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ワコムのニュース
■今後の見通し
1. 2020年3月期の見通しの概要~季節性による第1四半期の赤字計上に要留意
2020年3月期についてワコム<6727>は、売上高93,000百万円(前期比3.9%増)、営業利益5,200百万円(同25.2%増)、経常利益5,170百万円(同24.6%増)、親会社株主に帰属する当期利益3,440百万円(同10.7%減)と増収増益を予想している。
親会社株主に帰属する当期利益が前期比減益となるのは、2019年3月期において繰延税金資産の回収可能性見直しで税金費用が減少したことの反動によるものだ。利益変動の実態は営業利益、経常利益の動向がより正確に表していると言えよう。
同社の業績は2018年3月期に前期の営業赤字からV字回復を実現して以来、増収増益基調にある。しかしその中身を事業セグメント別に見た場合、2019年3月期までの過去2期間はいずれも、ブランド製品事業が計画を下回り、それをテクノロジーソリューション事業がカバーするという構図が続いている。2020年3月期は、そうした構図から脱却し、ブランド製品事業でしっかりと収益の成長を実現することを同社は目指している。これはデジタルペンとインクの領域で世界のリーディングカンパニーを自負する同社としては当然のことと言える。
一方、テクノロジーソリューション事業については、本質的に収益変動が大きく、且つ同社自身の努力やコントロールが及ばない部分が大きい事業であるため、常にベースライン(“想定しうる最悪ケースでも確実に確保できる最低ライン”の意)を前提とした経営に努めており、業績予想においてもそのスタンスが取り入れられている。すなわち、テクノロジーソリューションの業績予想は、下振れリスクよりも上振れ余地のほうが大きいということだ。
通期業績予想を上期と下期で分けた場合、前期に比べて、季節性による業績変動が大きくなり下期の貢献を大きく見込んでいる点には注意が必要だ。会社側は、上期から研究開発投資の積極的な投下に努めると表明しており(販管費の拡大要因)、特に売上高の水準が低い第1四半期は営業赤字の計上が想定される。前期減収減益に陥ったブランド製品事業では、将来の成長基盤をより強固なものとすべく、製品ポートフォリオ構成の戦略的な組替えを進めていくとのことで、商戦期を含む今年度の下期からその収穫を図る構えだ。
同社は2020年3月期から、管理部門等の費用(事業セグメント別内訳における調整額)の配賦方針を変更し、各事業セグメントに一部を配分することとした。したがって、2020年3月期のセグメント営業利益の動向をより適確に把握するために、2019年3月期実績についても同じ配賦方針に基づいて修正を加えた参考値を開示している。2019年3月期決算の詳細説明で言及した正式な財務諸表の数値とは異なっているので注意が必要だ。
足元では米中貿易摩擦が再び激化しているが、同社の2020年3月期の期初予想には、米国による対中追加関税措置(2019年5月10日に発表された、2,000億ドル分についての10%から25%への引き上げ措置と、それ以降の関税措置)の影響は織り込まれていない。決算説明会の席上、同社はこの点についての質問に対して、サプライチェーンの変更等により変動する可能性があるとしつつも、現時点では通期利益を(税前で)10億円前後押し下げる(費用を押し上げる)影響があると回答している。米中貿易摩擦の短期収束という見方が大きく後退した現在、この点は極めて重要なポイントに浮上してきており、注意が必要だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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1. 2020年3月期の見通しの概要~季節性による第1四半期の赤字計上に要留意
2020年3月期についてワコム<6727>は、売上高93,000百万円(前期比3.9%増)、営業利益5,200百万円(同25.2%増)、経常利益5,170百万円(同24.6%増)、親会社株主に帰属する当期利益3,440百万円(同10.7%減)と増収増益を予想している。
親会社株主に帰属する当期利益が前期比減益となるのは、2019年3月期において繰延税金資産の回収可能性見直しで税金費用が減少したことの反動によるものだ。利益変動の実態は営業利益、経常利益の動向がより正確に表していると言えよう。
同社の業績は2018年3月期に前期の営業赤字からV字回復を実現して以来、増収増益基調にある。しかしその中身を事業セグメント別に見た場合、2019年3月期までの過去2期間はいずれも、ブランド製品事業が計画を下回り、それをテクノロジーソリューション事業がカバーするという構図が続いている。2020年3月期は、そうした構図から脱却し、ブランド製品事業でしっかりと収益の成長を実現することを同社は目指している。これはデジタルペンとインクの領域で世界のリーディングカンパニーを自負する同社としては当然のことと言える。
一方、テクノロジーソリューション事業については、本質的に収益変動が大きく、且つ同社自身の努力やコントロールが及ばない部分が大きい事業であるため、常にベースライン(“想定しうる最悪ケースでも確実に確保できる最低ライン”の意)を前提とした経営に努めており、業績予想においてもそのスタンスが取り入れられている。すなわち、テクノロジーソリューションの業績予想は、下振れリスクよりも上振れ余地のほうが大きいということだ。
通期業績予想を上期と下期で分けた場合、前期に比べて、季節性による業績変動が大きくなり下期の貢献を大きく見込んでいる点には注意が必要だ。会社側は、上期から研究開発投資の積極的な投下に努めると表明しており(販管費の拡大要因)、特に売上高の水準が低い第1四半期は営業赤字の計上が想定される。前期減収減益に陥ったブランド製品事業では、将来の成長基盤をより強固なものとすべく、製品ポートフォリオ構成の戦略的な組替えを進めていくとのことで、商戦期を含む今年度の下期からその収穫を図る構えだ。
同社は2020年3月期から、管理部門等の費用(事業セグメント別内訳における調整額)の配賦方針を変更し、各事業セグメントに一部を配分することとした。したがって、2020年3月期のセグメント営業利益の動向をより適確に把握するために、2019年3月期実績についても同じ配賦方針に基づいて修正を加えた参考値を開示している。2019年3月期決算の詳細説明で言及した正式な財務諸表の数値とは異なっているので注意が必要だ。
足元では米中貿易摩擦が再び激化しているが、同社の2020年3月期の期初予想には、米国による対中追加関税措置(2019年5月10日に発表された、2,000億ドル分についての10%から25%への引き上げ措置と、それ以降の関税措置)の影響は織り込まれていない。決算説明会の席上、同社はこの点についての質問に対して、サプライチェーンの変更等により変動する可能性があるとしつつも、現時点では通期利益を(税前で)10億円前後押し下げる(費用を押し上げる)影響があると回答している。米中貿易摩擦の短期収束という見方が大きく後退した現在、この点は極めて重要なポイントに浮上してきており、注意が必要だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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