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戸田工業 Research Memo(3):2023年に創業200周年を迎える老舗の化学素材メーカー(2)

配信元:フィスコ
投稿:2022/09/12 15:23
■会社概要

2. 事業内容
戸田工業<4100>は現在、機能性顔料事業(各種着色材料、環境関連材料)と電子素材事業(磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、リチウムイオン電池用材料等)の2事業で事業展開している。

(1) 電子素材事業
主に自動車、通信・家電市場を事業フィールドとして製品展開を行っている。主な製品として磁石材料(フェライト、希土類)、誘電体材料(チタン酸バリウム)、リチウムイオン電池用材料を「戦略3事業」として位置づけている。全体として電池材料、磁石材料などは金属・レアメタル市況また為替変動による影響などにより、見かけの売上が大きく変動することがあり、利益面でも在庫、売価の価格連動の追従性や稼働率により大きく変動することがある。

製品別では磁石材料が売上を牽引している。その中心はボンド磁石用のフェライト・希土類磁性コンパウンド材料(磁性粉末と樹脂を複合化したもの)である。ボンド磁石は高分子樹脂やゴムなどのバインダーにフェライト磁石や希土類磁石の微粒粉末を高充填した磁性コンパウンドから製造される。焼結磁石に磁力面ではかなわないものの、複雑形状に加工成形ができ、焼結磁石では不可能な金属との一体成形、薄型化や長尺広幅化も可能となる。売上推移としてはボンド磁石日系メーカー生産が1,000億円規模で推移(日本ボンド磁性材料協会調べ)、2020年はコロナ禍で減少したものが2021年には回復、同社の磁石事業も同様の推移となっている。ボンド磁石の中で、同社の素材は万遍なく利用されているが、複写機・プリンター用途の他、エアコン・空気清浄機向けや自動車向けなどに需要が拡大するなど、利用分野の広がりもある。また2021年8月に射出成形ボンド磁石等を製造・販売する江門協立磁業高科技有限公司の持分を取得(2024年7月に100%取得計画)、今後は加工事業を含めた事業展開となった。

この数年で大きく伸びてきたのがリチウムイオン電池用材料である。一世を風靡したアナログ式の磁気テープがデジタル化の波の中で消えていき、同社は2000年頃までに磁性酸化鉄市場が急激に縮小する試練に遭遇したため、既存事業の技術を生かし新規機能性材料の開発と事業化に挑戦することとなる。リチウムイオン電池用正極材料の研究に着手したのは1990年代であり、無機合成化学分野での豊富な事業経験を生かしての参入となった。2000年に四酸化三コバルト(Co3O4)を出発原料としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)事業を開始、2002年に富士化学(株)よりニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNiCoAlO2)事業を引き継ぎ、2007年にカナダでは、H.C.Starck GmbHよりNi(OH)2/CoOx事業を継承し、戸田アドバンストマテリアルズInc.を設立した。2008年にはスピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)の事業化、同時にArgonne National Labとリチウムリッチのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li-Rich NCM)のライセンスを取得し、リチウムイオン電池用正極材料3成分系の事業化を迅速に行った。そして米国ミシガン州に工場建設を始め、2010年に伊藤忠商事<8001>と前駆体・正極材料製造のJVを立ち上げた。さらに2015年には欧州化学大手BASFと日本を拠点にリチウムイオン電池正極材料を展開するBASF戸田バッテリーマテリアルズ(BTBM)を立ち上げ、NCA、NCMなど様々な正極の研究開発、製造、販売を行うこととし、2017年にはハイニッケル系正極材料生産設備を大幅増強した。リチウムイオン電池用材料事業は、その多くをBASFとの合弁会社であるBTBM(BASFジャパン66%、同社34%出資)により運営しており、BTBMの2021年12月期の売上高は16,896百万円(前期比15.4%増)であった。なお、2022年7月20日に、生産能力を6万トンに引き上げることを発表している。利益面では小型リチウムイオン電池について、日本メーカーのシェアダウン、また車載対応では多額の先行投資、減損処理、投資損失、市況の乱高下などもあり、従来マイナスとして重しとなっていた感があったが、ここにきて世界的なEVの拡大などで売上が急拡大し、損益分岐点を超えてきたことで、利益寄与が本格的に高まる方向にある。

