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*12:38JST ワコム Research Memo(8):「テクノロジーソリューション事業」がここ数年の業績の伸びをけん引
■ワコム<6727>のこれまでの業績推移
コロナ禍前の2020年3月期までの売上高推移を見ると、2017年3月期にいったん大きく落ち込んだのは、円高に加え、過度な社内ITインフラ投資、製品サイクルの移行等の影響が重なったことが理由である。その後は、「テクノロジーソリューション事業」の伸びとともに回復したものの、「ブランド製品事業」については縮小傾向をたどり、「ブランド製品事業」のマイナスを「テクノロジーソリューション事業」のプラスでカバーする構造が続いてきた。2021年3月期にはコロナ禍をきっかけとしてオンライン教育向けなどを中心に「ブランド製品事業」が急拡大すると、巣ごもり需要が一巡した2022年3月期もプロ向けディスプレイ製品や「テクノロジーソリューション事業」の伸びにより、2期連続で過去最高売上高を更新した。2023年3月期に入ってからは世界的な経済環境の悪化に伴う急激な消費者センチメントの低下やコロナ特需の落ち着き等により、「ブランド製品事業」(特に中低価格帯モデル)が大きく落ち込んだものの、「テクノロジーソリューション事業」の伸びで増収を確保した。
損益面では、営業赤字となった2017年3月期以降は、積極的な研究開発や新製品開発をこなしながら営業利益率は4%台から6%台で徐々に改善してきた。2021年3月期及び2022年3月期は、増収に伴う収益の押し上げや製品ミックスの改善、販管費の最適化等により2期連続で高い利益率を確保したものの、2023年3月期については、製品ミックスの悪化や棚卸資産評価減等の計上等により「ブランド製品事業」がセグメント損失を計上し、全体の利益率も大きく低下した。
財務面では、IT資産の減損損失の計上により大幅な最終損失となった2017年3月期に自己資本比率はいったん低下したが、その後は内部留保の積み増しにより改善傾向にあり、60%に近づいてきた。ただ、2023年3月期は自己株式の取得等により若干低下した。資本効率を示すROEや事業活動の効率性を示すROICも高水準で推移してきたが、2023年3月期は利益水準の落ち込みとともに大きく低下した。財務健全性の確保を前提として、2024年3月期から2025年3月期にかけての負債資本倍率(D/Eレシオ)0.3~0.5倍程度までの負債レバレッジを活用することにより、資本効率を意識した事業運営を進めて行くとの考え方を開示しており、上期末時点では0.3倍強となっていることからバランスは取れている。今後、在庫を中心とする運転資本のマネジマント、事業利益の創出から生まれるキャッシュ・フローを投資と株主還元へ配分することによって、健全性が毀損されていないかどうかを計る重要な財務指標となるので、併せて注視していく必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<SI>
コロナ禍前の2020年3月期までの売上高推移を見ると、2017年3月期にいったん大きく落ち込んだのは、円高に加え、過度な社内ITインフラ投資、製品サイクルの移行等の影響が重なったことが理由である。その後は、「テクノロジーソリューション事業」の伸びとともに回復したものの、「ブランド製品事業」については縮小傾向をたどり、「ブランド製品事業」のマイナスを「テクノロジーソリューション事業」のプラスでカバーする構造が続いてきた。2021年3月期にはコロナ禍をきっかけとしてオンライン教育向けなどを中心に「ブランド製品事業」が急拡大すると、巣ごもり需要が一巡した2022年3月期もプロ向けディスプレイ製品や「テクノロジーソリューション事業」の伸びにより、2期連続で過去最高売上高を更新した。2023年3月期に入ってからは世界的な経済環境の悪化に伴う急激な消費者センチメントの低下やコロナ特需の落ち着き等により、「ブランド製品事業」(特に中低価格帯モデル)が大きく落ち込んだものの、「テクノロジーソリューション事業」の伸びで増収を確保した。
損益面では、営業赤字となった2017年3月期以降は、積極的な研究開発や新製品開発をこなしながら営業利益率は4%台から6%台で徐々に改善してきた。2021年3月期及び2022年3月期は、増収に伴う収益の押し上げや製品ミックスの改善、販管費の最適化等により2期連続で高い利益率を確保したものの、2023年3月期については、製品ミックスの悪化や棚卸資産評価減等の計上等により「ブランド製品事業」がセグメント損失を計上し、全体の利益率も大きく低下した。
財務面では、IT資産の減損損失の計上により大幅な最終損失となった2017年3月期に自己資本比率はいったん低下したが、その後は内部留保の積み増しにより改善傾向にあり、60%に近づいてきた。ただ、2023年3月期は自己株式の取得等により若干低下した。資本効率を示すROEや事業活動の効率性を示すROICも高水準で推移してきたが、2023年3月期は利益水準の落ち込みとともに大きく低下した。財務健全性の確保を前提として、2024年3月期から2025年3月期にかけての負債資本倍率(D/Eレシオ)0.3~0.5倍程度までの負債レバレッジを活用することにより、資本効率を意識した事業運営を進めて行くとの考え方を開示しており、上期末時点では0.3倍強となっていることからバランスは取れている。今後、在庫を中心とする運転資本のマネジマント、事業利益の創出から生まれるキャッシュ・フローを投資と株主還元へ配分することによって、健全性が毀損されていないかどうかを計る重要な財務指標となるので、併せて注視していく必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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