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―医学生理学・物理学賞など有力候補多数、文学賞では女性作家もリストに―
今年も恒例のノーベル賞の季節がやってきた。19年には、リチウムイオン電池の開発で旭化成 <3407> の吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞しリチウムイオン電池関連株が急伸したことは記憶に新しいところ。17年を除けば14年以降、毎年日本人の受賞者を輩出している。それだけに、この時期になると株式市場では日本人の受賞への期待が高まるとともに、関連銘柄を探ることが定番行事となっている。果たして、日本人の3年連続受賞はなるか。受賞なら人気化は必至のノーベル賞関連銘柄を探った。
●10月5日からシーズン開幕、米社は2人の日本人を有力候補に挙げる
スウェーデンのノーベル財団が発表した今年のノーベル賞の発表スケジュールは、医学生理学賞が10月5日、物理学賞は6日、化学賞は7日、文学賞は8日、平和賞は9日、経済学賞は12日となっている。今年の授賞式は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で受賞者が参加しないリモート形式の開催となる見込みだ。
ノーベル賞の発表に先駆けて米情報会社のクラリベイト・アナリティクス社から「クラリベイト引用栄誉賞2020」が公表されている。論文引用データを軸に、定性的な情報も加味した上で与えられる賞であり、受賞者はノーベル賞の有力な候補者として注目される。その、クラリベイト引用栄誉賞2020に日本人では医学生理学部門で中村祐輔氏、化学部門で藤田誠氏の2人が受賞する結果となった。株式市場では、両氏を中心に日本人の受賞に対する期待が高まるなか、5日から始まるノーベル賞の発表を心待ちにする状態にある。
●医学生理学賞では東大・中村教授などが有力候補に
医学生理学賞は5日に発表される。クラリベイト社による有力候補に挙げられたのが、東京大学名誉教授の中村祐輔氏だ。同氏は30年以上にわたって遺伝子の多様性と病気とのかかわりを研究し、1990年代からがん治療の個別化に関する「オーダーメイド医療(個別化医療)」を提唱している。創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス <4564> [東証M]の創業者の1人であり、市場では同氏が受賞した場合の最有力銘柄として関心を集めている。がん遺伝子治療、オーダーメイド医療がテーマとして浮上し、テラ <2191> [JQ]やメディネット <2370> [東証M]、栄研化学 <4549> 、プレシジョン・システム・サイエンス <7707> [東証M]、中外製薬 <4519> 、シスメックス <6869> などが関連銘柄となる。
また、大阪大学特任教授の坂口志文氏は過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見。自己免疫疾患や、アレルギーの治療研究に貢献しており、今年6月には微生物学・免疫学分野において優れた業績に対して与えられるドイツのロベルト・コッホ賞を受賞している。制御性T細胞を研究する医学生物学研究所 <4557> [JQ]のほか、テラ、タカラバイオ <4974> 、ブライトパス・バイオ <4594> [東証M]などが注目される。
京都大学教授の森和俊氏は、がんや糖尿病、パーキンソン病とかかわりのある異常なたんぱく質の蓄積を防ぐ「小胞体ストレス応答(UPR)」の仕組みを解明した。アステラス製薬 <4503> は、米国企業とUPRを調節する治療薬に関して提携契約している。
東京大学教授の水島昇氏は、生きた細胞内部のオートファジー現象を可視化することに成功。オートファジー技術を用いた試薬を手掛けるコスモ・バイオ <3386> [JQ]や医学生物学研究所が注目される。東北福祉大学の小川誠二特任教授は、MRI装置の基本原理となる「BOLD効果」を発見し、1990年代からの脳機能解析の道を開いている。MRI関連のキヤノン <7751> や画像改善ソフトの東陽テクニカ <8151> 、放射線・電磁波シールドの技研ホールディングス <1443> [東証2]などが関連銘柄に挙げられている。
●物理学賞ではカーボンナノチューブに量子コンピューター関連も
物理学賞は6日に発表される。名城大学終身教授の飯島澄男氏は「カーボンナノチューブ」を発見したことで知られノーベル賞の有力候補となっている。カーボンナノチューブは炭素で構成され、その強さはダイヤモンドの2倍とも鋼鉄の数十倍ともいわれる。クラレ <3405> やGSIクレオス <8101> 、日本ゼオン <4205> などが関連銘柄だ。
また、鉄系の超伝導体を発見し、超電導の世界に革命をもたらした東京工業大学栄誉教授の細野秀雄氏も注目されている。超電導関連では、古河電気工業 <5801> や住友電気工業 <5802> 、昭和電線ホールディングス <5805> 、アイシン精機 <7259> などが関係する。
理化学研究所の十倉好紀・創発物性科学研究センター長が開発した新材料「マルチフェロイック物質」は、将来的に省エネメモリーにつながると予想されている。この新材料の開発には日本電子 <6951> の透過電子顕微鏡関連の「環状明視野法」という技術が用いられている。
更に、 量子コンピューターに絡んで東京大学の古澤明教授や東京工業大学の西森秀稔特任教授なども候補とされている。量子コンピューター絡みではフィックスターズ <3687> やエヌエフ回路設計ブロック <6864> [JQ]、日本ラッド <4736> [JQ]などが注目されそうだ。
●化学賞は東大・藤田教授や中部大・山本教授など
化学賞は10月7日に発表が予定されている。同部門では前出のクラリベイト引用栄誉賞の東京大学卓越教授の藤田誠氏が有力視されている。同氏の受賞理由は、「自然界に学ぶ自己組織化物質創成と超分子化学への貢献に対して」となっている。自己組織化ペプチドを手掛けるスリー・ディー・マトリックス <7777> [JQG]などが関連銘柄に挙げられている。
中部大学教授の山本尚氏は、医薬品などの材料として注目されるアミノ酸化合物「ペプチド」を効率的に合成する手法を開発したことが評価されている。同氏は東レ <3402> の研究員だったことが注目されている。
●文学賞候補に村上春樹氏に加え多和田葉子氏も
文学賞は8日に発表される。毎年、名前が取り沙汰される村上春樹氏に加えて、ドイツ在住の日本人女性作家である多和田葉子氏も候補に挙げられている。書店の丸善CHIホールディングス <3159> や文教堂グループホールディングス <9978> [JQ]、三洋堂ホールディングス <3058> [JQ]、トップカルチャー <7640> 、ブックオフグループホールディングス <9278> 、ヴィレッジヴァンガードコーポレーション <2769> [JQ]などが関連銘柄だ。
●平和賞に絡み環境関連株に注目、経済学賞では清滝氏が候補
平和賞は9日に発表される。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏が候補になっており、同氏が受賞すれば環境関連銘柄へ関心が集まる可能性がある。経済学賞は12日に発表。米プリンストン大学教授の清滝信宏氏が候補となる。経済に対する小さなショックが生産性低下の循環をどのように引き起こすかを示した「清滝・ムーアモデル」を構築している。同氏は大阪の旧・池田銀行の創業家の生まれであり、池田泉州ホールディングス <8714> が関連銘柄として挙げられている。
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