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日工のニュース
―迫る中間期末、低減配リスク銘柄に照準―
新型コロナウイルスの感染拡大が企業業績に及ぼすマイナス影響が鮮明になるなか、株主還元を抑制する動きが広がっている。3月期決算企業の4-6月期(第1四半期)決算では、7割近い企業の業績が悪化し、先行き懸念から非開示としていた21年3月期の配当予想を減配や無配にする企業が相次いだ。3月期決算企業のおよそ3割は今期配当をいまだ非開示としているが、今後配当を減額する企業は更に増えることが予想される。こうしたなか、今回は直近の業績動向が良好なうえ、過去の配当実績などから減配リスクが低いとみられる銘柄に着目し、今月末に控えた中間決算に向けて関心が高まる高配当利回り株を探った。
●20年3月期は10年ぶりに配当金が減少
日本取引所グループ(JPX)の統計データによると、東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックに上場する企業の20年3月期業績は、最終利益段階で20兆6068億円(前の期比34%減)と大幅減益に陥り、これを受けて配当金総額は9兆8496億円(同0.5%減)と10年ぶりにマイナスに転じた。上場企業はこれまでコーポレートガバナンス改革などを経て株主への利益還元を強化してきたが、コロナ禍の直撃で株主還元の見直しを余儀なくされている。21年3月期は業績予想を開示している企業ベースで最終利益が前期比およそ3割減少する見通しであり、一段の配当減少が必至の状況だ。
以下では、こうした逆風下においても足もとの業績が好調で安定した収益基盤を持つ企業に注目し、(1)4-6月期(第1四半期)業績が最終利益ベースで増益を達成、(2)直近10年間に減配をしたことがない、(3)21年3月期の配当利回りが3%を超えている、といった条件を満たした6銘柄を配当利回りの大きい順に紹介していく。なお、3月期決算銘柄の中間配当を獲得するには、権利付き最終日の9月28日に株式を保有していることが必須条件となる。
【日工 <6306> 】 配当利回り4.68%
土木用プラントメーカーの日工は、前期に実施した創立100周年記念配当を除くと2000年3月期から20年以上も減配をしたことがない。21年3月期は年間配当30円(普通配当は前期比実質10円増)を計画しており、実施中の上限4億円とする自社株買いと合わせた総還元性向は8割を超える。業績面に目を移すと、直近3ヵ月決算である4-6月期(第1四半期)の最終利益は前年同期比2.8倍の7億4600万円に膨らんだ。海外事業は新型コロナウイルスの影響を受けたものの、国内で製品やメンテナンスの原価率が改善したことに加え、前田道路 <1883> から受領した特別配当金を計上したことなども利益を押し上げた。第1四半期は受注高、受注残高ともに前年同期を上回る好調ぶりで、16年3月期に記録した過去最高益の更新も視野に捉えている。
【アサヒホールディングス <5857> 】 配当利回り4.55%
アサヒホールディングスは4-6月期(第1四半期)決算発表と同時に早くも通期の業績見通しを上方修正している。最終利益は従来予想の106億円(前期比7.7%増)から140億円(同42.2%増)へ大幅増額修正し、2期連続の最高益予想を更に上乗せした。国内・アジアの貴金属リサイクル分野における貴金属回収量の確保や貴金属価格の上昇が追い風となるほか、北米の貴金属精錬分野で製品加工・販売や金融取引が増加することも収益を押し上げる。好調な業績を踏まえ、年間配当も従来計画の140円から160円へ増額しており、株主還元にも余念がない。配当利回りは4%を超える一方、予想PERは9.9倍と割安感が強く、上値期待は大きい。
【伯東 <7433> 】 配当利回り4.52%
エレクトロニクス商社である伯東の4-6月期(第1四半期)業績は、売上高357億1900万円(前年同期比0.2%増)、営業利益12億3600万円(同64.8%増)と大幅増益を達成した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークや在宅学習の普及でパソコン・タブレット向け電子部品が伸長したほか、5G(第5世代移動通信システム)関連の光通信機器などの販売が増勢だった。第1四半期決算と併せて、未定としていた21年3月期通期の業績予想を発表。営業利益は27億円(前期比11.8%増)と2ケタ増益を見込み、配当は前期と同じ50円を維持する方針とした。第1四半期営業利益の通期計画に対する進捗率は45%と高水準で、業績上振れする可能性も含んでいる。
【沖縄セルラー電話 <9436> [JQ]】 配当利回り3.85%
沖縄セルラー電話の21年3月期配当は154円(前期は145円)と実に20年連続の増配を計画している。同社は高水準な配当利回りに加え、親会社KDDI <9433> と同じ内容の株主優待(グルメ品のカタログギフト、権利月は3月)でも注目度が高い。更に今期は20億円を上限とする自社株買いも実施しており、株主還元面での魅力を一段と高めている。足もとの4-6月期業績は、事業法改正やコロナの影響で携帯電話の出荷台数が減少したものの、顧客基盤が拡大している電気通信事業の収益増加でカバーし、増収増益を確保した。配当は前期まで8年連続で本決算発表と同時に増額修正した経緯があり、堅調な業績をキープすれば今年も上乗せが期待できそうだ。
【栗本鐵工所 <5602> 】 配当利回り3.25%
栗本鐵工所は水道やガス用の鋳鉄管大手メーカー。主力のパイプシステム事業に、強化プラスチック配管などの産業建設資材事業、産業機械の機械システム事業を加えた3本柱で事業展開する。4-6月期業績は売上高259億6300万円(前年同期比26%増)、最終損益5億8100万円の黒字(前年同期は2億8000万円の赤字)と好決算をたたき出した。鉄管の出荷増加や産業機械の大型案件などが寄与したほか、原価改善効果も黒字浮上につながった。21年3月期通期の最終利益は前期比1%増の28億円の見通しだが、同社は期初予想を保守的に算出する傾向があり、上振れが期待される。また、指標面では予想PER8倍、PBR0.4倍弱と割安感が際立っており、株価の上昇余力は十分にあるとみられる。
【協和エクシオ <1951> 】 配当利回り3.09%
協和エクシオはNTT <9432> 向けに強みを持つ電気通信工事大手。21年3月期は主力のNTT関連は設備投資減少で後退するものの、データセンター向けの大型工事やシステムソリューションなどの豊富な繰り越し案件をこなし、営業利益は前期比2.9%増の320億円と2期ぶりに過去最高を更新する見通しだ。良好な業績に伴い、年間配当は9期連続増配となる82円(前期は80円)を計画する。同社は増配による利益還元に加え、自社株買いにも積極的で前期まで5年間で160億円を取得するなど、株主還元姿勢への市場の評価は高い。また、来期からは5G基地局整備工事が本格化するとみられ、5G関連の好実態有力株としても脚光を浴びそうだ。
※配当利回りは9月7日終値ベースで算出
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