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―AI用半導体の申し子・エヌビディアは株価100倍、ずば抜けた成長キャパに着目―
東京株式市場は、欧米株市場の不安定な値動きを引き継ぐ形で足もと調整色を強め、日経平均株価は2万6700円台に位置する25日移動平均線の少し上で強弱観を対立させている。米国ではインフレ高進が悩みの種となっており、FRBはタカ派に急傾斜し、金融引き締め方向に急速に舵を切ろうとしている。ウクライナ情勢も依然として不透明で、ロシアへの制裁強化による世界経済への反動も警戒されている。
国内では4月下旬から企業の決算発表が本格化することもあって、このタイミングで積極的な買いは入れにくいムードがある。しかし、先物に左右される日経平均に連動しやすい主力株はともかく、中小型材料株の一角には上値を慕う銘柄が少なくない。マザーズ指数の動向などにも反映されるように目先は中小型株優位の構図であり、テーマ買いの動きが再燃している。
●過剰流動性ピークの4月はAIがテーマ
FRBは5月から政策金利の引き上げピッチを強め、保有資産圧縮も同時進行させる方針にあるほか、ECBも遅かれ早かれこれに追随する動きが予想される。しかし、4月はその直前の段階で、時間軸でみれば市場を取りまく過剰流動性はまさに最高潮といってよい。潤沢な資金が流れ込む場所を探している状態だが、その有力候補が「人工知能(AI)」関連となる。
コモディティ価格高騰や円安による企業のコスト上昇、中国の主要都市ロックダウンで警戒されるサプライチェーンリスク、更にウクライナ問題の絡みでロシア事業からの撤退を表明する企業が相次ぐ状況にある。こうしたなか、「製造業の範疇にある銘柄は、今のタイミングでは買いづらい」(国内証券アナリスト)というのが投資家の本音でもあろう。一方でそういったネガティブな外部要因から離れたポジションにいるのが、メタバースやブロックチェーン といったバーチャル空間のテーマだ。そして、「あらゆるものはAIに通ず」という今の産業構造を考えれば、その源流にあるAI関連株に熱い眼差しが向けられるのは半ば必然といってよい。
●AI関連の雄エヌビディアの株価は100倍に
ビッグデータ解析技術の進歩やIoTの発展をバックグラウンドに、近年のAIの進化は目覚ましいものがある。転機となったのは今から10年前、ディープラーニングの登場でAIは予測精度や実用性が飛躍的に高まった。それまでは、ずば抜けた演算能力があっても、プログラミングされた範囲で一定の動作を繰り返す、いわば“池の中の鯨”であったが、現在は人間同様に、背景知識を持たない状態から、AI自らが学習して劇的に進化することが可能となっている。
AIはあらゆる産業分野に水のように浸透し、その存在性を高め技術革新の原動力となっている。次世代の成長市場と目される自動運転やフィンテック、メタバースといった分野でもAIは不可欠のキーテクノロジーといってよい。「世界市場におけるAI関連企業の売上高は2025年におよそ6000億ドル(約74兆円)規模に達するとみられる」(大手証券アナリスト)との指摘もある。その先陣を切ったのが、AI用半導体のリード役であるエヌビディア
岸田首相が看板政策として掲げる「新しい資本主義」では、成長戦略の柱として量子技術が位置づけられその国家戦略に耳目が集まるが、このほかAIに関する国家戦略も注目の的となっている。量子コンピューターやAIは科学技術の要衝であるとともに、日米において現在進行形で共同研究を進める政治的にも重要な分野で、今後は株式市場でもテーマ性を一段と強く帯びる可能性が高い。
●強烈な輝きみせたAI関連の新星
そして実際、その流れは東京市場に既に押し寄せているといってもよさそうだ。「プライム」「スタンダード」「グロース」の新市場がスタートした4月4日、新体制下のIPOトップバッターとしてグロース市場に登場したセカンドサイトアナリティカ <5028> [東証G]に物色人気が集中した。同社はマシーンラーニングやディープラーニングなどを活用して企業の課題を解決するアナリティクスコンサルティング事業と、同事業で培ったノウハウを駆使して汎用システムの開発・提供を行うAIプロダクト事業、この2つを収益の柱とする。
いかにも今の時流に乗った成長性がみなぎるビジネスモデルである。上場初日は買いが殺到し商いが成立せず、上場2日目に公開価格の2.3倍となる3190円で初値をつける人気ぶりを示した。更に同日の終値も初値形成から700円高はストップ高となる3890円まで上値を伸ばしたが、その翌日も勢いは止まらなかった。何と連日のストップ高となる4590円まで買われた。さすがにここまで株価を短期急騰させたことでスピード警戒感は拭えず、その反動から週後半は利益確定売りに押され調整局面に入ったが、下値では押し目買いニーズが強い。4000円台を割り込んだところでは大口の買いが入り、株価を立て直してくる。
●セカンドXの露払い務めたエッジテクノ
このように、市場再編後のIPO第1号として鮮烈デビューしたセカンドXはAI関連の新星として脚光を浴びたわけだが、実はその伏線もあった。セカンドX上場に先立って、同社同様にAIソリューションやAIプロダクト事業を展開するエッジテクノロジー <4268> [東証G]の急騰が注目を浴びていた。
3月中旬以降の全体相場戻り局面で、グロース株買い戻しの象徴として強烈な光を放っていたのがエッジテクノで3月14日に商いを膨らませ急動意するや、15日以降は連日値幅制限いっぱいに買われる爆騰モードに突入。同月23日までの6営業日のうち5営業日でストップ高を演じるという離れ業をみせた。3月末にザラ場1857円まで買われ、わずか2週間で株価は3.7倍という大化けを果たした。その後は急速な調整を強いられ、直近では信用規制も入ったことで投機性の強い資金は退潮したが、売り物が枯れれば再び動意づく可能性も十分にありそうだ。
