日本情報クリエイトのニュース
日本情報クリエイト、創業来28年連続で増収を達成 2022年からの3ヶ年はプラットフォーム構築に注力
目次
米津健一氏(以下、米津):日本情報クリエイトの米津です。よろしくお願いいたします。本日は、まず事業概要、次に市場の成長性、そして現在我々が実行している3ヶ年計画、当社の特徴と競争優位性、直近の業績の振り返りと今期業績計画、という流れでご説明します。
Mission & Vision
米津:まず、ミッションとビジョンについてです。ミッションとしては「関わる全ての人をHAPPYに」を掲げ、また「テクノロジーで不動産領域に革新的プラットフォームを創造する」というビジョンを持って事業活動を行っています。
会社概要
米津:当社は1994年8月に設立し、現在29年目に入っています。従業員数は320名弱であり、営業拠点として全国29拠点で事業活動を行っています。事業内容は、DX推進など、不動産事業者向け業務支援システム及びサービスの提供を行っています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):本社は宮崎県にあるとのことですが、創業について詳しく教えてください。
米津:創業は宮崎県ですが、私は隣の県で生まれ育ちました。若い時は県外で仕事をしていましたが、やはり地元で創業したいと思い、生まれ育った地域でスタートしました。
業績の推移及び解約率
米津:業績の推移です。設立後29年目に入っているとお伝えしましたが、創業来28年連続で増収を達成しています。この背景として、我々はSaaS型で商品を提供していますが、こちらの解約率が0.5パーセントと低いことがあると思います。
不動産業界のDX化促進に向けてワンストップソリューションを提供
米津:我々の提供する商品・サービス及び強みについてご説明いたします。不動産業界のDX化を推進する中、我々は不動産業務の入口から出口までをワンストップで提供していることが最大の強みとなっています。
簡単に言いますと、不動産業者の物件の仕入れから集客、成約、入居中の管理、あるいはオーナーとのやりとりなど、不動産賃貸業を中心とした業務全般において、さまざまな商品をワンストップで提供しています。入口で無償のものを提供することでお客さまを獲得し、そして有償のものを提供するという流れが我々の特徴です。
プラットフォームにより不動産業務の全体最適化
米津:今、我々が掲げているのは「不動産業界に適切なプラットフォームを構築しよう」「プラットフォーマーになろう」という中期ビジョンです。我々は不動産事業者向けにシステムの提供を行っていますが、不動産取引においては、例えば、不動産ポータルサイト、家賃保証会社、保険会社など、不動産取引にまつわるさまざまなプレイヤーが出てきます。そこで、我々のシステムとデータを連携することにより、我々がプラットフォーマーの位置付けとなり、業界になくてはならない状態を作ろうと推進している状況です。
不動産業界で働く皆様にとってのHAPPY
米津:我々は不動産領域で事業を行っていますが、会社の存在意義として成し遂げたいのは、不動産業界及び消費者にハッピーになっていただきたいということです。
不動産事業者及び関連事業者にとっても、不動産取引は非常に煩雑です。このようなアナログ的なところから解放したいということと、正確性をより高めるために人的ミスを減少させ、生産性を向上させること、そして、サスティナブルとして紙資源から脱却していこうということで、「不動産業界をよりハッピーにしていこう、スムーズにしていこう」と考えています。
不動産取引を行う消費者の皆様にとってのHAPPY
米津:不動産取引には一般の消費者も登場します。不動産を借りるにしても買うにしても、やはり消費者が最良の物件とマッチングすることが重要です。不動産情報がアナログであると、どうしても情報量やリアルタイム性など、情報の提供に偏りがでてしまう面があります。我々が不動産業界のDXを推進することで不動産流通をよりスムーズにし、契約に関する作業もよりスムーズに行いたいと考えております。消費者がよい物件に出会い、取引がスムーズに行えるような取り組みを確実に成し遂げてまいります。
不動産DX推進により豊かなデジタル社会を
米津:我々の主たる事業である、不動産業界のDX化を推進することにより、賃貸も売買も含めた、不動産取引に関連する方々のハッピーを実現してまいります。
坂本:不動産情報がデジタル化されて業務が効率化すれば、消費者にとってもよい物件に出会えるようになるということでしょうか?
