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日本触媒のニュース
-抗菌・抗ウイルス分野での応用を加速-
株式会社日本触媒(本社:大阪市中央区、長:野田和宏、以下「日本触媒」)と北海道大学病院歯周病科の宮治裕史講師のグループは、昨年、酸化グラフェンと抗菌・抗ウイルス剤を組み合わせることで、耐水性が高く基材への定着性に優れた抗菌・抗ウイルス酸化グラフェン複合膜が達成できることを発表しました。
2021.10.14付リリース:https://www.shokubai.co.jp/ja/news/news0494.html
このたび、関西大学化学生命工学部の川崎英也教授のグループを加え、本技術・材料のさらなる検討を重ねたところ、酸化グラフェンによる抗菌・抗ウイルス剤の高い基材定着性および、長期的な抗菌・抗ウイルス効果の発現メカニズムを解明しました。本リリースに関する内容は、2022.10.18公開のScientific Reports誌に掲載されています(論文情報は本ニュースリリース末に掲載)。
<酸化グラフェンによる抗菌・抗ウイルス剤の基材定着効果>
単独では基材への付着性が低い物質が、酸化グラフェンと複合化させることで基材密着性(耐水性や長期安定性)が向上します(図1)。
本技術の幅広い工業的応用を推進するためには、発現原理を解明し、より効果的な使用方法を開発することが求められていました。しかしながら、その耐水性のメカニズムや、長期に渡って持続する抗菌・抗ウイルス効果については発現メカニズムが詳しく解明されていませんでした。
このような課題に対して、日本触媒と宮治裕史講師、川崎英也教授のグループは、詳細な試験・分析を重ね、その耐水性を発現する相互作用の推定と、抗菌・抗ウイルスを発現するメカニズムを解明しました。
<耐水性、抗菌・抗ウイルス効果の発現メカニズム>
■酸化グラフェンが基材に強く吸着し、基材表面で酸化グラフェン単層膜が形成される。
■基材上の酸化グラフェンと抗菌・抗ウイルス剤が複数の相互作用機構により強固に吸着し、高い耐水性を発現する。
■抗菌・抗ウイルス剤が徐放され、長期的に抗菌・抗ウイルス効果を発揮する。
酸化グラフェン(GO)と抗菌・抗ウイルス剤(界面活性剤:CSAA)(*1)複合膜の耐水性と抗菌特性のメカニズムを図2に示します。
1.酸化グラフェンは水中でプロトンを放出し、アニオン構造(マイナスに帯電した状態)をとります。
2.アニオン構造に加え、シート構造を持つことから、イオン相互作用(*2)およびファンデルワールス力(*3)の高い相互作用により基材に強く接着します。この時、基材に接していない余分な酸化グラフェンは相互作用が弱く、水洗により容易に取り除くことが可能です。
3.基材上の酸化グラフェンに抗菌・抗ウイルス剤を作用させると、最表面の抗菌・抗ウイルス剤は分子鎖に沿って分子全体が吸着しますが、その上に来た抗菌・抗ウイルス剤(過剰成分)は酸化グラフェンと作用できず、弱い力でミセル様構造(*4)を形成します。過剰な抗菌・抗ウイルス剤も水洗により容易に取り除くことが可能です。
→最表面に残った抗菌・抗ウイルス剤は各種分析より、イオン相互作用、ファンデルワールス力、π-π相互作用(*5)、CH/π相互作用*5のような複数の相互作用で強く複合化していることが分かりました。これにより、酸化グラフェンを介して基材に強く吸着し、高い耐水性を発現すると考えられます。
4.抗菌・抗ウイルス剤が徐放され、長期的に抗菌・抗ウイルス効果を発揮する。
<酸化グラフェン>
酸化グラフェンは、ナノカーボン材料の一種であり、シート構造で、厚さ約1 nm、幅数μmの大きなアスペクト比(厚みに対する幅の比)をもつ材料です(図3)。酸化グラフェンは様々な用途で有効性が確認されており、幅広い分野で応用が期待されていますが、工業規模での大量生産は困難でした。日本触媒では、これまで培ってきた化学品製造における化学反応を安全・安定に制御する技術を駆使し、工業化に向けた種々の課題を解決し、量産化技術を確立しています。
現在、抗菌・抗ウイルス分野での活用を目指し、得られた知見を活かして各ユーザーの種々の基材、抗菌・抗ウイルス剤に対応するべく、サンプルワークを重ね、酸化グラフェンの事業化を推進しております。
