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日本高周波鋼業のニュース
―バリュー株シフトの流れに乗れ、低PBR銘柄の逆襲はこの業界から始まる―
今、株式市場でバリュー株投資の流れが意識されるなか、がぜん輝きを放ち始めた2つのセクターがある。それは「鉄鋼」と「海運」だ。これまではグロース株の陰に隠れ蚊帳の外にあった銘柄群に、大きな株価変貌の季節が訪れようとしている。
●リスクオン復活で再び見えてきた3万円台
12日の東京株式市場はリスク選好の流れが強まり、日経平均株価は大幅高で4日続伸。朝方は気迷い気味の不安定な値動きで、瞬間的にマイナス圏に沈む場面すらあったが、その後は次第高の展開で後場に入ると上げ足を加速させた。日経平均の上げ幅は500円を超え、一気に2万9700円台に歩を進める大立ち回りとなった。
この日は年に4回あるメジャーSQの算出日にあたっていたが、これを波乱なく通過したことがまず伏線となっている。市場関係者によると「SQ通過で機関投資家にとっても売買面での制約が外れ動きやすくなった。また、前日のECB理事会は資産購入スピードを加速させるという方針を声明に盛り込み、その後のラガルド総裁の記者会見も予想以上にハト派的な印象を与えたことが株式市場にポジティブに働いた」(中堅証券ストラテジスト)という。そうしたなか、米国でも10年債利回りが1.5%台で上昇一服となっていることでグロース株への買い戻しを誘発、ナスダック指数の急反発を受けて東京市場でも直近売り込まれていたハイテク株の買い戻しが全体相場を押し上げた。
●バリュー株シフトの流れは緒に就いた段階
もっとも、ここ最近のトレンドはグロース株からバリュー株への資金シフトであり、「当面は米長期金利の動向などに物色対象も影響されやすいが、(機関投資家の)景気敏感セクターの持ち高を高める動きは緒に就いた段階で、今後も変化はないだろう」(ネット証券マーケットアナリスト)という見方が強い。米長期金利は上げ下げを繰り返しながら、緩やかではあっても中長期的に上昇傾向をたどることが想定される。これは、景気回復期待とセットであり、当然ながら株式市場に流れ込むマネーフローにも反映される。
新型コロナウイルスは依然として要警戒ながら、米国をはじめとするワクチンの普及加速で経済活動の正常化が進み、直近ではバイデン政権が掲げていた1兆9000億ドル規模の超ド級といってよい追加経済対策が成立、一人当たり1400ドルの現金給付も実現する運びとなった。新型コロナ感染拡大以前の状態をイメージした景気回復へのシナリオは、日増しに現実味を帯びている。
●回り始めた世界経済復元の歯車
新型コロナが大流行する前は、米中摩擦が先鋭化し世界経済の成長の妨げになることが懸念されていたが、皮肉にも足もとでは米中間の貿易が活発化する兆しがあるという。「今回の経済対策の目玉である現金給付により主に低・中所得者層の消費を刺激することになるが、直接・間接的に中国製品の購入に回る形になる」(前出のマーケットアナリスト)とし、これがグローバル物流を活性化させる源流となる可能性が高まっている。全人代が終幕した中国もバラマキ型の景気刺激策はしない方針は示したものの、21年のGDP成長率6%以上を明示し、高速通信規格5Gなどへの投資加速で幅広く需要が喚起される公算が大きくなった。世界経済復元に向けた歯車の回転はゆっくりではあるが、もはや止まることはない。
アフターコロナを語るにはまだ気が早い段階だが、少なくとも株式市場ではそれを見据えてコロナ禍で売り込まれた業態を買い戻す資金の流れが活発化している。グローバル景気敏感セクターとして鉄鋼や海運などの市況関連はその代表格だ。
●鉄鋼は今期の業績悪は既に織り込み
鉄鋼セクターは上期こそ新型コロナの影響が直撃し、高炉の休止などを余儀なくされたが足もとでは収益環境の風向きが変わっている。米国や中国などでの新車販売回復を受けて、自動車向けの需要が予想以上に復元しているためだ。
