オムロンのニュース
・今の年金の仕組みは賦課方式である。つまり、現役世代が高齢世代を支える。人口ピラミッドが下に広い三角形である時は、若い世代が多いので、高齢世代を支えることも容易であった。しかし、逆ピラミッドのような形になると、若い世代で多数となる高齢世代を支えることは難しくなる。今のままでは、高齢化とともに将来世代の負担が重くなる。
・そこで、年金の資金をプールしつつ、それを運用して、将来に備える。これをGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が担っている。運用資金は200兆円近い。運用期間は100年をイメージする超長期運用である。世界を投資対象としたユニバーサルアセットオーナーといえる。
・長期投資であるから、ESGを考慮した投資を行う。ESGに積極的に取り組んでいる国、企業、組織の方が、運用資産としてのパフォーマンスもよくなるはずである。実際、ESGを重視した総合型指数やテーマ型指数に投資して、そのデータを蓄積しつつ、効果を測定しようとしている。
・ESGに取り組む企業には、まだ相当な格差があり、開示のバラツキも大きい。評価機関の評価方法にも違いがある。その中で、世界的に開示基準の統一化がISSB(国際サステナビリティ基準審議会)を主体に進められている。
・GPIFによる2022年の調査で、「優れた統合報告書」として高い評価を受けた企業は、伊藤忠商事<8001>、日立製作所<6501>、オムロン<6645>、リコー<7752>、東京海上ホールディングス<8766>、味の素<2802>などであった。
・また、優れたTCFD開示では、日本企業でキリンホールディングス<2503>、日立製作所、リコー、伊藤忠商事が高く評価され、海外企業ではBHPグループ、マイクロソフト、シティグループ、JPモルガンチュースなどであった。
・ESG投資にどのように取り組むのか。Gについては、すでに論点は明確になっている。しかし、実効性を上げるにはまだハードルが高い。しかし、先進的な企業は実績を上げている。
・Eについては、これからイノベーションが必要であり、キープレイヤーを支える仕組み作りも急がれる。とりわけ、CN(カーボンニュートラル)に向けたトランジションファイナンスの推進は、大きなチャレンジであるとともに、ビジネスチャンスでもある。
・Sについては、人的資本の高度化を、AIを活用しつついかに進めるのか。人的資本コストとその付加価値貢献の測定についても工夫が求められよう。
・投資家サイドからみると、ESGインテグレーションの評価手法をどのように構築するのか。定量、定性の両面からレーティングをシステム化して、それがパフォーマンスに結び付くように実証していく必要がある。
・企業にとって、ESGへの対応は、①コストなのか、②リスクマネジメントなのか、③価値創造なのか、が常に問われる。ここを本気で議論し、CEOと取締役会が責任を負わないと、実効性が伴ってこない。対応しても投資家に評価されないのでは、不満ばかりが残ろう。
・ESGがサステナビリティに結び付くと評価されれば、投資家は中長期投資に自信が持てる。サステナビリティの追求が価値創造のドライバーになると実感できれば、好循環が生まれよう。
・では、アナリストとしては、少数株主になったつもりで、いかにコミュニケーションを図るのか。社外取締役が取締役会で議論を活発化させ、ESGを推進するにはどのようにすべきか。その論点を5つほどあげたい。
・第1は、CEOの本音をきいてみたい。1)自社にとっての重大事項とは認識していない。2)対応が必要ならば、現場できちんと条件をクリアすればよい。3)本気で対応しつつあり、手は打っているが、それが効果を上げるには時間がかかる。4)的確に対応すべく動いており、開示とも十分連動がとれている。これらのどの局面にいるのか。
・第2に、社内に十分な人材がいるのか。1)何がテーマかは、機関投資家と議論してみればすぐにわかるので、ESG投資に実績のある投資家と対話してみるのがよい。2)その上で、過大な要求は一旦おいて、自社にとって有益なESGを絞り込んでみる。
・その時のカギは、企業価値向上にどのように結び付くかを具体的に明らかにする。ビジネスモデルとは企業価値向上の仕組みであるから、それを構想する。つまり、長期の金儲けへの貢献を考える。3)その上で、社内、社外から人材を確保する。
・第3に、成果を上げる道筋を順番付けする。通常これを価値創造のストーリーというが、どうやるのかの戦略を、項目として挙げるだけでは全く不十分である。どういう順番で進めるのか。経路を因果関係として詰めていく。ここが見えてくれば、しめたものである。
・第4に、あるべき姿と現在描いた姿のギャップをもう一度みつめる。ギャップがある場合は、そこをどう埋めるか。通常は、何らかのイノベーションがないと飛び越えられない。つまり、今まで全く違った仕組み革新が必要である。技術的、組織的、人材的にジャンプする必要がある。これをCEOが中心になって推進することが求められる。
第5は、こうしたESGの推進、サステナビリティの実行が、カルチャーとしてわが社の強みに組み込まれ、自律的に動くようにすることである。理想は、中期計画に一生懸命織り込まなくても、当たり前のように定着してくれば最高である。
・最も大事なことは、ESGが当たり前になってきた時、それをわが社の強みとして語ることができるかという点にある。それがなければ、投資家はESGに注目してこない。つまり、ESGインテグレーションのバリエーションにおいて、ポジティブな評価として加点されない。この評価を高めるところまで、独自のESGを磨いてほしい。そういう企業に大いに投資したい。
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