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ワコムのニュース
*14:01JST ワコム Research Memo(1):2023年3月期は増収・大幅減益。将来を見据え中期経営方針をアップデート
■要約
ワコム<6727>は、デジタルペンとインクの事業領域で、技術に基づいた顧客価値の創造を目指すグローバルリーダーである。映画制作や工業デザインのスタジオで働くデザイナー、アニメーターなどプロのクリエイターからの支持により高いブランド力とシェアを誇る。自社ブランドで「ディスプレイ(液晶ペンタブレット)製品」や「ペンタブレット製品」等を販売する「ブランド製品事業」と、スマートフォンやタブレットなど完成品メーカー向けに独自のデジタルペン技術をコンポーネントとして供給する「テクノロジーソリューション事業」の2つのセグメントで事業を展開している。
1. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.6%増の112,730百万円、営業利益が同84.5%減の2,013百万円と増収ながら大幅な減益となった。売上高は、円安によるプラス効果や「テクノロジーソリューション事業」の伸びにより増収を確保した。ただ「ブランド製品事業」については、プロ向けディスプレイ製品が伸長したものの、中低価格モデルが消費者センチメントの低下やコロナ特需(オンライン教育や巣ごもり需要など)の落ち着きなどで大きく落ち込んだ。損益面では「テクノロジーソリューション事業」の伸びが収益を押し上げた一方、「ブランド製品事業」における粗利益率の低下(製品ミックスの悪化や為替変動による影響※、棚卸資産評価損等の計上)や売上減少に伴う粗利減により大幅な営業減益となった。
※為替変動によるドル建て仕入価格の高騰に対してドル建て以外の売上収入の部分がマイナス影響を受けた。
2. 中期経営方針「Wacom Chapter 3」のアップデート
同社は、4ヶ年の中期経営方針「Wacom Chapter 3」(2022年3月期~2025年3月期)に沿った取り組みを推進している。「ライフロング・インク」のビジョンを継承し、改めて「5つの戦略軸」を設定するとともに、その実行に当たって「6つの主要技術開発軸」を定め、具体的な価値提供と持続的な成長につなげる方針である。特に既存技術と親和性の高いAI、XR、セキュリティの3分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルで新しい価値提供を実現していくところが戦略の目玉となっている。ただ、足元での急激な経済環境の悪化といった外部要因への対応に加え、商品ポートフォリオや販路マネジメントの強化など同社自身の体制にも改善すべき余地があるとも考えている。そのため今後2年間(2024年3月期~2025年3月期)については、次の「Wacom Chapter 4」での事業成長につなげるための「事業構造変革期間」と位置付け、粗利改善や成長基盤の構築に注力する方針を打ち立てた(2023年1月に一次レポート、5月に二次レポートを公表)。
3. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の連結業績予想について同社は、売上高を前期比6.0%減の106,000百万円、営業利益を同123.5%増の4,500百万円と減収ながら増益を見込んでいる。減収予想となっているのは、市場環境の不透明さの継続や円高想定(マイナス効果)により、「テクノロジーソリューション事業」の減収を見込んでいることが理由である。「ブランド製品事業」については、不透明な市場環境や円高想定の影響を勘案しつつも、商品ポートフォリオの刷新や価格政策により前期と同水準を確保する見通しとなっている。損益面では、積極的な研究開発投資を継続するものの、「ブランド製品事業」の黒字転換が増益に寄与する。将来を見据えた研究開発投資については年間7,700百万円(前期比15.3%増)を予定するとともに、「事業構造変革」に注力する考えだ。
■Key Points
・2023年3月期は「ブランド製品事業」(中低価格帯モデル)の急減速により増収ながら減益、経済環境悪化に伴う消費者センチメントの低下やコロナ特需の落ち着きなどが大きく影響
・外部環境や課題認識への対応を図るため、中期経営方針「Wacom Chapter 3」をアップデート。次の「Wacom Chapter 4」での成長加速に向けて事業構造変革に注力する方針