米津:おっしゃるとおりです。不動産情報は、ネットを見る、あるいは不動産業者に行くことで手に入りますが、世の中にある情報のすべてが入手できるかと言うとそうではありません。不動産情報、取引がアナログ情報であると、どうしても情報に偏りが生じてしまうため、DX化し、業者同士をデジタル情報で結びつけながら、消費者がよりよい物件に出会えるようにしていきたいと考えております。また、取引のスムーズさも重要であると考えておりますので、その両方をしっかりと対応していきたいと思います。
労働生産性改善に向けた需要増及び新規開業するデジタルネイティブ世代
米津:不動産業界の市場の成長性についてご説明します。スライド上側のグラフのとおり、不動産業界は非常にDXが遅れています。一般的な産業で2000年を100とした時、2019年は約104パーセントと、かなりDXが進んでいるのですが、不動産業のみでは81パーセントと、DXが進んでいない現状があります。
また、業者数の推移の過去データを見ると、毎年6,000社くらいの事業者が廃業し、6,000 社から7,000社の事業者が新たに生まれている状況です。デジタルネイティブ世代がこの業界に入ってきており、まさしくこれからDXが進むのではないかという市場環境になっています。
坂本:不動産業界はDXが遅れているということですが、その理由を教えてください。
米津:後ほどご説明しますが、不動産取引では、法律により「契約書は紙でなければいけない」「必ず印鑑を押さなければいけない」という状態でした。この法律は今年5月18日に改正され、電子書面での電子承認でもよいという状況になりましたが、これまで法律によってどうしてもアナログでなければならない状況であったことも理由の1つです。
また、書類や業務自体が煩雑なことも挙げられます。業務手順が業者ごとに異なるなど、統一性がないという状況もあります。
坂本:主な雛形がないということもありますよね。
米津:おっしゃるとおりです。
成長する不動産テック業界
米津:不動産テック業界の成長性がどのくらいあるのかについてです。スライドは矢野経済研究所が発表している内容です。市場規模予測についてですが、2020年度は6,110億円、2025年度には1兆2,461億円というデータが出ています。今後、不動産テック市場が成長するというデータが、矢野経済研究所から客観的に出されています。
坂本:不動産テック市場の現在と将来の市場規模について、今の御社が行っているビジネスはどのくらいにあたるのでしょうか? ビジネスチャンスがどのくらいあるのかなど、聞いている方もイメージしやすいのではないかと思います。
米津:スライドのグラフのとおり、市場規模予測は1兆2,461億円ですが、我々はBtoBの事業を行っているため、BtoB領域の2,445億円の部分が対象になります。この中にもいろいろなBtoBがありますが、我々が現時点で提供している範囲では、500億円から600億円くらいの市場であると捉えております。
3カ年成長戦略
米津:昨年、我々は3ヶ年の成長戦略を公表しており、現在取り組んでいる状況です。
3カ年成長戦略
米津:3ヶ年の成長戦略では、2022年から2024年までを3ヶ年とし、この期間はプラットフォームを構築していくステージとしています。また、その後はプラットフォーマーステージとして捉えています。
3カ年計画策定の背景
米津:なぜ3ヶ年を強調しているのかというと、先ほどもお伝えしたとおり、法改正による業界の意識の変化といった外部的な要因もあり、業界のDXが進むだろうと考えているためです。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、不動産事業者あるいは消費者においても、オンラインでの取引がどんどん増えています。このあたりもDX推進の追い風となっております。
坂本:DXを進めていくにあたり、法的なサポートといいますか、業務のサポートのようなものがあると飛躍的に進むのではないかと思います。このあたりについて教えてください。
米津:我々にとってプラスに働いていることの1つとして、IT導入補助金があります。これは業者がITを導入するにあたって国が補助金を出すというものですが、我々の商品はその対象です。そのため、お客さまが導入すると約半分が補助されます。最大450万円まで補助されますので、国から補助されるという面において、我々にとっては追い風であると思っています。
坂本:法改正などにより、コロナ禍前と比較して、DX化のスピードは足元では速くなっているのでしょうか? 現状を教えてください。
米津:コロナ禍前と比較すると、人と対面せずに取引したいという傾向がありますが、これは不動産取引も同様です。より人と会わずに物件情報を見る状況になっています。
契約も家賃保証も同様です。我々は入居申込なども提供していますが、これもスマートフォン上で行うなど、人と会わずにできるようになっています。そのため、不動産業者の意識もそうですが、コロナ禍前よりも消費者のDX化に対する意識が高まっていると思っています。
3カ年計画策定の背景
米津:自社の要因としては、ここがチャンスだと捉えています。商品においても、プラットフォーム化して一連のワンストップサービスが完成しましたので、これを広げていくタイミングであると思っています。また、先ほどお話ししたとおり、不動産DX市場において、どんどんニーズが高まっているため、攻めるチャンスであると思っています。
3カ年成長戦略 - 計画2年目以降 -
米津:3ヶ年成長戦略の業績計画についてです。1年目が終わり、2年目に入ったところですが、我々は6月が決算期であり、進行期の2023年6月期の計画は、売上高42億円、営業利益8.5億円となっています。前年対比では、売上高37.7パーセント増、営業利益70パーセント増として進めています。また、2024年6月期は売上高53億円、営業利益13.5億円という計画を立てています。
坂本:中計についてお話しいただきましたが、こちらは販路のM&Aの数字も入っているのでしょうか?