日本製鉄 <5401> は今月5日に2025年度を最終年度とする経営計画を発表、高炉休止やドラスチックな人員合理化などを開示したが、これがトップライン回復過程で利益の伸びを加速させるとの思惑を呼び、株価が一段と上げ足を強める背景となった。また、同社は東京製綱 <5981> への敵対的TOBでもマーケットの注目を集めたが、これは東京製綱の株価だけではなく、鉄鋼業界全体においても再編思惑や経営改善に向けた取り組みを促す起爆剤としてインパクトを与える可能性がある。もとより今期の鉄鋼業界の業績悪は織り込み済み。問題は来期の見通しであり、高炉各社の赤字脱却と電炉各社の収益急回復を織り込む形で、株価も上昇トレンドを本格化させそうだ。
●海運は超強気の目標株価修正が話題に
一方、海運株もグローバル物流の担い手として株価面で見直しの機が訪れている。今週後半に日本郵船 <9101> 、商船三井 <9104> 、川崎汽船 <9107> 、の大手3社をはじめ海運セクター全体が急動意、業種別値上がり率7%を超える断トツの人気となった。これはモルガン・スタンレーMUFG証券の強気のリポートが発端となった。大手3社はコンテナ船事業を統合しているが、世界景気回復の道筋が見えるなか、同リポートではこの統合コンテナ会社「ONE」の競争力の高さにスポットを当てている。郵船の目標株価を3000円から6000円へと一気に2倍に引き上げたことなどがマーケット関係者の間でも話題となった。
巣ごもり消費を反映して家具や家電などの輸送量が急拡大している。これは前述した米国の現金給付政策による消費刺激で更に勢いを強めることになる。中国発米国向け荷動きの活発化は、海運業界にとっても強力なフォローウインドとなることは必至だ。また、最近の原油価格上昇がタンカー市況にプラスの影響をもたらす可能性や、中国経済回復を背景としたばら積み船市況の上昇も要注目となる。ばら積み船の運賃市況を表すバルチック海運指数は直近1980まで水準を切り上げ、約半年ぶりとなる2000大台乗せが目前に迫っている。
鉄鋼や海運セクターはバリュー株シフトの流れに合致するセクターであることもポイントだ。いわゆる低PBR株の宝庫であり、会社解散価値である一株純資産並み(PBR1倍)に買われるだけで株価が倍化するような銘柄も少なくない。今回は、この景気敏感セクターの双璧である鉄鋼と海運に照準を合わせ、それぞれのセクターから株価上昇余地の大きい有望銘柄を穴株も交えてリストアップした。
【鉄鋼セクターの有望4銘柄】
◎共英製鋼 <5440>
関西を地盤とする電炉 大手で鉄筋コンクリート用棒鋼のトップメーカー。海外展開にも力を入れ、ベトナムと北米で鉄鋼事業を展開している。カナダでは昨年3月にアルタ・スチールを買収するなど業容拡大路線に磨きをかけている。21年3月期の年間配当は前期実績比25円減配となる50円見込みだが、それでも3%前後の配当利回りを確保し、PBR0.4倍台は見直し余地が大きい。22年3月期は営業2ケタ増益で切り返す公算が大きく、株価は昨年1月下旬のコロナショック急落前の水準である2000円大台復帰を目指す展開が想定される。信用取組は買い残が枯れた状態にあり、直近信用倍率は0.3倍台と株式需給関係も良好で上値が軽い。
◎東京製鐵 <5423>
独立系の電炉メーカーで業界首位に位置する。H形鋼や鋼板の需要は建設業界向けが主力であり、今後も公共投資による底堅い需要が維持される一方、新型コロナウイルスの影響一巡で民間需要の回復が追い風となりそうだ。スクラップ価格の上昇は逆風ながら、鋼材販売価格の引き上げで採算は改善の方向にある。同社は電炉による高級鋼の生産技術開発に取り組んでいるほか、工場の操業にあたって一部を太陽光発電で余剰が生じやすい日中生産に切り替えるなど再生可能エネルギー活用にも積極的だ。信用取組は売り長で直近信用倍率は0.5倍台。株価は昨年1月下旬につけた昨年来高値851円奪回から4ケタ大台復帰を目指す動きが想定される。
