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日本山村硝子のニュース
―東証PBR改革追い風に相次ぐ株主提案、大規模な増配・自社株買いを後押し―
東証が上場企業に資本効率の向上に向けたアクションを働きかけて以降、株主還元の強化に向けた取り組みが広がっている。にもかかわらず、日本にはなおPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている企業が海外と比べて数多く存在し、アクティビスト(物言う株主)がリターンを獲得するための絶好の機会を提供しているのが東京市場の現実の姿である。実際にアクティビストが大株主となった企業から、大規模な増配や自社株買いの発表が相次いでおり、アクティビストのターゲットとなった後、全体相場から出遅れて割安感を意識させる銘柄については大化けへの期待感が一段と膨らんだ状況となっている。
●株主総会シーズン前で注目度は一段と上昇
今年に入り史上最高値を更新した日経平均株価は3月を頭に上げ一服となり、足もとでは3万9000円近辺で一進一退の動きとなっている。決算発表シーズンを通過し、手掛かり材料が乏しくなるなか、6月は日米欧の中銀による金融政策決定会合が注目イベントとなる。更に、国内では6月後半に入ると株主総会シーズンが到来する。上場企業の経営陣に対する株主の監視の目は年々厳しさを増しており、資本効率の向上に向けた施策などの実施を求め、投資家が株主提案に踏み切る事例が相次いでいる。
例えば、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランド <4661> [東証P]の筆頭株主である京成電鉄 <9009> [東証P]に対し、英投資ファンドのパリサー・キャピタルはOLC株の一部を売却するよう、株主提案に踏み切った。京成は中長期的な企業価値向上のために必要となる大型投資の原資となりうる貴重な資産だとして、株主提案に反対すると今月20日に公表している。
株主総会シーズンを前に、アクティビストの取得が明らかとなり、株価が動意づくケースも増えている。帝人 <3401> [東証P]が今月23日に公表した定時株主総会資料では、大株主の項目に香港のオアシス・マネジメント系ファンドの名が記載され、株価が急騰した。PBRが1倍を割れ、株価が解散価値を下回る企業はアクティビストの標的になりやすく、中小型株を中心にPBR1倍割れ銘柄が山積する建設セクターにおいては、熊谷組 <1861> [東証P]ではオアシスが、三井住友建設 <1821> [東証P]では旧村上ファンド系の南青山不動産(東京都渋谷区)が大株主となっている。
●アクティビスト保有の新家工や有沢製は大幅増配へ
3月期の決算発表シーズンで大幅な増配や自社株買いを発表した企業のなかには、アクティビストを大株主とする企業がいくつか存在する。鋼管の製造販売を手掛ける新家工業 <7305> [東証S]は今月14日、前期の配当を従来の予想から15円増額したうえで、今期の年間配当予想を前期比145円増配の300円と驚愕レベルの大幅増配に踏み切った。当然ながら株価は急騰。それでも足もとの配当利回りは6.07%と高水準にある。
新家工の株式については、投資会社のブラッククローバーが11%超保有している。ほかにも、ストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)による保有割合が12%超に上るエレクトロニクス材料の有沢製作所 <5208> [東証P]も、今期の年間配当予想は前期比24円増配の84円にすると今月9日に発表。配当利回りは現在、5.58%となっている。
アクティビストによる株式取得や買い増しが判明した後、投資家との対話の成果を企業側が株主還元として提示した際には、株価の上昇指向が一段と強まることが期待できる。こうした観点のもと、アクティビストが保有しながらも株価の騰勢に一服感がある銘柄や、全体相場に対して出遅れ感が意識される銘柄をいくつかピックアップしていく。
●大化け機運高まる注目6銘柄
◎関東電化工業 <4047> [東証P]
半導体などの製造に必要な特殊ガスやリチウムイオン二次電池向け材料を手掛ける同社は、旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントによる株式の保有割合が13.06%となっている。25年3月期は最終黒字に転換する見通しだ。前期に電池材料部門で減損損失を計上したが、今期は半導体メーカーの稼働率の上昇により特殊ガス事業の回復を見込む。年間配当予想は前期比2円増配の計画を示したものの、本決算発表後に株価に下押し圧力が掛かった。PBRは0.80倍。株主価値の毀損につながるとされる買収防衛策を廃止する方針を発表するなど変化もみせており、業況の改善とともに株主還元の強化策を示した場合は、市場の評価を一段と高めそうだ。
◎大阪製鐵 <5449> [東証S]