米津:この数字については、今後のM&Aは入っていない内容になります。
坂本:今後M&Aがある場合は、追加分により少し変わる可能性があるということでしょうか?
米津:おっしゃるとおりです。新たにM&Aを実施する際は、この数字にオンされていきます。こちらは現状の体制における今期・来期の計画となっています。
坂本:人員と拠点を増加させているというお話があったと思います。後ほど詳しいご説明があると思いますが、これはこの中計の段階で整ったという認識でよろしいでしょうか?
米津:準備は整っております。投資計画により昨年は少し利益を減らしております。
坂本:人員の獲得は先行投資のようなものになるのでしょうか?
米津:そのとおりです。前期は営業人員が倍増しました。拠点についても、11拠点に18拠点をプラスし、29拠点になっています。そのため、今期・来期を進めていく上での基本的な体制は整ったと思います。もちろん、今後もう少し強化していきますが、基本的には整ってきたという状況です。
坂本:採用された後は教育なども実施されると思いますが、そのあたりはだいたい終わっており、戦力化されている状況でしょうか?
米津:戦力化された部分もありますが、やはりまだ教育の継続が必要だと思っています。
坂本:そのあたりはまた後ほど人員のところでおうかがいしたいと思います。
当社の特徴と競争優位性
米津:3ヶ年計画を実現していく上での当社の特徴について、競争優位性も含めてご説明します。当社の特徴は5つあります。1つ目は、先ほどもお伝えしましたが、業務一気通貫の商品力があることです。2つ目は、今お話しした販売拠点数あるいは人員です。そして、3つ目はサポート力、4つ目は市場シェアです。我々はこの業界に20数年いますので、市場のシェアを継続して獲得できています。
また、長年のノウハウも蓄積されています。その証として、28年連続で増収を達成できたことと、低い解約率が実現できていることは、我々の競争優位性になると思っています。
坂本:20数年間この仕事を行っているというお話でしたが、いつ頃からDXのような商品を提供されていたのでしょうか? パソコンが普及していたのかなど、そのあたりを教えてください。
米津:この不動産業界に入った時期は、1995年、1996年になります。
坂本:パソコンが一般に普及し始めたくらいで、本当に一部しかなかった時代ですよね。
米津:おっしゃるとおり「Microsoft Windows 95」などが出た時代です。そこからインターネットが登場し、携帯電話、スマートフォンと、各テクノロジーの進化に合わせ、さまざまな商品をタイミングよく提供してきたことが1つの成長につながっていると思っています。
不動産業界のDX化促進に向けてワンストップソリューションを提供
米津:我々の3ヶ年の計画を達成していく上での強みについてです。先ほどもお伝えしたように、我々はワンストップソリューションとして、業務の入口から出口まで、幅広く業務の改善を行うための商品が整っています。部分的に使うこともできますが、ワンストップで使うとより効果を発揮します。
坂本:無償と有償のサービスがあると思います。後ほどお話しいただくと思いますが、入口となる「不動産BB」という無償のサービスは、どのくらいの方が使われているのでしょうか? また、有償のサービスについても教えてください。
米津:入口の業者間物件流通サービス「不動産BB」は無償で提供しており、現在2万事業者にお使いいただいています。その中から有償のサービスにクロスセル・アップセルできているところが4,000事業者です。
坂本:まだまだパイがありますね。
米津:おっしゃるとおりです。
当社のサービスが選ばれる理由
米津:商品の特徴としては、先ほどお話しした無償で提供しているサービスの中に、不動産情報が入っています。このデータを活用してホームページを作成したり、ポータルサイトにデータを出したりすることができます。そして集客・追客を行い、申込が入ったらWeb上で電子申込あるいはWeb内見などもできるようになっています。
当社のサービスが選ばれる理由
米津:今は「IT重説」ということで、重要事項の説明などもオンラインでできます。また、入居時の家賃の管理、入居者と不動産会社がやりとりを行うアプリケーションなど、すべてデータ連携を行っています。そのため、我々の商品を使うと賃貸業務などがよりスムーズに行えるということが、我々が選ばれる理由になっています。
