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*13:15JST シンバイオ製薬 Research Memo(5):BCV開発リスク低減、2030年までに2適応症で承認取得目指す(2)
■シンバイオ製薬<4582>のBCVの開発戦略
(3) 造血幹細胞移植後のCMV感染症
造血幹細胞移植後のCMV感染症※1を対象とした第2相臨床試験を米国で開始したことを2024年5月に発表した。移植後のCMV感染症の患者数は全世界で年間約2.5万人※2と見られている。CMV感染症の抗ウイルス薬としては、ガンシクロビルやホスカルネット、CDVが既に使用されているほか、2021年以降に難治性・抵抗性を示すCMV感染症に対して武田薬品工業<4502>の「LIVTENCITY」(一般名:マリバビル)が欧米及び中国、オーストラリアなどで承認されている(日本は2023年11月に承認申請)。ただ、臨床試験の結果ではマリバビルに対して44.3%の患者が効果を示さなかったほか、治療効果があったとしても再発し耐性を持つケースがあるなど課題があり、より有効性の高い治療薬が求められている。
※1 症状は、発熱(38度以上)、倦怠感、関節痛などの全身症状のほか、CMVの侵襲部位によって肺炎や胃腸炎、網膜炎、皮膚潰瘍など局所症状がある。
※2 出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
BCVは過去にキメリックスが実施した経口剤による臨床試験において、CMV感染症に対して有効性の高いことが確認されていること、今回は安全性の高い注射剤で臨床試験を実施することから、良好な結果が得られる可能性は高いと弊社では見ている。同社では2030年までに承認取得を目指しているものと見られる。武田薬品工業では、マリバビルのピーク時売上高を7~8億米ドルと予想していることから、BCVで開発に成功すれば同等程度の売上が期待できることになり、今後の展開が注目される。
(4) EBV陽性NK/T細胞リンパ腫
BCVの4つ目のパイプラインとして、2025年第1四半期以降にNK/T細胞リンパ腫※1の国際共同臨床試験の開始を目指す。同疾患は2021年9月に共同研究契約を締結したシンガポール国立がんセンターで動物実験を進めてきたもので、2022年12月にBCVが持つ抗腫瘍効果について、2023年6月には抗腫瘍効果を予測するバイオマーカー(TLE1※2)についての研究成果を担当医師が学会で発表している。
※1 NK/T細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫の種類の1つ。進行の速さによって「低悪性度(進行が年単位)」、「中悪性度(進行が月単位)」、「高悪性度(進行が週単位)」に分類される。NK/T細胞リンパ腫は、ほとんどが節外性NK/T細胞リンパ腫で、鼻腔周囲や皮膚に発生する。中国を含めた東南アジアで比較的多く見られるのが特徴となっている。
※2 TLE1は遺伝子の発現を調節することで造血器腫瘍を含めたがんを抑制する機能が知られている転写抑制因子。TLE1の低発現はいくつかのがん種で予後不良と関連しており、MYC(がん遺伝子の一種)の発現や他のがん促進シグナル経路を抑制すると報告されている。
現在有効な治療法が確立していない悪性度の高いNK/T細胞リンパ腫において、BCVが腫瘍悪性化を促進するMYCの発現を抑制し、さらにはがん免疫を活性化することで知られる免疫原性細胞死を誘導することが新たに確認され、同腫瘍を移植したマウスモデルにおいて明確な腫瘍増殖抑制効果を示す結果が得られている。今後の開発においては免疫療法との併用療法が有効になると考えられ、2024年12月期第4四半期に動物実験による研究成果の最終報告が発表される予定だ。悪性リンパ腫は「トレアキシン(R)」の対象疾患でもあるため、開発に成功すればシナジーが期待できることになる。
(5) CMV感染のGBM(膠芽腫)
5つ目のパイプラインとしてCMV感染によるGBM(膠芽腫)がある。GBMは脳腫瘍のなかでも悪性度の高い疾患で年間約3万人※が発症し、そのうち約半分がCMVに感染していることが明らかとなっている。CMVの再活性化によって細胞に炎症を引き起こし、低酸素状態を作ることで新生血管形成に係る増殖因子であるVEGFを増加させ、がん細胞の増殖を促進している可能性が指摘されている。GBMの標準的治療法は外科手術、放射線治療及び化学療法となるが、平均生存期間が15~20ヶ月で5年生存率は5%以下と極めて低く、有効な治療薬の開発が強く望まれている領域となっている。開発中のGBM治療薬候補品は多いものの、CMVと脳腫瘍の両方をターゲットにしたものはなく、BCVの有効性が確認されれば市場価値は一段と拡大するものと予想される。
※出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
GBMについては2022年12月に米国カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターと非臨床試験の受託研究契約を締結し研究を進めてきた。動物モデルで標準療法とBCVの併用療法を行ったところ、生存期間が標準療法のみと比較して長期化するデータが研究の途中段階ではあるが得られているようで、臨床試験に進むだけの価値があると判断した。2024年内に動物試験が完了予定となっており、順調に進めば2025年12月期第2四半期頃に臨床試験が開始される見込みだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HH>
