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*14:46JST プロパスト Research Memo(6):2024年5月期は、期初計画・修正計画を上回る大幅な増収増益
■業績動向
1. 2024年5月期の業績概要
2024年5月期の日本経済は、一部に足踏みも見られるが、緩やかに回復している。ただ、プロパスト<3236>が属する不動産業界においては、弱含みの動きが見られる。先行指標となる新設住宅着工戸数の季節調整済み年率換算値は2024年4月が880,000戸(前月比15.8%増)と、4ヶ月ぶりの増加に転じた。しかし、首都圏マンションの初月契約率は5月には56.0%に低下し、好不況の分かれ目とされる70%を大幅に下回って、2023年1月以来の低水準になっている。
このような状況の中、同社は、賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却及び分譲開発事業における個別分譲販売を進めてきた。この結果、2024年5月期の売上高は23,301百万円(前期比16.4%増)、営業利益3,056百万円(同19.5%増)、経常利益2,595百万円(同23.7%増)、当期純利益1,820百万円(同16.5%増)と大幅な増収増益決算となった。特に、当期純利益は12期連続の増益を記録したのが注目される。
前期決算発表時の期初予想比では、売上高はシノケンリートへの販売が計画を下回って4.1%減であったが、営業利益は71.9%増となった。また、2024年1月に発表した修正予想比でも、売上高は0.1%増、営業利益は13.2%増の好決算であった。大幅増益となった主因は、賃貸開発事業において、当初は見込んでいなかった大型物件が完成と同時に富裕層、ファンド、ワンルーム業者などに幅広く売却できたことによる。
以上の結果、収益性では売上総利益率はやや低下したものの、経営努力による販管費の減少もあって、営業利益率及び経常利益率はさらに上昇した。また、ROE(自己資本当期純利益率)19.1%、ROA(総資産経常利益率)8.3%と、2024年3月期のプライム・スタンダード・グロース市場の不動産業平均のROE8.8%、ROA4.0%を上回っている。ROEについては自己資本比率が不動産業平均をやや下回っている影響があるものの、収益性は着実に改善している。こうした好決算は、経営環境や市況に応じて注力する事業を柔軟に変える、同社の経営戦略の成果であると評価できる。
セグメント別では、分譲開発事業は、ガレリア ドゥエル神田岩本町の52戸全戸の引き渡しが完了した結果、売上高は3,755百万円(前期は売上高なし)、営業利益は443百万円(前期は3百万円の損失)に回復し、営業利益率は11.8%であった。また、売上高は会社全体の16.1%、営業利益でも10.3%を占めた。前期には、売上計上する引き渡し物件がなかった一方、売却済の物件に係る追加工事費用が発生したことから、僅かながら営業損失を計上している。同事業では、首都圏市場全体で地価や建築費が上昇し販売価格が高くなり、土地の取得が難しくなったことや、高い水準での収益確保が難しくなったことから、近年は同社全体に占める売上高・営業利益のウェイトは低下している。
賃貸開発事業では、浅草橋7プロジェクト、南馬込3プロジェクト及び千鳥プロジェクト等の19プロジェクトを売却した(前期は15プロジェクト)。その結果、売上高は17,226百万円(前期比30.5%増)、営業利益は3,524百万円(同21.4%増)と大幅な増収増益となった。売却物件のエリアが都心部中心という地域優位性や商品企画が投資家から評価され、また物件が大型化したことも好業績につながった。この結果、同事業は、売上高で会社全体の73.9%、営業利益でも81.6%を占め、営業利益率は20.5%と引き続き高水準を維持し、同社の好業績をけん引している。個人の相続税対策として都心の優良物件に対する富裕層のニーズが強いことを示すものであるが、投資ファンドやワンルーム業者による大型物件の購入も多かった。
バリューアップ事業では、上大崎プロジェクト、豪徳寺プロジェクト及び東麻布2プロジェクト等の5物件を売却したが、販売棟数が前期の11棟から減少した結果、売上高は2,320百万円(前期比66.0%減)、営業利益は350百万円(同63.1%減)と大幅な減収減益となった。賃貸開発事業が計画以上の好業績であったことから、バリューアップ事業の売却を翌期に回したためである。その結果、売上高は会社全体の10.0%、営業利益は8.1%に縮小した。同社では、引き続き付加価値が見込める物件の仕入及び売却を続けており、人気のある場所の優良物件を厳選して仕入れている。営業利益率は15.1%(同1.2ポイント上昇)と、安定して推移している。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2024年5月期の資産合計は、前期末比937百万円増の31,888百万円となった。これは主に、借入の返済や手元資金での仕入れを推進したことにより、現金及び預金が2,363百万円減少したものの、業績の原資となる仕入を推進したことから、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて3,207百万円増加したことによる。負債合計については、前期末比742百万円減の21,440百万円となった。これは主に、保有物件の売却や借入金の返済を積極化したことから、借入金(長期借入金と短期借入金の合計)が344百万円減少したことによる。純資産合計については、前期末比1,680百万円増の10,447百万円となった。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が1,751百万円増加したことによる。