坂本:いろいろなサービスを提供しているということをお話しいただきましたが、御社のサービスはパッケージで使えるものなのか、それとも1つ1つ契約が必要なのでしょうか? 契約体系について教えてください。
米津:サービス自体は各業務に応じており、例えば、集客のみ・管理のみなど、部分的に使うこともできます。また、各々のサービスをトータルで使うと連携できるのですが、入口から契約までを1つのパッケージにしたりなど、お客さまのニーズに合わせて提供しています。
坂本:いくつかのシステムを使えるようなパッケージもあるということですね。
ラインナップが非常に広く、不動産業務全般を網羅しているシステムをお持ちですが、競合はいるのでしょうか?
米津:スライドに記載のとおり、例えば、部分的に管理ソフトのみ、ポータルサイトとの連携のみ、VRのみなど、部分的に提供している会社は多数あります。トータルで行っているところもまったくないわけではありませんが、我々ほど長い年月をかけて行っているところはありません。そのため、現状はある程度優位に展開できています。
プラットフォーム事業の強み
米津:もう1つの特徴として、我々は「プラットフォームの構築」を中期ビジョンとして掲げ、推進しております。どういうことかというと、我々が提供しているDXを活用していただく時に、不動産取引で出てくるさまざまな業者とデータ連携できるようにします。不動産ポータルサイトでは、「SUUMO」や「HOME’S」などがあります。
また、現在37社の家賃保証会社と提携していますが、普通はFAXなど紙でやりとりするところを、我々の商品はお互いに不動産会社とデータ連携できるようにしています。金融機関ともデータ連携が行われていますし、保険会社など、さまざまなところとつながっています。
その結果、我々の仕組みの中で不動産取引が完結するよう、かなりのスピードで提携を進めています。スライドは、現在連携できている会社です。
地域密着型コンサルタントと顧客支援の徹底
米津:もう1つの特徴として、我々が非常に重要視していることが地域密着型のコンサルタントです。徹底的に顧客を支援することに取り組んでいます。我々が「営業人員・拠点を増やした」と言うと、「IT業界らしくない」「Webマーケティングによる販促などを行えるのではないか」など、いろいろ言われます。
もちろん、Webマーケティングは行っています。DMPやマーケティングオートメーションなど、できることはすべて行っています。しかし、結果的には、やはり直接お客さまと会い、お客さまの課題を解決することが重要だと思っています。
そのため、営業拠点をたくさん作り、お客さまを地域密着でフォローしています。直接フォローする部隊と、サポートセンターやカスタマーサクセスによる後方支援にも力を入れています。それにより、低い解約率を実現できています。
地域密着型コンサルタントと顧客支援の徹底
米津:先ほどお話しした地域密着型のコンサルタントということで、スライドに記載のように、29拠点に営業担当と現地のサポートを行うメンバーが常駐しています。
坂本:システムを提供するSaaSの企業群は、どちらかというと営業は広告などのインバウンドで行い、営業担当を減らした分をカスタマーサポートに割くかと思います。しかし、御社は全国に販売拠点を点在させ、地域密着型コンサルタントを置いてカスタマーサービスまで行い、手厚いサポート体制を敷きながら営業を行っています。この理由を教えてください。
米津:先ほどもお話ししたとおり、我々はSaaS企業のため、DMPやMAなどにも取り組んでいます。なぜ、それを地域密着で行っているかというと、不動産業者のIT化やDX化が遅れている背景として、これまではそれでどうにか成り立っていたため、別段変えなくてもよいという感覚の方もけっこう多いということがあります。
それを実際に変えるとどのようになるかを我々がしっかりとご説明し、納得してもらわなければ、なかなかDX化が進みません。これまでの20数年の経験の中で、自らネットで情報収集し、自ら契約することが少ないと感じています。
坂本:もともと直接ネットで契約しない業界だから、ということもあるかと思います。競合他社も同じ体制を敷かれているのでしょうか? それとも御社独自なのでしょうか?
