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―関心高まる食料問題、安定供給を支える銘柄に注目―
新型コロナウイルスの感染拡大を機に「内食」志向が定着してきているなか、食品価格の上昇が家計を圧迫する恐れが出てきた。値上がりは食用油や小麦粉などの加工品から、牛肉や野菜といった生鮮食品まで品目は幅広く、原因は中国の景気回復に伴う需要増などさまざま。長期的にも世界的な穀物価格の高騰や異常気象から食料問題は更に深刻化する可能性があり、生産から流通、消費までを横断する「食のサプライチェーン」に関連する企業の存在感が一段と高まりそうだ。
●世界食料価格が10年ぶり高水準に
国連食糧農業機関(FAO)は3日、5月の世界食料価格指数(2014~16年=100)が前月比5.8ポイント高い127.1と12ヵ月連続で上昇したと発表。11年9月以来、約10年ぶりの高水準で、前年同月からは約4割上昇している。トウモロコシや小麦をはじめとした穀物や、加工食品に使う植物油の値上がりが目立ったほか、砂糖や食肉、乳製品の上昇も続いた。また、FAOが10日に公表した食料見通しは、21年の世界の食料輸入額が前年比12%増の1兆7200億ドルとなり、食料輸入コストが過去最高に達するとの見方を示した。
こうしたなか、国内では昭和産業 <2004> や日清オイリオグループ <2602> 、J-オイルミルズ <2613> の食用油メーカー3社が相次いで値上げを発表し、ニップン <2001> は小麦粉の価格を改定する方針。味の素 <2802> とキユーピー <2809> は原料に油を使うマヨネーズを値上げする。原材料の国際価格が天候不順による生産減や世界的な需要拡大を背景に高騰し、企業努力だけでコスト上昇分を吸収することが困難になっていることから、価格改定によって採算改善につなげたい考えだ。
食料の多くを輸入に頼っている日本にとって、生産力向上と持続性を両立させる食料システムの構築は大きな課題となっている。大規模自然災害や地球温暖化、生産者の減少など生産基盤の脆弱化、新型コロナを契機とした生産・消費の変化などに直面するなか、将来にわたって食料の安定供給を図るためには、災害や温暖化に強く、生産者の減少やポストコロナも見据えた取り組みを推進していく必要があり、農林水産省は5月にイノベーションでこれらを解決する「みどりの食料システム戦略」を策定している。
●求められる生産力の向上と持続性
「みどりの食料システム」では具体的な取り組み例として、品種開発力の強化や低リスク農薬への転換、スマート農業の活用、サプライチェーン全体を貫く基盤技術の確立と連携、食品ロスの削減などが掲げられており、関連銘柄のビジネス機会拡大が期待される。
生産性を向上させるためには品種改良や農業の効率化が欠かせず、 種苗を販売するカネコ種苗 <1376> やサカタのタネ <1377> 、各種農薬を提供している北興化学工業 <4992> やクミアイ化学工業 <4996> 、農機大手の井関農機 <6310> やクボタ <6326> に商機がありそうだ。
また、スマート農業関連では栽培計画などをクラウド上で管理する「農場物語」を提供するイーサポートリンク <2493> [JQ]、技能の可視化・継承などを支援する農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を手掛けるキーウェアソリューションズ <3799> [東証2]、農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」を展開するセラク <6199> 、GNSS(全球測位衛星システム)技術を駆使した精密農業機器を販売するトプコン <7732> などに注目したい。
●流通面では農業総研に活躍余地
このほか、流通面では全国の拠点で集荷した農産物を都市部のスーパーマーケット内に設置したインショップ(農家の直売所)で販売する独自のプラットフォームを提供する農業総合研究所 <3541> [東証M]の更なる活躍が見込まれる。21年8月期第2四半期累計(20年9月~21年2月)の単独営業損益は8700万円の赤字(前年同期は1300万円の赤字)となったが、これはシステム開発や産直卸事業推進のための人材投資で販管費が増加したことが主な要因。重要な経営指標である流通総額や導入店舗数は着実に増加しており、売上高は前年同期比47.4%増の21億9200万円となった。加えて、昨年10月に資本・業務提携したJR東日本 <9020> と新しい農産物流通プラットフォームの共同運用をスタートしていることも注目点となる。
eBASE <3835> は商品情報データベース「eBASE」を開発・販売している企業で、食品メーカー向け管理システムに強みを持つ。食の安全・安心情報管理システム「FOODS eBASE」は一貫した食品の情報共有によって、消費者へ正確な品質の表示が可能で、食の安全への取り組みをスムーズに行うことができる。22年3月期通期の連結業績予想は売上高が前期比4.6%増の45億円、営業利益が同3.2%増の12億5000万円が見込まれており、食品業界を筆頭にさまざまな領域でeBASE統合商品情報管理システムの展開に注力するほか、特許戦略に基づく新サービスの開発に取り組むという。
●アルファクス、シノプスにも注目
食品ロス削減の観点からは、小売業向け需要予測型自動発注システムなどを展開するシノプス <4428> [東証M]が注目される。21年12月期第1四半期(1-3月)の単独決算は、クラウドサービスの拡販を目的とした営業部門の社員数増加や東京都との共同プロジェクト関連費用の増加などから営業損益は4100万円の赤字(前年同期は6900万円の赤字)だったが、過剰発注による廃棄ロスを削減できる同社システムへのニーズは旺盛で売上高は前年同期比31.8%増の2億400万円で着地した。同社のクラウドサービス「sinops-CLOUD惣菜」は21年度も経済産業省が推進する「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」の対象となっており、利用企業の更なる拡大につながりそうだ。
アルファクス・フード・システム <3814> [JQG]は、外食向けASP(アプリケーションサービスプロバイダ)サービスを展開している。柱の自動発注システムは、あらかじめ提供するメニューに使用される食材の量(メニューレシピ)を登録し改変していくことで、POSシステムなどから集計されるメニューの出数から当日の在庫なども考慮し、自動的に食材・備品の正確な補充を実現するシステム。外食企業による省人化への投資意欲は高く、他のシステム機器の販売も堅調で、21年9月期第2四半期累計(20年10月~21年3月)の単独営業損益は3500万円の黒字(前年同期は2億2900万円の赤字)を確保している。
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