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―上期決算発表シーズン迫る、上値期待の増額候補をピックアップー
今月下旬から12月期決算企業の上期(1-6月)決算発表シーズンに入る。決算発表の本格化とともにマーケットの関心が向かうのが業績予想の修正だ。上場企業は期初に設定した業績見通しをより現状の経営実態を映した数字へ期中に修正を行う。業績上方修正が期待される銘柄は、決算発表の接近につれて先回り買いの動きが出る傾向があるため、決算シーズン前に高進捗銘柄を改めて見直しておきたいところだ。今回は第1四半期の業績が好スタートを切り、通期計画に対する進捗率が高水準で上振れ余地が大きいとみられる中小型株を探った。
●第1四半期は全体2ケタ増益も明暗分かれる
23年12月期の第1四半期(1-3月)決算を振り返ると、前年同期と比較可能な505社の経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前年同期と比べ約10%増加した。大手製造業ではルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]、ブリヂストン <5108> [東証P]など好採算品の販売増加や値上げ効果で利益を大きく伸ばすものが多かった。また、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、「脱マスク」の動きが追い風となったコーセー <4922> [東証P]や資生堂 <4911> [東証P]といった化粧品メーカーの好調も目立つ。一方、化学セクターを中心に原材料などのコスト高が逆風となり、社数ベースでは半数以上が減益または赤字だった。
全体としては世界的な景気減速懸念など先行きへの警戒から、第1四半期決算が良好でも業績予想を上方修正する企業は少なかった。こうした傾向は上期決算でも続く可能性があるが、逆風が吹きつけるなかで業績上方修正に踏み切る企業は大きな注目を集めそうだ。以下では、12月期決算企業を対象に、第1四半期(1-3月)の業績が好調で、かつ経常利益または税引き前利益の通期計画に対する進捗率が高水準な銘柄を、上方修正先回り候補として7銘柄リストアップした。
●サカタINXは上期大幅増額、通期も上振れ濃厚
印刷インキ大手であるサカタインクス <4633> [東証P]の23年12月期第1四半期の経常利益は30億9400万円(前年同期比37.4%増)と7四半期ぶりに増益転換を果たした。アジアや米州を中心にインキの値上げが浸透したうえ、デジタル印刷材料など利益率の高い機能性材料が増勢だった。また、これまで重荷となっていた原材料価格の高騰が海外でピークアウトしたなかでインキコストの削減を進めたことも利益改善につながった。好調な業績を踏まえ、上期の経常利益予想を45億円(従来は26億円)へ大幅上方修正している。通期予想(68億円)は据え置いたが増額する可能性は高そうだ。同社は次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池の開発に関して、京都大学が立ち上げた「フィルム太陽電池研究コンソーシアム」に参画しており、関連銘柄としても注目を集める。
●やまびこは海外好調で業績、配当の増額に期待
やまびこ <6250> [東証P]はチェンソーや刈払機など小型屋外作業機械の国内トップメーカーで、世界でも第3位のシェアを誇る。直近3ヵ月の1-3月期業績は経常利益59億1300万円(前年同期比66.9%増)と四半期ベースの過去最高益を達成した。欧米で小型屋外作業機械が堅調に推移したほか、北米では建設やエンターテインメント需要の増加を背景に発電機の好調な販売が続いた。また、円安効果や前期に実施した値上げの浸透も収益を押し上げた。第1四半期実績の通期予想に対する進捗率は46.2%と高水準で業績、配当ともに上振れ余地がありそうだ。株価は約5年2ヵ月ぶりの高値圏に浮上しているが、指標面では予想PER8倍前後、PBR0.8倍近辺と割安感が強く一段の上値に期待したい。
●UFHDは円安追い風に上方修正の公算大