米津:我々が一番拠点を持っています。「大阪や福岡にはあるが、10拠点もない」というところが多いと思います。
坂本:最近増やされたのは、やはり必要性があるからという判断なのでしょうか?
米津:我々も長年この業務を行っていますが、やはりお客さまの課題を直接聞き、直接コンサルティングしなければ、なかなか導入いただけません。こうすることで、お客さまも困っていることが解決できると思います。
坂本:当然、使うと非常によいもののため、解約率が低いということですね。
米津:そのとおりです。使っていただくと効果が出るため、解約率が低くなっています。
前期 | 業績ハイライト
米津:前期の業績の振り返りと進行期の業績計画についてご説明します。6月が決算月ですので、先日決算発表を行いました。前期の結果ですが、売上高は対前年16.7パーセント増の30億5,300万円、利益は前年割れして5億円となりました。今後の成長のための人員・拠点の強化などで少し減りましたが、5億円はどうにか達成できています。
前期 | 業績ハイライト(四半期推移)
米津:四半期単位の前年対比です。直近の第4四半期は、前年比でプラス26.8パーセントとなりました。人員を採用したものの、後半にどんどん成長し、業績につながっています。解約率は年間を通して0.5パーセントとなり、低位で安定している現状です。
増井麻里子氏(以下、増井):四半期の中で新型コロナウイルスの影響を受けたところはありますか?
米津:第3四半期を見てもらうと少し低くなっています。第3四半期は1月から3月なのですが、新型コロナウイルスが全国的に非常に広がりを見せました。お客さま側もそうですし、社内的にも感染者や濃厚接触者が出たりすることが若干ありました。
増井:解約率を低く抑えられている理由は何でしょうか?
米津:我々がしっかりとお客さまにコンサルタントし、なおかつ後方支援としてコールセンターやカスタマーサクセスで手厚くお客さまをフォローする体制ができています。こちらが実際の解約率の低さの理由になっています。
前期 |営業利益増減要因
米津:前期の売上の伸びと経費についてです。売上も順調に伸びましたが、それを上回る経費を使っています。戦略的に人員の増加および営業所の開設を行ったことと、M&Aの関連費用として9,800万円を使いました。今年初めてM&Aで関連会社を作りましたが、その費用がかさんだこともあり5億円となっています。
前期 |通期 ハイライト
米津:前期のハイライトです。営業人員を58名から113名に増やし、経費増となりました。
坂本:人員の件ですが、増員したのは新卒と中途のどちらが多いのでしょうか? また、採用した方のお仕事は大多数が営業コンサルタントなのでしょうか?
米津:増員については、営業のみしか解説していません。こちらはすべて営業コンサルタントのメンバーです。
坂本:どのような教育を行っているかについても教えてください。
米津:教育については、これまでの取り組みを活かしながら、さまざまなことを行っています。例えば、デモンストレーションのやり方や訪問時の注意点など、動画を使った教育をしています。また、成功体験などのナレッジの共有も、社内のツールを見ることによって新しいメンバーが自ら取りに行けるようにします。そのほかに、現場でのOJTなどもありますし、これまでのありとあらゆる経験を活かして取り組んでいます。
前期 |通期 ハイライト
米津:拠点については、昨年に先行投資として11拠点から29拠点に増やしています。
前期 |通期 ハイライト
米津:単独での商品開発も行っており、先ほどお話しした「電子契約サービス」もそうです。競合の会社も提供していますが、そちらは他社のものを活用しています。自社開発しているのは、業界では当社だけだと思っています。
坂本:これは全部イチから自社開発しているのでしょうか?
