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―インバウンド需要の対応急務、東証の英文開示義務化も追い風に―
幅広い業種で多言語対応のニーズが一段と高まっている。背景には経済のグローバル化が進むなかで企業を取り巻く国際ビジネス環境が大きく変化していることに加え、円安効果などによるインバウンド(訪日外国人)需要の拡大、外国人労働者の受け入れなどによる在留外国人の増加が挙げられる。また、東京証券取引所が2025年4月からプライム市場の上場企業に対して重要情報の英文開示を義務付ける予定としていることもあり、関連銘柄に目を配っておきたい。
●外国人増加で高まる需要
日本と世界各国との国際交流の機会が増えるなか、特に多言語対応が重要視されているのが宿泊・観光・飲食業界だ。日本政府観光局(JNTO)が19日に公表した2月の訪日外客数(推計値)は、前年同月比89.0%増の278万8000人と9ヵ月連続の200万人超え。新型コロナウイルス流行前の19年2月を7.1%上回り、同月として過去最高となった。うるう年の影響で日数が1日多かったほか、昨年は1月であった旧正月(春節)が2月中旬となったことが寄与しており、訪日外国人の受け入れ態勢を整えることが求められている。
また、日本に住む外国人も増加している。出入国在留管理庁によると、23年末時点の在留外国人数は341万992人と22年末から33万5779人増加し、過去最高を更新。内訳は中長期在留者数が312万9774人、特別永住者数が28万1218人で、国籍別では中国が最も多く、次いでベトナム、韓国、フィリピン、ブラジルとなっている。在留外国人が安心して暮らすためには、生活に関わるルールやサービスの多言語対応が必要となる。
加えて、東証は2月26日に「プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備について」を公表し、重要な会社情報について英文開示の努力義務が定められるとともに、速報性が求められる決算情報及び適時開示情報については英文開示を義務化するとした。適用時期については、25年4月1日以後に開示するものから適用するとし、所定の書面を提出することで1年間の猶予が認められるとしている。
このほかにも多言語対応が求められるケースは今後ますます増加することが予想され、関連企業のビジネス機会は更に拡大しそうだ。
●重要な役割を果たす銘柄群
翻訳センター <2483> [東証S]は翻訳 ・通訳をはじめとしたさまざまな言語サービスを提供し、顧客のグローバル展開をサポート。特許明細書や医薬品申請資料、技術資料、開発文書、契約書、訴訟資料など多様な依頼を受けている。2月8日に公表した24年3月期第3四半期累計の連結営業利益は販管費の増加から前年同期比6.9%減の5億7800万円にとどまったが、主力の翻訳事業では特許分野や金融・法務分野の受注が好調。3月13日には今期の期末一括配当を従来計画比15円増額の65円(前期は45円)にすると発表した。
ソーシャルワイヤー <3929> [東証G]はプレスリリース配信代行の大手で、クラウド翻訳サービス「TRANSMART(トランスマート)」なども運営している。2月9日に公表した24年3月期第3四半期累計の連結営業損益は4800万円の赤字(前年同期は2億600万円の赤字)となったが、直近の23年10-12月期に限れば1500万円の黒字に浮上。デジタルPR事業で1社あたりの取引単価が上昇したことなどが寄与した。
ソースネクスト <4344> [東証P]は3月8日、人工知能(AI)通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」を展開する子会社のポケトークが25年中の株式上場を目指して準備を開始したと発表。また、同月14日には同社の孫会社にあたる米ポケトークの2月度単月の実績が初の営業黒字化を達成したことも明らかにしている。
エーアイ <4388> [東証G]は音声合成エンジン及び音声合成に関するソリューションを提供しており、外国語対応ナレーション作成ソフト「AITalk International」などを展開している。足もと業績は堅調で、2月5日に公表した24年3月期第3四半期累計の単独営業損益は5000万円の黒字(前年同期は600万円の赤字)で着地。今後は米セレンス
テリロジーホールディングス <5133> [東証S]はサイバーセキュリティーソリューション、各種の情報通信技術(ICT)サービスやデジタルトランスフォーメーション(DX)テクノロジーなどを提供。また、多言語及びインバウンドソリューションも展開している。2月14日に公表した24年3月期第3四半期累計の連結決算は、営業損益が9300万円の黒字(前年同期は6900万円の赤字)で着地。セキュリティー部門が伸びたほか、ソリューションサービス部門では多言語リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」がインバウンド需要を追い風に契約件数が増加傾向にあるという。
メタリアル <6182> [東証G]は専門文書AI翻訳の「T-400」や「T-3MT」、音声AI翻訳の「オンヤク」などのサービスを展開するAI事業が好調。法人向け専門翻訳サービスでは官公庁、大手企業を含め8000社との取引実績があり、英語・中国語をはじめフランス語・ドイツ語・タイ語・ベトナム語など30以上の言語に対応している。1月12日には24年2月期通期の連結営業利益予想を従来の6億1100万円から7億3700万円(前の期比43.1%増)に上方修正しており、4月15日に発表を予定する通期決算に期待がかかる。
●宝&COなどにも注目
これ以外では、あらゆるドキュメントを多言語に翻訳するCDS <2169> [東証S]、インバウンドプロモーションを手掛けるアウンコンサルティング <2459> [東証S]、多言語コンタクトセンターを展開するインバウンドテック <7031> [東証G]、マニュアル翻訳などを行うクレステック <7812> [東証S]、通訳・翻訳のトータルソリューションを提供するグループ会社を持つTAKARA & COMPANY <7921> [東証P]などにも注目したい。
また、直近ではSCSK <9719> [東証P]が21日、米ノウビフォーが提供する多言語に対応したセキュリティー意識向上トレーニングプラットフォーム「KnowBe4(ノウビフォー)」の国内代理店契約を締結し、販売を開始すると発表している。
株探ニュース
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