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―超高齢社会が抱える社会問題、給付費の対GDP比が倍増するとの試算も―
内閣府は2日、2060年度までの社会保障費と財政状況に関する試算をまとめ経済財政諮問会議で報告した。それによると、医療と介護をあわせた給付費の国内総生産(GDP)に対する割合は40年度以降に上昇ペースが速まり、60年度には最大で16.1%と19年度の8.2%からほぼ倍増すると予測されている。社会保障制度を維持するためには経済成長率の引き上げや現役世代と高齢者の給付・負担構造の見直しといった社会保障改革とともに、テクノロジーを活用したサービスの効率化が不可欠であり、「医療・介護DX」関連銘柄に注目したい。
●医療・介護費は40年度以降急増へ
資料では65歳以上の人口は40年度ごろにピークアウトするとしているものの、高齢化率は若年人口が減少することから上昇するとされている。また、医療費や介護費への影響が大きい75歳以上や85歳以上の人口は長期にわたって段階的に増加する見込みで、 医療・ 介護の給付費は40年度ごろから増加の勢いが増す見通しだ。
試算は25~60年度の平均実質成長率について、「0.2%程度の現状投影シナリオ」「1.2%程度の長期安定シナリオ」「1.7%程度の成長実現シナリオ」と3つのケースに分かれている。医療費の拡大ペースが年率1%とした場合、医療と介護をあわせた給付費の対GDPの割合は60年度に現状投影シナリオで13.3%、成長実現シナリオでも9.7%に上昇すると予測。医療の高度化で医療費が年率2%で進む場合は、現状投影シナリオで60年度に16.1%、成長実現シナリオでも11.7%に高まる可能性があるという。
岸田文雄首相は会議での議論を踏まえ、「少子高齢化・人口減少のもとでも、中長期的に持続可能な経済・財政・社会保障を構築するため、実質1%を上回る経済成長により力強い経済を実現するとともに、医療・介護給付費の対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組む」としており、社会保障費の抑制・削減につながるサービスを提供する企業から目が離せない。
●医療現場でテクノロジーを活用する銘柄群
テクマトリックス <3762> [東証P]子会社のPSPは今月4日、キヤノンメディカルシステムズ(栃木県大田原市)及びエムスリーAI(東京都港区)と、医療分野での人工知能(AI)の更なる活用を目的に業務提携することで合意したと発表。PSPとエムスリーAIが共同で推進しているAIプラットフォーム「NOBORI PAL AI」をキヤノンメディカルシステムズと販売連携するもので、具体的にはキヤノンメディカルシステムズの「AI解析技術」や「3D処理技術」のライセンスをPSPが持つ「DICOM ビューアーソフトウェア」で提供することで画像診断における読影品質の向上と効率化を目指す構えだ。
ファインデックス <3649> [東証P]は3月、自社が開発・提供する医療システムの利用ユーザー数が2000施設を突破したことを明らかにした。同社は主要製品である画像ファイリングシステム「Claio」をはじめ、紙・デジタル文書管理システム「C-Scan」、診療所向け電子カルテ「REMORA」など、医療機関の業務効率化をサポートする多くの製品を販売。直近では、大規模病院のオペレーションや医療地域連携をクラウドでサポートするためのブランド「PiCls」を立ち上げ、次世代患者案内アプリ「Medical Avenue」の運用本格化や、電子トレーシングレポートサービス「AAdE-Report」の開始など、さまざまな取り組みを行っている。
メディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]は、国内最大級の量と質を誇る診療データベースを保有していることが強みで、今年3月末時点での大規模診療データベースは4708万人となっている。3月には医療データで救急医療の質向上と効率化を目指すTXP Medical(東京都千代田区)と資本・業務提携したことを発表し、データ利活用について顧客企業に対して新たな価値提供に向けて共同提案するほか、治験についても両社のリソースを活用した効率的な運用を提案していくとしている。
FIXER <5129> [東証G]と順天堂大学は、2月から生成AIを活用した医療DXの共同研究をスタートさせている。同社の生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」を利用して、電子カルテの情報をもとに診療報酬算定の労力を減らす仕組みをつくり、従来は病院全体で数日かかっていた算定を数分程度に減らしたい考え。診療報酬の改定に伴う医療関連システムの改修コスト削減にもつながり、国が進める医療費の削減にも寄与する見通しだという。
このほか、個人の健康・医療データを意味するPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の関連銘柄にも注目。昨年7月に設立されたPHRサービス事業協会の会員には、アルフレッサ ホールディングス <2784> [東証P]、ソフトウェア・サービス <3733> [東証S]、エクサウィザーズ <4259> [東証G]、Welby <4438> [東証G]、JMDC <4483> [東証P]、サイバーエージェント <4751> [東証P]、エムティーアイ <9438> [東証P]などが名を連ねている。
●存在感増す介護サービス関連にも注目
介護分野ではトライト <9164> [東証G]が3月、NTT東日本(東京都新宿区)と人材不足などの課題解決に向け、介護事業所の情報通信技術(ICT)推進をはじめとした取り組みを開始すると発表した。第1弾として、トライト子会社のbright vieの「ケアデータコネクト」をデータ連携プラットフォームとして活用し、介護事業所向けICT活用の体験・実証フィールドをNTTe-City Laboで開始した。
eWeLL <5038> [東証G]はITを活用した在宅医療の業務支援を推進している。主力は在宅医療を支える訪問看護ステーション向けに電子カルテ「iBow(アイボウ)」などをサブスクリプションで提供するクラウドソフトウェア事業で、全国47都道府県で4万4000人以上の看護師などの日々の業務で活用され、20万人以上の在宅患者の療養を支えている。3月には生成AIによる訪問看護計画書作成をはじめとする在宅医療の次世代サービスの概要を発表しており、今後の展開が期待される。
これ以外では、高齢者施設向け見守りサービス「ライフリズムナビ+Dr.」を展開するエコナビスタ <5585> [東証G]、介護福祉業界における対面に特化した手書き電子サイン式電子契約サービス「クラウドサインfor介護DX」を提供する弁護士ドットコム <6027> [東証G]、作業者の腰・身体的負担を軽減するアシストスーツを販売・レンタルするユーピーアール <7065> [東証S]、福祉業務支援ソフトや介護事業者支援システムを扱う都築電気 <8157> [東証P]などが関連銘柄として挙げられる。
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