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―中東不安でエネルギー価格に先行き懸念、持続可能なバイオ燃料に関心高まる―
中東情勢を巡る不透明感から原油価格の動向が注目されている。ニューヨーク市場で売買されるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は12日に一時1バレル=87.67ドルと約5カ月半ぶりの高値をつけ、その後は落ち着きを取り戻しつつあるものの、イランとイスラエルの対立が一段と深まる可能性があり予断を許さない状況だ。原油をはじめエネルギー価格が更に高騰すれば再生可能エネルギーへの関心が高まりそうで、その流れのなかで注目したいのが脱炭素燃料。そこで今回は「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」の関連株にスポットを当てた。
●利用拡大に向けた動きが活発化
SAFは、サトウキビなどのバイオマス燃料や廃食油、都市ごみ、廃プラスチックを用いて生産される航空燃料のこと。廃棄物や再生可能エネが原料のため、ジェット燃料と比較して60~80%の二酸化炭素(CO2)削減効果があるとされる。国際航空運送協会(IATA)が2021年10月に、国際民間航空機関(ICAO)は22年10月に航空分野で排出されるCO2を50年までに実質ゼロとする目標を採択しており、その達成手段のひとつとして求められているのがSAFの活用だ。
こうしたなか、SAFを積極的に利用しようとする動きが活発化しており、日本航空 <9201> [東証P]は4月からSAFを活用することによって創出されるCO2削減の環境価値を証書化し、JAL便利用の法人顧客に提供する新たな事業「JAL Corporate SAF Program」をスタート。同社は「全燃料搭載量のうち25年度に1%、30年度に10%をSAFに置き換える」という目標を掲げており、業界の垣根を越えて利用拡大を推進する構えだ。また、ANAホールディングス <9202> [東証P]は11日、グローバル・ブレイン(東京都渋谷区)とコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを設立。優れた技術やビジネスモデルを持つスタートアップとの連携を深めることが主な目的で、次世代モビリティやフィンテック、SAFなどの分野に投資するとしている。
運輸業界では日新 <9066> [東証P]が3月にSAFを利用した航空貨物輸送を実施したほか、直近ではNIPPON EXPRESS ホールディングス <9147> [東証P]が航空貨物の荷主企業にSAFで減らしたCO2の削減量を割り当てるサービスを開始。旅行業界ではエイチ・アイ・エス <9603> [東証P]が2月にSAFの研究・開発に焦点をあてた投資ファンド「ユナイテッド・エアラインズ・ベンチャーズ・サステナブル・フライト・ファンド」に出資したことを明らかにしている。
●原料調達に注力する銘柄群
SAFの需要拡大に対応するためには、製造技術の確立とともに重要となるのが原料の調達だ。出光興産 <5019> [東証P]はこのほど、全国農業協同組合連合会の子会社である全農グレイン(米ルイジアナ州)とSAFサプライチェーン構築の戦略的協力に関する覚書(MOU)を締結。3月にはSAFの製造を進めている豪ジェット・ゼロ・オーストラリアに出資し、戦略的パートナーとして協業すると発表している。
ENEOSホールディングス <5020> [東証P]傘下のJX石油開発と住友商事 <8053> [東証P]は9日、米ルイジアナ州で開発中のSAF/BECCS(バイオマスエネルギーとCO2を回収して地下に圧入する技術を組み合わせたもの)事業に参画するためのコンソーシアム契約を締結したと発表。この事業は、間伐材などの木質バイオマス廃棄物をガス化・合成し、SAF及び再生可能ナフサの製造を行うもので、29年には年産約12万キロリットルの製造設備の商業稼働を開始する予定だという。
レンゴー <3941> [東証P]は3日、バイオエタノールやSAFなどを生産する技術を持つBiomaterial in Tokyo(bits、福岡県大野城市)を子会社化したと発表。既にレンゴー子会社の大興製紙とbitsは第二世代バイオエタノールの生産実証事業を実施しており、子会社化することで研究開発面における連携を深めたい考えだ。
日本ゼオン <4205> [東証P]は3月、米ビゾリス(カリフォルニア州)とバイオイソプレンモノマー及びSAFなどの商業化を促進するためのMOUを締結。同社は23年2月にCVCを運営する米子会社を通してビゾリスに投資しており、両社は今回の合意に基づき持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させるとしている。
これ以外では、SRSホールディングス <8163> [東証P]がレボインターナショナル(京都市下京区)と廃食油のバイオ燃料化を開始したほか、物語コーポレーション <3097> [東証P]及びゼンショーホールディングス <7550> [東証P]はENEOSと廃食油をSAFの原料として活用する取り組みに関して基本合意書を締結している。
●サニックス、化工機などにも注目
このほかの関連銘柄としては、日揮ホールディングス <1963> [東証P]などが22年3月に設立したSAFの商用化及び普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」のメンバーに名を連ねるトリドールホールディングス <3397> [東証P]、コスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]、東洋エンジニアリング <6330> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、Green Earth Institute <9212> [東証G]、大栄環境 <9336> [東証P]、Jパワー <9513> [東証P]が挙げられる。
また、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を展開するユーグレナ <2931> [東証P]、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のバイオジェット燃料生産プロジェクトにおける精製工程の一部で自社の精密蒸留精製が活用されたことがある大阪油化工業 <4124> [東証S]、このほど廃棄物由来の重油代替燃料「再生油Bio」の製造ラインを増設したサニックス <4651> [東証S]、国産SAFの大規模生産実証設備向け廃食油精製用遠心分離機を受注した実績のある三菱化工機 <6331> [東証P]などにも目を配っておきたい。
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