米津:おっしゃるとおりです。
坂本:確かに社歴も長く、作るものも積み上がっているということもありますし、利益率も高くなりますよね。
前期 |通期 ハイライト
米津:そのようなこともあり、パートナー企業との提携も進んでいます。例えば、先ほどの「電子契約サービス」の、センチュリー21・ジャパンへのOEM提供やSS Technologiesなどとの提携は、独自開発しているからこそできました。ほかにも物件や保険のデータ連携など、さまざまなものと連携できるようになり、1年間でかなり進みました。
前期 | M&Aの実施 リアルネットプロ社との経営統合
米津:大きなトピックスとしては、M&Aの実施ということで、先月にリアルネットプロと経営統合しました。ある意味、競合的な立ち位置にあった会社ですが、シナジーが出るように取り組んでいます。こちらはかなり大きな取り組みでした。
坂本:シナジーについてのお話ですが、この「リアプロ」を使っていた方が、御社のサービスをクロスセルしたりすると思います。一方で、こちらを使っていなかった会社はどのくらいあったのでしょうか? 今までアプローチできていなかったのは、競合のものを先に使っていたからだ、という考え方ですが、お願いします。
米津:統合後に突き合わせをした結果、「リアプロ」のお客さまで我々の商品を使っていない会社は約8,000社ありました。こちらに対しては、今後積極的に展開できる状況です。
前期 |プラットフォームの価値向上を実現
米津:先ほどお話ししたとおり、プラットフォームの価値向上が非常に進んでいる現状です。
2023年6月期 業績計画
米津:今期の計画と成長に向けた重要施策についてご説明します。売上高は対前年37.5パーセント増の42億円、営業利益は対前年69.7パーセント増の8億5,000万円と、大きく成長しようということで取り組んでいます。
商品戦略
米津:商品戦略としては、経営統合したリアルネットプロがあります。我々で言う業者間物件流通サービスの「不動産BB」を行っている会社です。こちらのお客さまに対して、我々のホームページ作成ツール、あるいは「電子入居申込」「電子契約」「賃貸革命」などとデータ連携することによって、リアルネットプロの8,000社のお客さまが我々の商品でクロスセルできるようになることが非常に重要です。商品戦略として、この連携性を高めることを急ピッチで進めています。
営業戦略
米津:営業戦略としては、電子入居申込から電子契約に至るまでの商品ラインナップを完成させています。今まさしく行われた法改正を追い風に、こちらをより最短で広めていくことを考えています。
そのためには営業人員のスキルアップが必然です。先ほどもお伝えしたとおり、研修などのさまざまな方法で教育を実施し、さらに営業力を高めていく人材育成を行っています。
営業戦略
米津:すでに営業戦略は始まっています。「リアプロ」というサービスを当社の営業が販売していますが、あるいはその逆もしかりです。先ほどお伝えしたデータ連携ができることによって、「リアプロ」のユーザーに我々の商品をより展開できるようになっていくという流れです。
坂本:営業についておうかがいします。営業の方は、御社のサービスを一気通貫してお客さまに提供していくのか、それとも前段階のものと後段階のものに分かれているのか教えてください。
米津:基本的に営業担当は不動産会社に訪問しており、課題は集客面や管理面など各会社によってさまざまです。お客さまの課題解決のために、すべてのサービスを提案できる人材作りを基本としていますが、入ってすぐに全般的に覚えるのは大変厳しいです。
坂本:それでは、ドアノック商品のような導入しやすい商品を紹介していくことになりますか?
米津:そうならざるを得ませんが、我々の一番の理想は、お客さまから課題を的確にヒアリングし、最も課題を解決できる当社の一気通貫のサービスを適宜提案することだと思っています。
坂本:営業拠点も大変広がっており、人口のカバー率も相当なものになっていると思います。現状では、代理店業務として保険や家賃保証の紹介などもされていると思いますが、御社の今の営業のリソースやネットワークを活かし、他にも事業を広げていくお考えはあるのでしょうか?