利益の積み上げにより、自己資本比率は32.5%(前期比4.5ポイント上昇)と、中期的目標としていた30%台に達した。その結果、2024年3月期のプライム・スタンダード・グロース市場に上場する不動産業平均の33.3%に迫っており、同社の財務の安全性はさらに改善している。今後も自己資本30%台を確固たるものにし、厳しい経営環境下でも生き残れる会社となることを目指している。また、D/Eレシオ(負債資本倍率)は1.96倍(同0.42ポイント低下)、流動比率も261.5%(同52.1ポイント上昇)で、短期的な資金繰りに困らない十分な支払い能力を確保している。こうした強固な財務内容は、不動産の仕入などの事業面や金融機関からの借入において有利に働くと考えられる。
現金及び現金同等物の2024年5月期末残高は、前期末より2,283百万円減少し、2,946百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により支出した資金は1,882百万円となった。これは、主に税引前当期純利益を2,610百万円獲得したものの、仕入の推進により棚卸資産が3,208百万円増加したことに加え、売却に伴い前受金が416百万円減少し、法人税等の支払いが871百万円発生したことによる。投資活動により獲得した資金は75百万円となった。これは、主に定期預金の預入により94百万円の支出が発生した一方で、定期預金の払戻しにより178百万円を獲得したことによる。財務活動により支出した資金は480百万円となった。これは、主に新規物件の取得に伴い、借入金を17,793百万円獲得した一方で、保有物件の売却や借入期限の到来に伴う借入金返済により18,136百万円の支出が発生したことによるものである。
以上から、企業が生み出した利益の中で、自由に使える資金を示すフリー・キャッシュ・フローは、前期末より2,044百万円減少して-1,807百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SO>
1. 2024年5月期の業績概要
2024年5月期の日本経済は、一部に足踏みも見られるが、緩やかに回復している。ただ、プロパスト<3236>が属する不動産業界においては、弱含みの動きが見られる。先行指標となる新設住宅着工戸数の季節調整済み年率換算値は2024年4月が880,000戸(前月比15.8%増)と、4ヶ月ぶりの増加に転じた。しかし、首都圏マンションの初月契約率は5月には56.0%に低下し、好不況の分かれ目とされる70%を大幅に下回って、2023年1月以来の低水準になっている。
このような状況の中、同社は、賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却及び分譲開発事業における個別分譲販売を進めてきた。この結果、2024年5月期の売上高は23,301百万円(前期比16.4%増)、営業利益3,056百万円(同19.5%増)、経常利益2,595百万円(同23.7%増)、当期純利益1,820百万円(同16.5%増)と大幅な増収増益決算となった。特に、当期純利益は12期連続の増益を記録したのが注目される。
前期決算発表時の期初予想比では、売上高はシノケンリートへの販売が計画を下回って4.1%減であったが、営業利益は71.9%増となった。また、2024年1月に発表した修正予想比でも、売上高は0.1%増、営業利益は13.2%増の好決算であった。大幅増益となった主因は、賃貸開発事業において、当初は見込んでいなかった大型物件が完成と同時に富裕層、ファンド、ワンルーム業者などに幅広く売却できたことによる。
以上の結果、収益性では売上総利益率はやや低下したものの、経営努力による販管費の減少もあって、営業利益率及び経常利益率はさらに上昇した。また、ROE(自己資本当期純利益率)19.1%、ROA(総資産経常利益率)8.3%と、2024年3月期のプライム・スタンダード・グロース市場の不動産業平均のROE8.8%、ROA4.0%を上回っている。ROEについては自己資本比率が不動産業平均をやや下回っている影響があるものの、収益性は着実に改善している。こうした好決算は、経営環境や市況に応じて注力する事業を柔軟に変える、同社の経営戦略の成果であると評価できる。
