる分野も含む)としては、「テラヘルツ波」や「オール光ネットワーク」「低消費電力半導体」「完全仮想化」「量子暗号」「センシング」などが挙げられている。また、話はややそれるが、NTTドコモは、5Gのサービス提供で必須となる特許の保有シェアが世界3位となり、通信事業者として世界首位になったと発表している。Beyond 5G(6G)を見据えるという意味でも、日本企業の奮闘は心強いといえる。
しかし、技術力では勝る面があるものの、「市場展開」という点では日本勢は出遅れ、基地局シェアでいえば、市場における主要企業の中にカウントされているのはNEC <6701> のみとなっている(Kenneth Researchの調査レポートより)。安全保障上の問題として中国勢排除の動きはあるものの、華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)といった中国の躍進はすさまじく、6Gにおいても米国と覇権を争うことになることは必至だ。「日米パートナーシップ」は、対中国を念頭に置いたものでもあり、日米連携に更に第3国も巻き込んだ多国間連携も視野に入れ、巻き返しを図ることになる。
●ここから活躍が期待される銘柄は?
既に通信キャリア各社は、昨年3月から商用5Gサービスを開始し、米アップルなどスマートフォンメーカー各社も5G対応製品を投入している。しかし、消費者の実感としては5Gによる劇的な変化はほとんど感じられていないだろう。現状は携帯キャリア各社の5Gエリアを見れば、限られた地域・エリアで利用できる程度の状態であり、恩恵を受けている利用者が非常に乏しいからだ。しかし、それだけに関連企業はこれからのビジネスチャンスが大きいともいえる。
5Gは、 自動運転や遠隔医療などにおける利用が期待されているが、6Gでは通信速度が5Gの100倍となる見込みのため、大容量のデータをリアルタイムで更に安定的に送れることになる。自動運転においては、現在の高速道路のみでの利用から、より複雑な一般道路や地形にも対応することができるようになるだろう。6Gの関連銘柄としては、現状では概ね5G関連と大きな違いはないとみられる。
5Gの普及が不十分な今、そして将来的にBeyond 5G(6G)の恩恵を関連企業は享受できる可能性が高い。日米連携を中核に他国も巻き込んで、世界シェアを勝ち取ることができれば、利益成長は一段と高まることが期待されよう。市場でも注目度の高い銘柄を以下に挙げてみる。
●アンリツ <6754> …5Gを構成する標準規格への適合性確認や通信品質の確保を支える測定ソリューションを提供。計測事業では5Gチップセットや携帯端末の開発需要が順調だ。アジア地域で5G商用化に向けた開発需要が拡大しており、5Gビジネスを牽引している。R&D投資促進に注力し、競争力強化に努めるほか、6Gに向けた高周波測定技術の探求など、積極的な投資を継続していく計画。
●村田製作所 <6981> …5Gスマホ向け積層セラミックコンデンサー(MLCC)では世界最小サイズでありながら、世界最大の静電容量を実現した製品を開発。電子回路を技術仕様通りに安定動作させるために欠かせない電子部品であるMLCCはスマホ1台当たり約800-1000個使われているようである。MLCCでは世界シェア40%を獲得している。
●レーザーテック <6920> …光源にEUVを使ったEUV露光用フォトマスク(半導体回路の原版)の欠陥検査装置で、シェア100%である。微細化を進めた高性能な半導体に対する需要が強く、ロジックデバイスメーカーは最先端のEUVを用いた半導体製造工程の能力増強投資を積極的に行っている。
●東京応化工業 <4186> …フォトリソグラフィを用いた微細加工技術がLSIなどの半導体や半導体パッケージなどで利用されている。半導体製造用フォトレジストにおいて世界トップクラスのシェアを有している。また、半導体の製造に欠かせない、高純度化学薬品においてもトップレベルの技術力である。
●ニコン <7731> …同社とソフトバンク <9434> は、光無線通信技術の新たな利用シーンの創出を目的として、AI技術、画像処理技術、精密制御技術を活用し、360度追尾可能な「トラッキング光無線通信技術」の実証に世界で初めて成功したと発表している。光無線通信は電波障害に強く、6G以降の世界では、光の活用も期待されている。
●santec <6777> [JQ]…光部品関連事業を展開しており、光伝送信号強度を監視する「光モニタ」、光の強度を適切に管理する「光可変アッテネータ(減衰器)」、波長多重信号を分離・合波する「光フィルタ」のほか、光通信市場向けの波長可変光源や各種光測定装置を手掛ける。光部品関連事業は、増加する通信トラフィック、5G関連投資を背景に、堅調に推移することが見込まれている。
●ソニーグループ <6758> …同社とNTT <9432> 、インテル主導により、2019年に革新的な技術によってスマートな世界の実現を目指す、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を提唱。光関連技術を活用した次世代情報通信基盤を推進している。
株探ニュース
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