*1 本論文で用いた抗菌・抗ウイルス剤は塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムであり、一般的に使用されている抗菌・抗ウイルス剤です。
*2 プラスとマイナスの電荷が引きつけあう力
*3 様々な原子、イオン、分子の間に働く力
*4 水中で界面活性剤の疎水性部分が凝集した状態
*5 特定の構造(電子状態)を持つ分子同士に働く相互作用
【論文情報】
タイトル:Sustained antibacterial coating with graphene oxide ultrathin film combined with cationic surface-active agents in a wet environment
著者: Hirofumi Miyaji, Yukimi Kanemoto, Asako Hamamoto, Kanako Shitomi, Erika Nishida, Akihito Kato, Sugaya Tsutomu, Saori Tanaka, Natsuha Aikawa, Hideya Kawasaki, Syun Gohda, Hironobu Ono
掲載誌: Scientific Reports (2022.10.18公開)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-022-21205-4
※「水で洗っても落ちない」、「耐水性」、「抗菌・抗ウイルス」などの効果は、本リリースに関連する実験を行った基板・条件で確認されたことであり、全ての材質・環境で同様の効果が出るわけではありません。
以上
日本触媒について:
1941年の創業以来、自社開発の触媒技術を核に事業を拡大。酸化エチレンやアクリル酸、自動車用・工業用触媒などを世の中に送り出し、現在では紙おむつに使われる高吸水性樹脂で世界1位のシェアを誇っています(2022年日本触媒調べ)。日本触媒は「テクノロジー(技術)」を通じて「アメニティ(豊かさ)」を提供する、という企業理念「TechnoAmenity」のもと、グローバルに活動する化学会社です。
https://www.shokubai.co.jp
株式会社日本触媒(本社:大阪市中央区、長:野田和宏、以下「日本触媒」)と北海道大学病院歯周病科の宮治裕史講師のグループは、昨年、酸化グラフェンと抗菌・抗ウイルス剤を組み合わせることで、耐水性が高く基材への定着性に優れた抗菌・抗ウイルス酸化グラフェン複合膜が達成できることを発表しました。
2021.10.14付リリース:https://www.shokubai.co.jp/ja/news/news0494.html
このたび、関西大学化学生命工学部の川崎英也教授のグループを加え、本技術・材料のさらなる検討を重ねたところ、酸化グラフェンによる抗菌・抗ウイルス剤の高い基材定着性および、長期的な抗菌・抗ウイルス効果の発現メカニズムを解明しました。本リリースに関する内容は、2022.10.18公開のScientific Reports誌に掲載されています(論文情報は本ニュースリリース末に掲載)。
<酸化グラフェンによる抗菌・抗ウイルス剤の基材定着効果>
単独では基材への付着性が低い物質が、酸化グラフェンと複合化させることで基材密着性(耐水性や長期安定性)が向上します(図1)。
本技術の幅広い工業的応用を推進するためには、発現原理を解明し、より効果的な使用方法を開発することが求められていました。しかしながら、その耐水性のメカニズムや、長期に渡って持続する抗菌・抗ウイルス効果については発現メカニズムが詳しく解明されていませんでした。
このような課題に対して、日本触媒と宮治裕史講師、川崎英也教授のグループは、詳細な試験・分析を重ね、その耐水性を発現する相互作用の推定と、抗菌・抗ウイルスを発現するメカニズムを解明しました。
<耐水性、抗菌・抗ウイルス効果の発現メカニズム>
■酸化グラフェンが基材に強く吸着し、基材表面で酸化グラフェン単層膜が形成される。
■基材上の酸化グラフェンと抗菌・抗ウイルス剤が複数の相互作用機構により強固に吸着し、高い耐水性を発現する。
■抗菌・抗ウイルス剤が徐放され、長期的に抗菌・抗ウイルス効果を発揮する。
酸化グラフェン(GO)と抗菌・抗ウイルス剤(界面活性剤:CSAA)(*1)複合膜の耐水性と抗菌特性のメカニズムを図2に示します。