(3) 造血幹細胞移植後のCMV感染症
造血幹細胞移植後のCMV感染症※1を対象とした第2相臨床試験を米国で開始したことを2024年5月に発表した。移植後のCMV感染症の患者数は全世界で年間約2.5万人※2と見られている。CMV感染症の抗ウイルス薬としては、ガンシクロビルやホスカルネット、CDVが既に使用されているほか、2021年以降に難治性・抵抗性を示すCMV感染症に対して武田薬品工業<4502>の「LIVTENCITY」(一般名:マリバビル)が欧米及び中国、オーストラリアなどで承認されている(日本は2023年11月に承認申請)。ただ、臨床試験の結果ではマリバビルに対して44.3%の患者が効果を示さなかったほか、治療効果があったとしても再発し耐性を持つケースがあるなど課題があり、より有効性の高い治療薬が求められている。
※1 症状は、発熱(38度以上)、倦怠感、関節痛などの全身症状のほか、CMVの侵襲部位によって肺炎や胃腸炎、網膜炎、皮膚潰瘍など局所症状がある。
※2 出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
BCVは過去にキメリックスが実施した経口剤による臨床試験において、CMV感染症に対して有効性の高いことが確認されていること、今回は安全性の高い注射剤で臨床試験を実施することから、良好な結果が得られる可能性は高いと弊社では見ている。同社では2030年までに承認取得を目指しているものと見られる。武田薬品工業では、マリバビルのピーク時売上高を7~8億米ドルと予想していることから、BCVで開発に成功すれば同等程度の売上が期待できることになり、今後の展開が注目される。
(4) EBV陽性NK/T細胞リンパ腫
BCVの4つ目のパイプラインとして、2025年第1四半期以降にNK/T細胞リンパ腫※1の国際共同臨床試験の開始を目指す。同疾患は2021年9月に共同研究契約を締結したシンガポール国立がんセンターで動物実験を進めてきたもので、2022年12月にBCVが持つ抗腫瘍効果について、2023年6月には抗腫瘍効果を予測するバイオマーカー(TLE1※2)についての研究成果を担当医師が学会で発表している。
※1 NK/T細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫の種類の1つ。進行の速さによって「低悪性度(進行が年単位)」、「中悪性度(進行が月単位)」、「高悪性度(進行が週単位)」に分類される。NK/T細胞リンパ腫は、ほとんどが節外性NK/T細胞リンパ腫で、鼻腔周囲や皮膚に発生する。中国を含めた東南アジアで比較的多く見られるのが特徴となっている。
※2 TLE1は遺伝子の発現を調節することで造血器腫瘍を含めたがんを抑制する機能が知られている転写抑制因子。TLE1の低発現はいくつかのがん種で予後不良と関連しており、MYC(がん遺伝子の一種)の発現や他のがん促進シグナル経路を抑制すると報告されている。
現在有効な治療法が確立していない悪性度の高いNK/T細胞リンパ腫において、BCVが腫瘍悪性化を促進するMYCの発現を抑制し、さらにはがん免疫を活性化することで知られる免疫原性細胞死を誘導することが新たに確認され、同腫瘍を移植したマウスモデルにおいて明確な腫瘍増殖抑制効果を示す結果が得られている。今後の開発においては免疫療法との併用療法が有効になると考えられ、2024年12月期第4四半期に動物実験による研究成果の最終報告が発表される予定だ。悪性リンパ腫は「トレアキシン(R)」の対象疾患でもあるため、開発に成功すればシナジーが期待できることになる。
(5) CMV感染のGBM(膠芽腫)
5つ目のパイプラインとしてCMV感染によるGBM(膠芽腫)がある。GBMは脳腫瘍のなかでも悪性度の高い疾患で年間約3万人※が発症し、そのうち約半分がCMVに感染していることが明らかとなっている。CMVの再活性化によって細胞に炎症を引き起こし、低酸素状態を作ることで新生血管形成に係る増殖因子であるVEGFを増加させ、がん細胞の増殖を促進している可能性が指摘されている。GBMの標準的治療法は外科手術、放射線治療及び化学療法となるが、平均生存期間が15~20ヶ月で5年生存率は5%以下と極めて低く、有効な治療薬の開発が強く望まれている領域となっている。開発中のGBM治療薬候補品は多いものの、CMVと脳腫瘍の両方をターゲットにしたものはなく、BCVの有効性が確認されれば市場価値は一段と拡大するものと予想される。
※出所:事業計画及び成長可能性に関する事項
GBMについては2022年12月に米国カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターと非臨床試験の受託研究契約を締結し研究を進めてきた。動物モデルで標準療法とBCVの併用療法を行ったところ、生存期間が標準療法のみと比較して長期化するデータが研究の途中段階ではあるが得られているようで、臨床試験に進むだけの価値があると判断した。2024年内に動物試験が完了予定となっており、順調に進めば2025年12月期第2四半期頃に臨床試験が開始される見込みだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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