・2024年3月期は減収ながら増益を予想。「ブランド製品事業」での商品ポートフォリオの刷新や価格政策の実施に取り組み、前期計上した棚卸資産評価損等の解消による粗利改善を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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ワコム<6727>は、デジタルペンとインクの事業領域で、技術に基づいた顧客価値の創造を目指すグローバルリーダーである。映画制作や工業デザインのスタジオで働くデザイナー、アニメーターなどプロのクリエイターからの支持により高いブランド力とシェアを誇る。自社ブランドで「ディスプレイ(液晶ペンタブレット)製品」や「ペンタブレット製品」等を販売する「ブランド製品事業」と、スマートフォンやタブレットなど完成品メーカー向けに独自のデジタルペン技術をコンポーネントとして供給する「テクノロジーソリューション事業」の2つのセグメントで事業を展開している。
1. 2023年3月期の業績概要
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.6%増の112,730百万円、営業利益が同84.5%減の2,013百万円と増収ながら大幅な減益となった。売上高は、円安によるプラス効果や「テクノロジーソリューション事業」の伸びにより増収を確保した。ただ「ブランド製品事業」については、プロ向けディスプレイ製品が伸長したものの、中低価格モデルが消費者センチメントの低下やコロナ特需(オンライン教育や巣ごもり需要など)の落ち着きなどで大きく落ち込んだ。損益面では「テクノロジーソリューション事業」の伸びが収益を押し上げた一方、「ブランド製品事業」における粗利益率の低下(製品ミックスの悪化や為替変動による影響※、棚卸資産評価損等の計上)や売上減少に伴う粗利減により大幅な営業減益となった。
※為替変動によるドル建て仕入価格の高騰に対してドル建て以外の売上収入の部分がマイナス影響を受けた。
2. 中期経営方針「Wacom Chapter 3」のアップデート
同社は、4ヶ年の中期経営方針「Wacom Chapter 3」(2022年3月期~2025年3月期)に沿った取り組みを推進している。「ライフロング・インク」のビジョンを継承し、改めて「5つの戦略軸」を設定するとともに、その実行に当たって「6つの主要技術開発軸」を定め、具体的な価値提供と持続的な成長につなげる方針である。特に既存技術と親和性の高いAI、XR、セキュリティの3分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルで新しい価値提供を実現していくところが戦略の目玉となっている。ただ、足元での急激な経済環境の悪化といった外部要因への対応に加え、商品ポートフォリオや販路マネジメントの強化など同社自身の体制にも改善すべき余地があるとも考えている。そのため今後2年間(2024年3月期~2025年3月期)については、次の「Wacom Chapter 4」での事業成長につなげるための「事業構造変革期間」と位置付け、粗利改善や成長基盤の構築に注力する方針を打ち立てた(2023年1月に一次レポート、5月に二次レポートを公表)。
3. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の連結業績予想について同社は、売上高を前期比6.0%減の106,000百万円、営業利益を同123.5%増の4,500百万円と減収ながら増益を見込んでいる。減収予想となっているのは、市場環境の不透明さの継続や円高想定(マイナス効果)により、「テクノロジーソリューション事業」の減収を見込んでいることが理由である。「ブランド製品事業」については、不透明な市場環境や円高想定の影響を勘案しつつも、商品ポートフォリオの刷新や価格政策により前期と同水準を確保する見通しとなっている。損益面では、積極的な研究開発投資を継続するものの、「ブランド製品事業」の黒字転換が増益に寄与する。将来を見据えた研究開発投資については年間7,700百万円(前期比15.3%増)を予定するとともに、「事業構造変革」に注力する考えだ。
■Key Points
・2023年3月期は「ブランド製品事業」(中低価格帯モデル)の急減速により増収ながら減益、経済環境悪化に伴う消費者センチメントの低下やコロナ特需の落ち着きなどが大きく影響
・外部環境や課題認識への対応を図るため、中期経営方針「Wacom Chapter 3」をアップデート。次の「Wacom Chapter 4」での成長加速に向けて事業構造変革に注力する方針
・2024年3月期は減収ながら増益を予想。「ブランド製品事業」での商品ポートフォリオの刷新や価格政策の実施に取り組み、前期計上した棚卸資産評価損等の解消による粗利改善を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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