◎栗本鐵工所 <5602>
鋳鉄管 の大手で鉄鋼セクターに属するものの、産業機械も手掛け、ナノテク技術を深耕し燃料電池分野にも踏み込む。鋳鉄管は地方自治体からの受注が好調、産業機械も大型案件が寄与し、21年3月期第3四半期の営業利益は前年同期比3割増の39億8700万円と大幅な伸びを達成。通期計画の40億円に対し進捗率はほぼ100%で業績上振れが濃厚となっている。ナノテク技術から派生した「ソフトMRF」は、磁気粘性流体でナノサイズの鉄微粒子がキメ細かな感触を様々なデバイスに与え、VR分野のキーテクノロジーとして注目。橋梁補修では繊維強化樹脂(FRP)部材を使ったクリモト検査路を拡販している。PER、PBRともに割安で株価2000円台指向。
◎日本高周波鋼業 <5476>
ベアリング用鋼など特殊鋼メーカーで神戸製鋼所 <5406> が過半の株式を保有している。21年3月期は25億円の営業赤字見通しにあるが、売上高、損益ともに今期が底になる公算が大きい。緊急収益改善委員会を設置して固定費削減、設備投資抑制、帰休実施などの合理化に取り組んでおり、トップライン回復局面での損益改善スピードに期待がかかる。足もとでは新型コロナウイルスの影響が一巡し設備投資需要の回復が見込まれるなか、既に産業機械向け鋳鉄が増勢基調にあるなど、業績底入れの思惑を後押ししている。株価指標面ではPBRがわずかに0.2倍台で株価の修正余地は大きい。17年には1200円台の高値実績がある。
【海運セクターの有望3銘柄】
◎飯野海運 <9119>
タンカーやケミカル船を主力とする海運会社で現在の原油市況高は収益機会を高める背景となる。ばら積み船も手掛け、ここ最近のバルチック海運指数の急上昇もフォローの風に。また、千代田区内幸町に構える本社・飯野ビルのほか、汐留芝離宮やNS虎ノ門などビル賃貸収入が強みで、含み資産の大きさも評価材料となる。21年3月期は複数回にわたる上方修正を経て営業69%増益予想。年間配当17円を計画し、3.5%前後の高配当利回りは魅力となる。一方でPER8倍台、PBR0.6倍台は割安感が際立つ。昨年3月以降は一貫した戻り相場を形成し昨年来高値圏を走るが、上値追い余力十分で18年9月の戻り高値600円どころを目指す。
◎共栄タンカー <9130>
郵船系の外航海運会社で長期契約主体のタンカーを主力とし、同社が擁する大型原油タンカー(VLCC)の長期契約が収益の主柱を担うほか、ばら積み船も展開。足もとの業績は低調で21年3月期営業利益は7億円(前期比55%減)と落ち込む見通しながら、原油市況高を背景に収益環境の風向きは既に変わっており、22年3月期はV字回復が期待できる。環境マネジメント国際規格の認証を取得し海洋環境保全活動にも積極的な姿勢をみせており、ESG投資の流れにも乗る。直近信用倍率は0.8倍と売り長で日証金の動向と合わせて株式需給面から踏み上げ余地がある。時価4ケタトビ台は売り物がこなれていることも人気化素地を後押しする。
◎東海運 <9380>
太平洋セメント系の資材輸送会社で、港湾運送、陸上運送、倉庫、海運、国際輸送など総合物流の老舗企業として高い実績を誇る。国際貨物ではロシア向けで優位性を持つ。作業の効率化及びコスト低減を実現するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)などの物流サービスも提供し、地球に優しい環境ソリューションにも力を入れている。またSNSを立ち上げeコマース分野にも参入し業容拡大を図っている点もポイント。21年3月期営業利益は前期比5割増となる6億6000万円を計画するが、第3四半期(20年4-12月)時点で対通期進捗率は93%に達した。PERは0.6倍台で、既に動兆著しいものの、時価300円台半ばは値ごろ感十分。
株探ニュース
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