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■中期経営計画
3. 中期経営計画
エノモト<6928>は「ビジョン2030」をかなえるため、その1st STEPとなる中期経営計画を策定、成長戦略と収益力強化、新規事業を軸とする戦略を打ち出した。収益目標としては、2024年3月期に売上高250億円、営業利益20億円、ROE8%を達成する計画である。
(1) 成長戦略と収益力強化
1st STEPでは成長戦略として、情報通信やEV・自動運転などの分野において、5年で1.5倍の伸長が見込まれるウェアラブル端末向けコネクタや、フィリピンや中国での伸長が期待されるEV・車載向け、ニーズの強い国内のデータセンター向けパワー半導体など、高い成長が見込まれる品目を強化する計画である。一方、自動化と一貫生産体制を強化して収益力の強化も図る。主力製品の核となる金型製作は、熟練の技術が必要で加工工数も多く、技術者を育成するのに長い時間を要する。このため、自動化と低コスト化を進めることで将来の技術者不足に対応、さらに加工データを活用した技術伝承の仕組み化も見据える。また、一貫生産体制をバージョンアップすることで、短中期的な収益性改善を見込むとともに、将来へ向けて、価格競争力の維持や次々生まれる新たな需要への対応、主力製品の付加価値率の引き上げなどを図る。このように1st STEPでは、金型製作の自動化と一貫生産体制の強化によって増収効果と限界利益率引き上げ、営業利益率で1%超の改善を目指す。
(2) 燃料電池部品の開発
ところで、脱炭素の主役としてEVが脚光を浴びてきたが、近年、FCV(水素燃料電池車)が再注目されている。いずれも、“燃料”となる電気や水素を作る際の自然エネルギーの利用に課題が残るが、例えば、中近距離移動のEV、幹線輸送・長距離移動のFCVなど棲み分けがきくものと考える。同社はいずれにも関与しており、特に新規事業として、燃料電池部品~固体高分子型燃料電池(PEFC)向けのガス拡散層(GDL)一体型金属セパレータの開発を山梨大学と産学共同で行っている。現在、新開発の流路付きGDL(GDLFC+)で大幅な高電流密度化を実現、同社技術により汎用樹脂にガス流路を成形することができた。また、金属セパレータ、GDLを自社生産することでガスソケットと一体化、コスト削減も実現している。既に実用化に向けて数社と組んでいる模様で、グリーンローンを活用して調達した資金で中量生産体制を構築している。2025年のFCV向けテストの開始や、2030年の実用化~大量生産開始へ向けて、1st STEPでは、顧客の仕様や条件への適用、量産ラインの稼働実験、顧客開拓、などを進めていく方針である。燃料電池部品のメインターゲットはFCVで、その市場規模は5兆円近くとも言われるが、同時並行してEVやドローン、緊急電源、エネファームなどへの応用範囲拡大も図っている。
(3) 投資の考え方
以上のような中期経営計画を実行するため、同社は、1st STEPの3年間で60億円~70億円の設備投資を計画している。内訳は、ウェアラブル端末向けなどコネクタを増産する津軽工場増築31億円、ワイヤレスボンディング仕様のパワー半導体用リードフレームの増産10億円、スマートファクトリー向けデジタル投資5億円などである。なかでも最重要の投資が津軽工場の増築投資である。1st STEPでは、コネクタ中心の増強投資が短中期的な収益確保~成長という点で重要だが、スマートファクトリー化は長期的な点で重要な投資となる。つまり、金型製作の自動化やプレス~メッキ~成形~組立の一貫生産体制の強化により津軽工場のコスト低減~生産性向上が進めば、2nd STEP以降に他の内外工場にスマートファクトリー化のノウハウを横展開していく考えだからである。いずれにしろ、1st STEPの収益目標達成のためにも、2022年3月期の設備投資は全体の3分の2程度と計画の初期段階で大半を投じられる予定になっている。また、こうした投資計画への配慮もあるだろうが、株主還元は配当性向25%を目途に安定配当を継続する方針である。さらに、2nd STEP以降は、投資案件を勘案しつつ、配当性向を引き上げていくことも検討している。同社の事業自体が、脱炭素社会の実現に向けたプロセスの真ん中をかけ抜けることになるため、同社の中長期成長に期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 中期経営計画