まさに、マーケットの視線は「AI」に釘付けである。今回のトップ特集では、こうした一連の流れを受けて、ここから要注目となるAI関連の有力株を6銘柄エントリーした。
●株価変貌の可能性を内包するAI関連株6選
◎フィックスターズ <3687> [東証P]
顧客企業のソフトウェアを高速化する技術で強みを持ち、高いリピート率に加え、野村総合研究所 <4307> [東証P]やエヌ・ティ・ティ・データ <9613> [東証P]など大手システムインテグレーターとのパートナー契約が相次ぎ、今期以降の業績は再び2ケタ成長トレンドに回帰する公算が大きい。量子コンピューターやAI分野に積極的に経営資源を注いでいることで、中期的な成長キャパシティーの高さが改めて意識される。直近では3月に車載マイコンで世界屈指のルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]と車載ディープラーニング分野での協業を発表し、業容拡大期待が膨らんでいる。22年9月期営業利益は前期比13%増の11億円を予想しているが上振れの可能性がある。また、23年9月期以降の成長力も再評価されそうだ。株価は年初の904円高値を払拭して中勢4ケタ大台指向に。
◎ALBERT <3906> [東証G]
AI技術を駆使したビッグデータ解析事業で高い実績を有し、AI関連のシステム実装では金融や流通業界などを中心に数多くの案件を確保。また、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資需要の高まりに比例する形で引き合いが急増しているデジタル人材についても、業界に先駆けて育成支援事業に着手し、収益向上に結実させている。同社はSBIグループに属するが、トヨタ自動車 <7203> [東証P]を大株主とするなど大資本企業との連携も強固で、事業展開に厚みを加えている。21年12月期営業利益は前の期比75%増益の4億3600万円と過去最高を大幅に更新したが、22年12月期についても前期比51%増の6億5700万円と成長が加速する見通しにある。株価は押し目を形成しながらも下値切り上げ波動が鮮明、早晩6000円台活躍へ歩を進める公算が大きい。
◎アステリア <3853> [東証P]
企業向けシステムソフト開発を手掛けており、ブロックチェーンやAIなど先進技術分野に業界の先陣を切って経営資源を投入し、独自ノウハウを醸成している。ノーコードのデータ連携ツール「ASTERIA Warp」は企業データ連携製品の国内市場において15年間にわたりトップシェアを獲得。このほか先進ソフトではAI機能を搭載したIoT統合エッジウェア「Gravio」や次世代ブロックチェーン技術「IOTA」などで顧客ニーズに対応している。投資事業では出資先の先端AI開発を手掛ける台湾ゴリラ・テクノロジーGが、SPACとの合併を通じ米ナスダック市場に上場することで、投資先評価益も寄与する。22年3月期営業利益は前期比4.1倍の34億円と急拡大、23年3月期も増益基調が見込まれる。株価は年初来高値1140円を通過点に上値追いが続く公算大。
◎ユーザーローカル <3984> [東証P]
ビッグデータ解析やAIを活用した業務支援ツールの開発及び情報提供を行っている。AIアルゴリズム実装、AIサービスの新規開発などに力を注いでおり、最近ではさまざまなSNS上でのクチコミを調査・分析するサービスなどが需要を捉えている。また、企業の社内対応や顧客からの問い合わせなどに対応するAI活用のサポートチャットボットも順調に伸び業績に貢献している。このチャットボットは、2月初旬にコンビニを全国展開するファミリーマートへの提供を開始したことを発表している。業績は21年6月期に24%営業増益と高い伸びを達成したが、続く22年6月期も前期比15%増の9億8400万円と2ケタ伸長を予想、更に上振れの余地がある。23年6月期も2ケタ増益が濃厚で、株価も1700~1900円のボックス圏を上放れる可能性がある。
◎ブレインパッド <3655> [東証P]
AIを活用したデータ分析を強みに企業の経営を支援するコンサルティングビジネスを主力としているが、高度なデジタル人材も豊富に抱えておりビジネス展開力は抜群だ。企業のDX関連投資需要の高まりを追い風に商機を捉えている。直近では、りそなホールディングス <8308> [東証P]との資本・業務提携を2月下旬に発表、りそなHDが目指す金融デジタルプラットフォーム事業とブレインPのデータ分析技術を融合させた新サービス開発に意欲をみせる。22年6月期業績(単独)は営業利益が前期比44%増の12億1000万円と大幅な伸びを見込んでいる。株価は1000円トビ台での底値もみ合いを経て、調整を交えながらもここ最近は浮上気配を漂わせている。25日移動平均線をサポートラインに本格的な底値離脱も近そうだ。
◎エスユーエス <6554> [東証G]
大手メーカーやシステムインテグレーター向けに開発系のIT技術者を派遣するほか、ERP導入などのコンサルティング事業も手掛けている。SAPをはじめ大規模基幹システムで重視されるIT基盤の統合・再構築が好調に推移。また、同社の戦略商品であるタレントマネジメントシステム「SUZAKU」を中心にHRコンサルティングも収益を押し上げている。AIソリューションでは画像診断、非破壊検査、スケジュール・シフト調整、販売管理、需要予測といった幅広い分野に対応し、顧客企業の業務効率化や付加価値化に貢献している。時流を捉えXR事業に戦略的に踏み込んでいる点もポイントだ。22年9月期営業利益は前期比3.1倍の6億100万円を見込む。株価は昨年11月に大相場を演じ、わずか半月で4倍化するなど小型株特有の足の速さが魅力となる。
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