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構造計画研究所のニュース
―経過年数50年以上が20年後には67%に、重要インフラ維持に待ったなし―
首都高速道路は1962年に最初の区間である京橋~芝浦間(約4.5キロ)が開通してから今月20日で60年を迎えた。現在は約327キロまでネットワークが広がり、首都圏の暮らしや社会経済活動を支える インフラとなっているが、こうしたなかで深刻さが増しているのが既存路線の老朽化だ。首都高が21日に公表した中間とりまとめ報告書によれば、開通から50年以上を経過した路線の占める割合は、23年1月時点で30%、20年後の43年1月には67%に及ぶ見込みで、老朽化対策を手掛ける企業に改めて注目してみたい。
●過酷な使用状況で目立つ損傷
首都高は都市内のさまざまな制約下で建設されてきたことから、高架橋やトンネルといった構造物の占める割合が総延長の約95%と他に例がないほど高い。利用交通量は1日あたり約100万台にのぼり、特に大型車の交通量が東京23区の一般道と比べて約5倍と過酷な使用状況にさらされていることから、構造物に多数の損傷が顕在化するという大きな課題に直面している。
既に首都高約327キロのうち、約64キロで更新事業が実施されているが、14年からの点検強化などにより、新たに更新が必要な箇所が約22キロ判明し、対策として約3000億円の更新事業が必要となっている。また、道路は時間の経過にあわせて劣化するため、これらを除く約241キロについても、新たに更新が必要になった箇所と同様の構造・基準の箇所などで損傷が表面化する可能性があり、今後の点検などで更新事業が追加されることが予想される。
首都高は東京23区を発着する貨物輸送量の約28%を担うなど首都圏の物流を支えているほか、全線が緊急輸送道路に指定され、災害発生時には避難や救助、物資供給などの応援活動のために、緊急車両の通行を確保すべき重要な路線となっている。構造物の経年劣化が急速に進むなかで今後、首都高の使用環境が大きく変化することは考えられず、通常の修繕だけでは致命的な損傷につながり、深刻な第三者被害や通行止めなどの発生が引き起こされるリスクが高まっていることから、老朽化対策は待ったなしの状況といえる。
●維持・更新で活躍期待の関連株
◇ショーボンドホールディングス <1414> [東証P] 橋梁をはじめとする社会インフラの補修・補強を専門とする総合メンテナンス企業で、設計・施工を主軸に材料・工法の研究開発、更には開発された材料や工法の製造や販売までを幅広くサポートしている。「防災・減災、 国土強靱化のための5ヵ年加速化対策」及び高速道路の大規模更新・修繕事業が着実に進行するとの見通しのもと、23年6月期通期の連結営業利益は前期比3.1%増の178億円が見込まれている。
◇日特建設 <1929> [東証P] 環境防災や維持補修、都市再生分野の専門工事に特化した地質に強い施工会社で、法面補修技術や環境負荷低減技術の開発、海外事業の強化などに取り組んでいる。足もとでは注力している生産性の高い基礎・地盤改良工事が好調で、23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結営業利益は前年同期比50.4%増の20億6700万円と従来予想の14億円から上振れ着地。通期では前期比1.7%増の46億円が予想されている。
◇宮地エンジニアリンググループ <3431> [東証P] グループの事業会社である宮地エンジニアリングとエム・エムブリッジは、国土交通省や高速道路会社などの官公庁から発注される橋梁の製作・施工を主力事業としており、新設橋梁事業では首都高の江戸橋ジャンクション、本州と九州を結ぶ関門大橋など名だたる長大橋を設計・施工した実績がある。手持ち工事の順調な進捗を背景に、23年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結営業利益は前年同期比15.6%増の31億8400万円と堅調。通期予想は前期比5.3%減の55億円で据え置かれているが、進捗率は約58%と高い水準だ。
◇建設技術研究所 <9621> [東証P] 土木建設事業に関する企画・調査・計画・設計・事業監理などを手掛ける総合建設コンサルタント 。国策的なプロジェクトを多数受注するなど技術力と提案力に強みを持ち、道路・交通部門では東京外郭環状道路の計画・設計を手掛けた実績を持つ。国土強靱化基本計画の推進などを背景とした好調な受注により、11月には22年12月期通期の連結営業利益予想を従来の64億円から77億円(会計基準変更により前期との比較なし)に上方修正した。
◇いであ <9768> [東証S] 環境コンサルタント事業と建設コンサルタント事業が主体で、企画・調査から対策、管理までをワンストップで付加価値の高いサービスを提供できる体制を構築していることが強み。大規模な海洋環境調査や防災・減災に関する業務、インフラ施設の設計・維持管理に関する業務などの売り上げ計上により、11月には22年12月期通期の連結営業利益予想を従来の26億円から34億5000万円(前期比35.4%増)に引き上げている。
これ以外では、ニューマチックケーソン工法で施工されたレインボーブリッジなどで実績のあるオリエンタル白石 <1786> [東証P]、プレストレストコンクリート(PC)橋梁大手のピーエス三菱 <1871> [東証P]、法面保護工事や地盤改良工事などを手掛けるライト工業 <1926> [東証P]、首都高1号羽田線の更新工事に携わっている川田テクノロジーズ <3443> [東証P]、鋼鉄製橋梁大手の横河ブリッジホールディングス <5911> [東証P]、鉄骨・橋梁大手の駒井ハルテック <5915> [東証P]、ワイヤーロープ大手の東京製綱 <5981> [東証P]などが関連銘柄として挙げられる。
●TOKYO強靱化プロジェクトにも注目
このほか、災害に強いまちづくりを目指している東京都が23日、2040年代までを想定した総事業費15兆円規模の都市計画「TOKYO強靱化プロジェクト」を発表したことにも注目したい。
これは都が取り組むべき事業を5つの危機(風水害、地震、火山噴火、電力・通信などの途絶、感染症)に複合災害を加えてとりまとめたもの。分類別に事業費をみると、最大は地震の9兆5000億円で、次いで風水害が6兆6000億円となっている。
耐震化では、多くの免震実績を誇る奥村組 <1833> [東証P]、地盤基礎の耐震技術を持つ東亜建設工業 <1885> [東証P]、地震対策コンサルティングを行う構造計画研究所 <4748> [東証S]、免震・制震装置を展開するオイレス工業 <6282> [東証P]など。
風水害対策では、テトラポッドに代表される消波根固ブロック大手の不動テトラ <1813> [東証P]、雨水貯留施設を手掛ける大豊建設 <1822> [東証P]、集中豪雨による路面冠水を抑制するシステムを扱うイトーヨーギョー <5287> [東証S]、地盤解析の地盤ネットホールディングス <6072> [東証G]、河川の氾濫対策としてインプラント堤防を提供する技研製作所 <6289> [東証P]などが関連銘柄となる。
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