エノモト<6928>は「ビジョン2030」をかなえるため、その1st STEPとなる中期経営計画を策定、成長戦略と収益力強化、新規事業を軸とする戦略を打ち出した。収益目標としては、2024年3月期に売上高250億円、営業利益20億円、ROE8%を達成する計画である。
(1) 成長戦略と収益力強化
1st STEPでは成長戦略として、情報通信やEV・自動運転などの分野において、5年で1.5倍の伸長が見込まれるウェアラブル端末向けコネクタや、フィリピンや中国での伸長が期待されるEV・車載向け、ニーズの強い国内のデータセンター向けパワー半導体など、高い成長が見込まれる品目を強化する計画である。一方、自動化と一貫生産体制を強化して収益力の強化も図る。主力製品の核となる金型製作は、熟練の技術が必要で加工工数も多く、技術者を育成するのに長い時間を要する。このため、自動化と低コスト化を進めることで将来の技術者不足に対応、さらに加工データを活用した技術伝承の仕組み化も見据える。また、一貫生産体制をバージョンアップすることで、短中期的な収益性改善を見込むとともに、将来へ向けて、価格競争力の維持や次々生まれる新たな需要への対応、主力製品の付加価値率の引き上げなどを図る。このように1st STEPでは、金型製作の自動化と一貫生産体制の強化によって増収効果と限界利益率引き上げ、営業利益率で1%超の改善を目指す。
(2) 燃料電池部品の開発
ところで、脱炭素の主役としてEVが脚光を浴びてきたが、近年、FCV(水素燃料電池車)が再注目されている。いずれも、“燃料”となる電気や水素を作る際の自然エネルギーの利用に課題が残るが、例えば、中近距離移動のEV、幹線輸送・長距離移動のFCVなど棲み分けがきくものと考える。同社はいずれにも関与しており、特に新規事業として、燃料電池部品~固体高分子型燃料電池(PEFC)向けのガス拡散層(GDL)一体型金属セパレータの開発を山梨大学と産学共同で行っている。現在、新開発の流路付きGDL(GDLFC+)で大幅な高電流密度化を実現、同社技術により汎用樹脂にガス流路を成形することができた。また、金属セパレータ、GDLを自社生産することでガスソケットと一体化、コスト削減も実現している。既に実用化に向けて数社と組んでいる模様で、グリーンローンを活用して調達した資金で中量生産体制を構築している。2025年のFCV向けテストの開始や、2030年の実用化~大量生産開始へ向けて、1st STEPでは、顧客の仕様や条件への適用、量産ラインの稼働実験、顧客開拓、などを進めていく方針である。燃料電池部品のメインターゲットはFCVで、その市場規模は5兆円近くとも言われるが、同時並行してEVやドローン、緊急電源、エネファームなどへの応用範囲拡大も図っている。
(3) 投資の考え方
以上のような中期経営計画を実行するため、同社は、1st STEPの3年間で60億円~70億円の設備投資を計画している。内訳は、ウェアラブル端末向けなどコネクタを増産する津軽工場増築31億円、ワイヤレスボンディング仕様のパワー半導体用リードフレームの増産10億円、スマートファクトリー向けデジタル投資5億円などである。なかでも最重要の投資が津軽工場の増築投資である。1st STEPでは、コネクタ中心の増強投資が短中期的な収益確保~成長という点で重要だが、スマートファクトリー化は長期的な点で重要な投資となる。つまり、金型製作の自動化やプレス~メッキ~成形~組立の一貫生産体制の強化により津軽工場のコスト低減~生産性向上が進めば、2nd STEP以降に他の内外工場にスマートファクトリー化のノウハウを横展開していく考えだからである。いずれにしろ、1st STEPの収益目標達成のためにも、2022年3月期の設備投資は全体の3分の2程度と計画の初期段階で大半を投じられる予定になっている。また、こうした投資計画への配慮もあるだろうが、株主還元は配当性向25%を目途に安定配当を継続する方針である。さらに、2nd STEP以降は、投資案件を勘案しつつ、配当性向を引き上げていくことも検討している。同社の事業自体が、脱炭素社会の実現に向けたプロセスの真ん中をかけ抜けることになるため、同社の中長期成長に期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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