米津:営業も多くいますので、紹介するものをさらに広げていくことも確かに考えられます。しかし、今は当社の製品をマーケットにより一層浸透させていくプラットフォーム作りのフェーズだと思っています。ある一定期間はこの一気通貫のサービスで、より多くのマーケットを取っていくことを中心にした計画で進めています。
データ活用 | リアルネットプロ社とのシナジー
米津:将来、さらに成長していくために、データを活用していきます。我々は提供するサービスに毎日届く大量のデータを適切に蓄積していますが、物件情報のデータもその1つです。また、賃貸管理のソフトウェアも持っています。こちらには入居者の属性データなどの個人情報もあります。我々が取得できる範囲は限られていますが、そのようなデータなども蓄積しています。
また、今回経営統合したリアルネットプロがサービスとして提供している「リアプロ」にも大変多くの物件情報があります。今後はこちらを使ったサービスの提供を行っていく予定です。
今は物件情報を使ったAI物件の査定も着実に進めています。まだ明確な時期はお伝えできませんが、今期中には確実に提供できると思います。ほかにも不動産のデータベースを使った商品や統計サービスなど、不動産業者に必要なサービスを今後も提供していきたいと思っています。
質疑応答:人口減少における市場拡大の見込みについて
坂本:「今後、人口が減少していく中で本当に市場の拡大を見込めるのですか?」というご質問です。
米津:我々も気にかけている点ですので、いろいろと調査しています。みなさまもご存じのとおり人口は減っていますが、賃貸市場の世帯数は2028年まで増えると言われています。統計データがあるため、まずはこの点でマーケットの拡大を見込んでいます。
また、不動産業界はDX化がほとんど進んでいません。そのため、人口が減って業界が少しシュリンクしたとしても、マーケットは十二分にあるととらえています。
そして、不動産管理会社の伸長も見込んでいます。管理会社は賃貸物件をオーナーから預かり、入居中のクレームの受付や家賃回収などの管理をしています。日本にある1,800万戸の賃貸物件のうち、1,000万戸は不動産管理会社が管理し、残り800万戸をオーナーが自主管理しています。
しかし、800万戸もあるオーナー管理の賃貸物件は、年々不動産会社に流れています。なぜかというと、オーナーは自ら家賃回収や掃除など、さまざまなことをしていますが、「そんなものはめんどくさいよ」ということで、オーナーが世代交代する時に物件が不動産会社に流れています。
坂本:少しお金を支払えば管理してくれますし、引き継いだ時にはローンが減っている可能性もありますよね。
質疑応答:DX推進による効率化について
増井:「DX推進でどのくらいの効率化が実現できますか?」というご質問です。例えば、「これまで2時間かかっていたが、30分で終わるようになった」という利用時間削減の事例はありますか?
米津:我々は一気通貫でさまざまなことを行っているため、どの業務もある程度効率化できますが、わかりやすい例では、家賃の入金管理があります。家賃が通帳に振り込まれると、そのデータをオンライン上で銀行から取得し、「賃貸革命」という商品に取り込んでマッチングをかけます。すると、「ここの家賃が入金になった」と自動で処理して集計され、オーナーにいくら振り込めばよいかがわかります。正確性・効率性が非常に上がっています。
また、法改正により、家にいながら重要事項説明を受け、契約書を交わすことができるため、今後は入居契約をする時に、自宅からスマートフォンで入居申込や家賃保証会社と契約することができます。このように、契約行為においても今までのアナログなやりとりがすべてなくなり、非常に効率化しており、すでによろこびの声もいただいています。
質疑応答:DX化の効果について
坂本:「今回の法改正を含め、過去最高の売上更新や増収増益などの御社の好業績は、DX化の効果が浸透しているからですか?」というご質問です。
米津:おっしゃるとおり、DX化が浸透しているからです。今までお使いにならなかったお客さまにご利用いただき、我々も商品のラインナップを増やしていますので、これまで部分的にお使いのお客さまにも新たな商品をクロスセルすることで、1社あたりのARPU(顧客単価)も上がってきています。新規獲得と既存のお客さまに対する追加商品のクロスセルが順調に行われているということだと思います。
質疑応答:DX化の効果における生産性と今後の賃金について
坂本:「不動産業界の従業員の賃金は一般的に高いとされています。歩合制の部分もあるからだと思っていますが、このDX化の効果で生産性は上がっていますか? また、今後も賃金は上昇しますか?」というご質問です。
米津:DX化を進めている会社は効率性が上がることで集客も増えるため、結果として好業績になっているお客さまの例もたくさんあります。賃金については各社の方針もあるためなんとも言えませんが、DXに取り組んでいる会社であれば、ある程度高収入にはなっていくのではないかと思います。
質疑応答:リノベーションなどへのかかわりについて
坂本:「不動産の価値向上、リノベーションなどにはどのようにかかわっているのですか?」というご質問です。おそらく間接的には効率化していると思いますので、このあたりも含めて教えてください。
米津:物件の価値向上ということだと思いますが、リノベーションに関しては、我々は現段階ではかかわっていません。しかし、今後、物件が新しく建つよりも古い物件のリノベーションでの価値提供などは考えられると思います。
坂本:リノベーションする物件を情報提供していた場合は、間接的にかかわっているのではないですか?