ウルトラファブリックス・ホールディングス <4235> [東証S]は、デザイン性と優れた機能性を併せ持つポリウレタンレザーを幅広い業界に展開している。売上高の海外比率は9割を超え、北米向けが大半を占める。23年12月期の為替想定レートは1ドル=125円に設定するが、為替変動による営業利益へのインパクトは1円円安につき8000万円としており、足もとの急速な円安は強力な追い風となりそうだ。第1四半期業績は自動車メーカーからシート用素材の引き合いが強かったほか、航空機用では民間航空機、ビジネスジェット向けがともに増勢で、税引き前利益は10億3500万円と前年同期の3.7倍に膨らんだ。直近の受注状況などから通期予想は据え置いたが、想定以上の円安進行や進捗率を踏まえると業績上振れは濃厚とみられる。
●ダイトロンは2年連続で8月に上方修正
ダイトロン <7609> [東証P]は電子部品・機器や半導体製造装置などを取り扱うエレクトロニクス商社。技術力が高く、電子機器や製造装置の自社ブランドを有するなどメーカーとしての側面も持つ。第1四半期は半導体製造設備向けコネクターやハーネス、カメラ関連・画像処理装置などの販売が好調に推移したことに加え、電子部品不足の一部解消に伴う供給制約の緩和もプラスに働き、経常利益は21億4100万円(前年同期比23.4%増)と過去最高益を更新した。あわせて、上期の同利益予想を31億5000万円(従来は25億5000万円)へ上方修正したが、下期計画は据え置いており、業績上振れに含みを持たせている。ここ2年連続で上期決算発表と同時に通期業績見通しと配当予想を増額した経緯もあり、上方修正期待は強い。
●オーナンバは業績絶好調も超割安で上値余地
オーナンバ <5816> [東証S]は産業・民生機器用ワイヤーハーネスの国内最大手。第1四半期業績は、原材料不足の緩和でサプライチェーンが改善され受注残の解消が進み、自動車や産業機器用ワイヤーハーネスを中心に大きく伸びたうえ、原価低減や販管費の抑制、値上げ効果も加わり、経常利益は7億4900万円(前年同期比78.1%増)と4四半期連続の大幅増益を遂げた。通期計画に対する進捗率は30%を超える。年間配当は前期と同額の24円を予定するが、配当性向は17%にとどまっており還元余力がありそうだ。また、予想PER7倍前後、PBR0.5倍台と極めて割安で株価の見直し余地は大きい。前期は上期決算発表前に業績と配当予想を増額修正したことが評価され、株価が急騰しただけに今期も期待がかかる。
●SBSHDの業績予想は保守的、指標面に割安感
SBSホールディングス <2384> [東証P]は東芝 <6502> [東証P]やリコー <7752> [東証P]の物流会社を買収するなど、M&Aを積極的に活用して事業成長を遂げている。企業の物流機能を一括して受託する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)などを展開する物流事業のほかに、物流施設を開発・販売する不動産事業も手掛ける。第1四半期業績は、国際物流が運賃下落や物量減少で落ち込む一方、不動産流動化による売却益が膨らみ、経常利益105億2000万円(前年同期比2.2倍)と大きな伸びを示した。通期計画(223億円)に対する進捗率は5割近くに達するうえ、同社の期初予想は保守的な傾向が強く業績上振れが期待される。予想PER10倍台と同業他社や過去の水準と比べて割安で、株価の水準訂正余地は大きいとみられる。
●セグエGはDXニーズ捉え四半期業績は過去最高
セグエグループ <3968> [東証P]はセキュリティー・ITインフラ製品の輸入販売とソリューションサービスを2本柱とするほか、自社開発ソフトの販売や技術者派遣なども手掛ける。足もとの業績は企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)など旺盛なIT投資意欲を追い風に好調に推移しており、第1四半期業績は売上高45億6100万円(前年同期比36.7%増)、経常利益4億1100万円(同49.7%増)といずれも四半期ベースの過去最高を記録した。DXインフラ関連のプロダクト販売が大幅に増加したほか、大型案件の獲得によってプロフェッショナル(設計・構築)サービスも伸びた。経常利益は第1四半期だけで通期計画(10億円)に対して4割を超える進捗率となっており、上振れの確度は高そうだ。
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