また、売上高はまだ小さいものの、着実に伸ばしつつあるのが成長著しいMLCC向け誘電体材料事業である。コンデンサは抵抗やコイルとともに、電子回路の基本である3大受動部品(受け取った電力を消費したり、貯めたり、放出する)の一つとなっている。ほとんどの電子機器に使用され、能動部品(供給された電気エネルギーを増幅したり、変換したり、整流したりする)を正しく動かすために必要不可欠な部品となっている。この中でセラミックコンデンサはコンデンサ全体生産額の8割近くを占めている。コンデンサの機能は電荷(電気)をため、直流電流は通さず交流電流は通す機能を持ち、電子回路の中で電荷(電気)の充放電、電圧を一定に保つ、ノイズ除去の役割を果たすことができる。現在、スマートフォン、自動車、家電など、あらゆる電子機器で利用が高まり、2021年度は7,700億円の生産額を誇る。セラミックコンデンサの主原料はチタン酸バリウムで、第2次世界大戦中に軍事目的で発見されたが、産業化で先陣を切ったのは村田製作所<6981>である。生産にあたってはチタン酸バリウムの合成、微細粉粒化、シート塗布、電極形成、チップパッケージの一連の工程があり、当時は日本のすり合わせ技術がないと製造が難しいという状況で、その後、太陽誘電<6976>、TDK<6762>など日系企業が基幹事業化に成功、サムスンが2000年代に入って本格参入するまでは日本の独断場製品であった。同社は2004年にチタン酸バリウムの製造設備を新設したことを機に、同分野へ本格参入したが、同社の同ビジネスの特徴は、その製造方法にある。チタン酸バリウムは従来、固相反応法といわれる原料を焼成する製法が主流で、村田製作所なども大半はこの製法で内製化している。なお日本化学工業、富士チタン工業(株)などは湿式反応と焼成を組み合わせた製法であるシュウ酸塩法を利用し、固相法に対して細かい粒度が得られることが特徴である。これらに対し同社は同社の持つ湿式合成技術を利用し、原料を高温・高圧下で反応させ、10nmまで微細な粒度を均一に制御できる水熱合成法を利用している。現在、セラミックコンデンサでは、小型化、大容量化、高誘電率を求められており、超微粒子チタン酸バリウムの需要が高まりつつある。

(2) 機能性顔料事業
機能性顔料事業は、主に「塗料」、「複写機/プリンター」、「環境」市場を事業フィールドとして製品展開を行っている。これまで塗料用顔料、複写機・プリンター向けトナー・キャリア用材料などを中心に拡大してきた事業である。顔料は、創業以来の事業であるが、最近では「塗料」市場においては横ばいが続いており、「複写機・プリンター」市場においては、ペーパーレス化、電子化などの影響で需要が減少しているものの、シェア拡大、化粧品顔料、透明酸化鉄など新製品群の拡大、また「環境」市場向けの土壌・地下水浄化材などで補い、売上を確保してきた。利益面では複写機・プリンター向けの構成比が下がったこともあり、利益率の低下を余儀なくされてきたとみられる。但し2022年3月期については売上が回復したほか、コロナ禍による影響が在宅勤務の増加によって、プリンターなどでホームユースが拡大したこともあり、収益が回復している。

なお、同社は事業を「自動車」「家電・通信機器」「塗料」「複写機/プリンター」「環境」の5つの事業フィールドに分け、特に「自動車」「家電・通信機器」の2事業フィールドでの成長を模索してきた。磁石材料やリチウムイオン電池用材料を中心に、全体として先行投資の効果が表れつつある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)


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配信元: フィスコ
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