米津:そのとおりですね。しかし、今はハード面の価値提供よりもソフト面の価値提供が非常に重要だと思っています。ソフト面において、我々は入居者アプリ「くらさぽコネクト」を持っています。これは入居者と不動産会社をつなぐアプリであり、スマートフォンで近隣の情報や生活情報などを見ることができます。この物件に住むことによるソフト面での価値提供を今後広げていきたいと思っています。
質疑応答:不動産業界における意義と役割について
坂本:「不動産のベストマッチングは不動産業界全体で横断的に進歩しているのではないですか? 御社の意義や役割はどこにありますか?」というご質問です。
米津:今までは業者同士で情報を共有していました。そこで、我々がその間に入ることにより、例えばA社とB社しか導入していなかったものが、結果的にC社にも情報が届きます。我々のネットワークの中に入ると、今まで得られなかった情報をその不動産会社で得られるということが非常に重要な役割だととらえています。
今、我々のネットワーク上で物件情報を出す方が急速に増えています。我々のサービスの価値も上がりますし、結果としてベストマッチングするための業界の情報増加が進んでいくと思っています。
質疑応答:創業からこれまでで一番苦労したことについて
坂本:「創業からこれまでで一番苦労したことは何ですか?」というご質問です。
米津:創業当初に苦労した点は、信用のなさです。実績を積んでいく過程では、実績がないことによる信用のなさに大変苦労しました。それは実績を積んでいくことによって大丈夫になりましたが、非常に大きなことでした。
質疑応答:今後飛躍させたいDXの内容について
坂本:「今後、飛躍させたいDXの内容は何かありますか?」というご質問です。ほぼ網羅されていると思いますが、それ以外の部分や深く掘り下げたい部分などがあれば教えてください。
米津:不動産会社のDXはまだ進んでいないと言われていますが、我々が提供しているものについては、足元では十分効率化され、売上アップに貢献しています。しかし、AI物件査定やデータを活用したロジカルな展開を不動産会社に提案する時に、不動産会社がお客さまにロジカルに提供できるようなバックデータを提示することが、今後は非常に重要な価値となります。我々は多くのデータを持っているため、そのあたりについては常にチャレンジしていきたいと思っています。
坂本:それは今の御社のもので大丈夫ということでしょうか? 外部から持ってきたほうがよいということはありますか?
米津:両方あると思います。当社のものと外部からと、いろいろなところと連携する必要があると思います。
質疑応答:「賃貸革命」の次期バージョンについて
坂本:「次期バージョンがどのくらい使いやすいものになりますか?」というご質問です。御社の主力商品はいったいどのようなものなのかも含めてお願いします。
米津:我々には一気通貫のさまざまな商品があるとお話ししましたが、その中で長きにわたり売上の面で安定して一番稼いでいるのが、賃貸管理の「賃貸革命」という商品です。
坂本:「賃貸革命」はバージョンアップしており、スライド44ページの下部にも載っていましたよね。
米津:そのとおりです。ご質問は、その「賃貸革命」がバージョンアップするとどのくらい使いやすいものになるのか、ということかと思います。
坂本:次のバージョンに向けて、入れたい機能や改善している部分などについてうかがいたいのだと思います。
米津:これはオープンにしていない情報のため、詳細はお伝えできないのですが、これまでのUI面を改善したいと思っています。今利用されているデバイスはパソコンよりもスマートフォンやタブレットですので、スマートフォンなどでも入力できるように改善していくことはマストで行っていきたいと思っています。ほかにもいろいろな機能があるのですが、この場ではお伝えできないため、今後のリリースをお待ちください。
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