日本製鉄 <5401> [東証P]を筆頭株主とする電炉メーカーで、25年3月期の最終利益は前期比41.0%増の44億円、年間配当は同9円50銭増の34円を計画。同社株の保有割合はエフィッシモが6.39%、ストラテジックキャピタルが6.16%となっている。今月21日に上場来高値をつけた後、上げ商状は一服し、PBRは0.60倍と低水準。競合の電炉メーカーの配当利回りをみると、日本製鉄にならって共英製鋼 <5440> [東証P]や合同製鐵 <5410> [東証P]に加え、過去に経営再建を余儀なくされた中山製鋼所 <5408> [東証P]でさえも4%を上回る水準なのに対し、大阪製鉄は1.46%と大きく見劣りする。同社に対しストラテジックキャピタルは4月、日本製鉄への預け金または貸付金の提供禁止と、特別配当881円の実施などを求める株主提案を実施した。大阪製鉄は提案に対し反対すると表明しているが、アクティビストとの関わりのなかで同社がどう変化していくのか注目される。
◎トプコン <7732> [東証P]
眼科医療機器や測量システムを展開。米バリューアクト・キャピタル・マネジメントと共同保有者による持ち株比率は13.69%に上る。PBRは1倍を上回る水準にあるものの、株価は今月に2000円台に乗せた後に水準を切り下げている。25年3月期の最終利益は前期比92.3%増の95億円を予想するなど業況は回復基調。ただし今期の年間配当予想は42円で据え置きとなり、配当利回りは2.4%台と物足りなさも意識される。バリューアクトはオリンパス <7733> [東証P]の経営改革を促し、企業価値を高めた実績を持つ。長期的なスパンでみて全体相場に対し出遅れ感が意識されるトプコン株の挽回シナリオを期待したい。
◎石原産業 <4028> [東証P]
酸化チタン最大手で農薬などを製品群に持つ同社を巡っては、投資ファンドのMI2(東京都渋谷区)と、その共同保有者である村上貴輝氏が5.06%を保有。保有目的の項目には、「経営陣への助言と重要提案行為等」とある。村上貴輝氏について、市場では村上ファンドを率いた著名投資家の村上世彰氏の子息であるとの見方が広がっている。石原産の25年3月期最終利益予想は、研究開発費の増加の影響などを織り込み、前期比24.9%減の60億円。今月10日の業績予想開示後に株価は下落したが、配当利回りは4.36%と高水準にある。PBRは0.58倍。資本効率の向上に向けた新たな一手が出るか注目される。
◎天馬 <7958> [東証P]
家庭向け収納ケースのほか、工業用プラスチック成形加工品の生産を手掛ける。今月24日に発表した中期経営計画で、27年3月期に売上高を1070億円(25年3月期見通しは1000億円)、営業利益を47億円(同22億円)に伸ばす目標を掲げた。同社株は米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが15.02%を保有する。更に天馬に対しては、香港の投資会社系列とされるリムジャパンイベントマスターファンドが配当の増額などを求める株主提案に踏み切っている。PBRが0.63倍と1倍割れの現状に対して、天馬自体もROE(自己資本利益率)の向上策を中期計画で打ち出しており、割安な株価水準の是正に向けた道が開きつつある。
◎住友重機械工業 <6302> [東証P]
英投資会社シルチェスター・インターナショナル・インベスターズが昨年2月に提出した変更報告書では保有割合は13.48%。その後、変更報告書の公表はなく、直近ではシルチェスターに関して目立った動きがみられないが、住友重自体は変化の過程にあると言えるだろう。今年2月に公表した26年12月期までの中期経営計画では、半導体製造装置など成長領域への経営資源の集中による事業拡大策とともに、配当と自社株買いをあわせて中計期間中に800億円の株主還元を行う方針を示した。半導体関連において同社のイオン注入装置の成長期待は根強く、2017年の高値5220円を奪還すれば上値余地が広がりそうだ。
このほか、直近では英投資ファンドのニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドが文化シヤッター <5930> [東証P]や積水樹脂 <4212> [東証P]の株式の買い増しに動いたことが明らかとなり、市場参加者の注目を集めつつある。また、日本山村硝子 <5210> [東証S]はMI2の共同保有者である村上貴輝氏による買い増しが判明している。日山村硝のPBRは0.34倍と1倍を大きく下回っている。PBRが1倍を下回る銘柄のうち、アクティビストの保有が明らかになっている銘柄としては、京都フィナンシャルグループ <5844> [東証P]や大豊建設 <1822> [東証S]、東北新社 <2329> [東証S]、ニッタ <5186> [東証P]、帝国繊維 <3302> [東証P]、帝国通信工業 <6763> [東証P]、ゴールドクレスト <8871> [東証S]などがある。
株探ニュース
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