セグメント別では、分譲開発事業は、ガレリア ドゥエル神田岩本町の52戸全戸の引き渡しが完了した結果、売上高は3,755百万円(前期は売上高なし)、営業利益は443百万円(前期は3百万円の損失)に回復し、営業利益率は11.8%であった。また、売上高は会社全体の16.1%、営業利益でも10.3%を占めた。前期には、売上計上する引き渡し物件がなかった一方、売却済の物件に係る追加工事費用が発生したことから、僅かながら営業損失を計上している。同事業では、首都圏市場全体で地価や建築費が上昇し販売価格が高くなり、土地の取得が難しくなったことや、高い水準での収益確保が難しくなったことから、近年は同社全体に占める売上高・営業利益のウェイトは低下している。
賃貸開発事業では、浅草橋7プロジェクト、南馬込3プロジェクト及び千鳥プロジェクト等の19プロジェクトを売却した(前期は15プロジェクト)。その結果、売上高は17,226百万円(前期比30.5%増)、営業利益は3,524百万円(同21.4%増)と大幅な増収増益となった。売却物件のエリアが都心部中心という地域優位性や商品企画が投資家から評価され、また物件が大型化したことも好業績につながった。この結果、同事業は、売上高で会社全体の73.9%、営業利益でも81.6%を占め、営業利益率は20.5%と引き続き高水準を維持し、同社の好業績をけん引している。個人の相続税対策として都心の優良物件に対する富裕層のニーズが強いことを示すものであるが、投資ファンドやワンルーム業者による大型物件の購入も多かった。
バリューアップ事業では、上大崎プロジェクト、豪徳寺プロジェクト及び東麻布2プロジェクト等の5物件を売却したが、販売棟数が前期の11棟から減少した結果、売上高は2,320百万円(前期比66.0%減)、営業利益は350百万円(同63.1%減)と大幅な減収減益となった。賃貸開発事業が計画以上の好業績であったことから、バリューアップ事業の売却を翌期に回したためである。その結果、売上高は会社全体の10.0%、営業利益は8.1%に縮小した。同社では、引き続き付加価値が見込める物件の仕入及び売却を続けており、人気のある場所の優良物件を厳選して仕入れている。営業利益率は15.1%(同1.2ポイント上昇)と、安定して推移している。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2024年5月期の資産合計は、前期末比937百万円増の31,888百万円となった。これは主に、借入の返済や手元資金での仕入れを推進したことにより、現金及び預金が2,363百万円減少したものの、業績の原資となる仕入を推進したことから、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて3,207百万円増加したことによる。負債合計については、前期末比742百万円減の21,440百万円となった。これは主に、保有物件の売却や借入金の返済を積極化したことから、借入金(長期借入金と短期借入金の合計)が344百万円減少したことによる。純資産合計については、前期末比1,680百万円増の10,447百万円となった。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が1,751百万円増加したことによる。
利益の積み上げにより、自己資本比率は32.5%(前期比4.5ポイント上昇)と、中期的目標としていた30%台に達した。その結果、2024年3月期のプライム・スタンダード・グロース市場に上場する不動産業平均の33.3%に迫っており、同社の財務の安全性はさらに改善している。今後も自己資本30%台を確固たるものにし、厳しい経営環境下でも生き残れる会社となることを目指している。また、D/Eレシオ(負債資本倍率)は1.96倍(同0.42ポイント低下)、流動比率も261.5%(同52.1ポイント上昇)で、短期的な資金繰りに困らない十分な支払い能力を確保している。こうした強固な財務内容は、不動産の仕入などの事業面や金融機関からの借入において有利に働くと考えられる。
現金及び現金同等物の2024年5月期末残高は、前期末より2,283百万円減少し、2,946百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により支出した資金は1,882百万円となった。これは、主に税引前当期純利益を2,610百万円獲得したものの、仕入の推進により棚卸資産が3,208百万円増加したことに加え、売却に伴い前受金が416百万円減少し、法人税等の支払いが871百万円発生したことによる。投資活動により獲得した資金は75百万円となった。これは、主に定期預金の預入により94百万円の支出が発生した一方で、定期預金の払戻しにより178百万円を獲得したことによる。財務活動により支出した資金は480百万円となった。これは、主に新規物件の取得に伴い、借入金を17,793百万円獲得した一方で、保有物件の売却や借入期限の到来に伴う借入金返済により18,136百万円の支出が発生したことによるものである。
以上から、企業が生み出した利益の中で、自由に使える資金を示すフリー・キャッシュ・フローは、前期末より2,044百万円減少して-1,807百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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