1.酸化グラフェンは水中でプロトンを放出し、アニオン構造(マイナスに帯電した状態)をとります。
2.アニオン構造に加え、シート構造を持つことから、イオン相互作用(*2)およびファンデルワールス力(*3)の高い相互作用により基材に強く接着します。この時、基材に接していない余分な酸化グラフェンは相互作用が弱く、水洗により容易に取り除くことが可能です。
3.基材上の酸化グラフェンに抗菌・抗ウイルス剤を作用させると、最表面の抗菌・抗ウイルス剤は分子鎖に沿って分子全体が吸着しますが、その上に来た抗菌・抗ウイルス剤(過剰成分)は酸化グラフェンと作用できず、弱い力でミセル様構造(*4)を形成します。過剰な抗菌・抗ウイルス剤も水洗により容易に取り除くことが可能です。
→最表面に残った抗菌・抗ウイルス剤は各種分析より、イオン相互作用、ファンデルワールス力、π-π相互作用(*5)、CH/π相互作用*5のような複数の相互作用で強く複合化していることが分かりました。これにより、酸化グラフェンを介して基材に強く吸着し、高い耐水性を発現すると考えられます。
4.抗菌・抗ウイルス剤が徐放され、長期的に抗菌・抗ウイルス効果を発揮する。
<酸化グラフェン>
酸化グラフェンは、ナノカーボン材料の一種であり、シート構造で、厚さ約1 nm、幅数μmの大きなアスペクト比(厚みに対する幅の比)をもつ材料です(図3)。酸化グラフェンは様々な用途で有効性が確認されており、幅広い分野で応用が期待されていますが、工業規模での大量生産は困難でした。日本触媒では、これまで培ってきた化学品製造における化学反応を安全・安定に制御する技術を駆使し、工業化に向けた種々の課題を解決し、量産化技術を確立しています。
現在、抗菌・抗ウイルス分野での活用を目指し、得られた知見を活かして各ユーザーの種々の基材、抗菌・抗ウイルス剤に対応するべく、サンプルワークを重ね、酸化グラフェンの事業化を推進しております。
*1 本論文で用いた抗菌・抗ウイルス剤は塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムであり、一般的に使用されている抗菌・抗ウイルス剤です。
*2 プラスとマイナスの電荷が引きつけあう力
*3 様々な原子、イオン、分子の間に働く力
*4 水中で界面活性剤の疎水性部分が凝集した状態
*5 特定の構造(電子状態)を持つ分子同士に働く相互作用
【論文情報】
タイトル:Sustained antibacterial coating with graphene oxide ultrathin film combined with cationic surface-active agents in a wet environment
著者: Hirofumi Miyaji, Yukimi Kanemoto, Asako Hamamoto, Kanako Shitomi, Erika Nishida, Akihito Kato, Sugaya Tsutomu, Saori Tanaka, Natsuha Aikawa, Hideya Kawasaki, Syun Gohda, Hironobu Ono
掲載誌: Scientific Reports (2022.10.18公開)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-022-21205-4
※「水で洗っても落ちない」、「耐水性」、「抗菌・抗ウイルス」などの効果は、本リリースに関連する実験を行った基板・条件で確認されたことであり、全ての材質・環境で同様の効果が出るわけではありません。
以上
日本触媒について:
1941年の創業以来、自社開発の触媒技術を核に事業を拡大。酸化エチレンやアクリル酸、自動車用・工業用触媒などを世の中に送り出し、現在では紙おむつに使われる高吸水性樹脂で世界1位のシェアを誇っています(2022年日本触媒調べ)。日本触媒は「テクノロジー(技術)」を通じて「アメニティ(豊かさ)」を提供する、という企業理念「TechnoAmenity」のもと、グローバルに活動する化学会社です。
https://www.shokubai.co.jp
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