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―モバイルオーダーや配膳ロボットなど急速に普及、関連企業のビジネスチャンス広がる―
コロナ禍明け以降、快走を続けているようにみえる外食産業だが、一方で倒産件数が増加するなど業界を取り巻く環境に変化が起こり始めている。食材価格の高騰や人手不足、賃上げなどの課題が噴出しており、収益を確保するのが難しくなっているといわれているが、一方でこれらを解消するためにロボットやDXを導入するケースも加速している。業界の危機を救うこれらに関連した企業のビジネスチャンスは今後盛り上がりをみせそうだ。
●外食売上高は31カ月連続前年上回る
日本フードサービス協会(東京都港区)が7月25日に発表した協会会員社を対象とした6月度の外食売上高によると、全店ベースの売上高は前年同月比12.4%増と31カ月連続で前年実績を上回った。前年より土曜日、日曜日がそれぞれ1日多かったことや、梅雨前線の停滞で全国的に梅雨入りが遅く、雨天日が少なかったことで街の人出が増えたことが寄与した。また、訪日外国人客の需要も変わらず堅調だった。
2年半以上にわたり前年の売上高を上回る外食産業だが、同協会によると、終わりの見えない物価高騰のなかで値頃感のある商品へ移行する消費者が増え、実質消費支出は減少傾向にあるとしている。コロナ禍から順調に回復してきた外食産業だが、ここにきて業界を取り巻く環境に少しずつ変化が起こりつつある。
●倒産件数は23年度に過去最多を記録
既にその兆しは中小飲食店の倒産という形で表れている。
帝国データバンク(東京都港区)が今年4月に発表した「2023年度『飲食店』の倒産動向調査」によると、23年度の飲食店の倒産は、前年度比56.0%増の802件となり、過去最多となった。なかでも居酒屋や中華料理・ラーメン店などの倒産が多いという。
19年度にそれまでの最多である784件にまで増えた飲食店の倒産は、コロナ禍でのゼロゼロ融資や休業・時短営業に伴う協力金などによって、22年度には514件にまで減少した。ただ、22年度以降の光熱費や各種食材の価格高騰、人手不足の深刻化、賃上げ対応など新たな経営課題が噴出したことで、採算が確保できずに事業継続を断念する事業者が急増しているという。
●深刻化する人手不足
特に深刻なのは人手不足だ。外食業界はコロナ禍前から慢性的な人手不足の問題があったが、コロナ禍では営業自粛や営業時間の短縮があり、人員削減に踏み切った飲食店も少なくはない。そうして一度流出してしまった人材は戻らない傾向があり、人手不足につながっている。
厚生労働省が7月30日に発表した一般職業紹介状況(24年6月分)によると、求人数を求職者数で割った有効求人倍率(季節調整値)は1.23倍だったが、なかで飲食物調理従事者は2.67倍、接客・給仕職業従事者は2.89倍と、人材の確保が難しい状況が見て取れる。
こうした状況のなか、近年注目されているのが「飲食店DX」や「レストランテック」と呼ばれる飲食店のデジタル化だ。インターネットやロボット技術などを活用し、飲食店におけるサービスの改善や運営上のサポートを行うというもので、参入企業も増加している。
●モバイルオーダー関連に注目
まず、最近目にする機会が増えたモバイルオーダーに関連する企業に注目したい。モバイルオーダーとは、スマートフォンなどを使ってスタッフが接客することなく注文を受け付けるシステムだ。
カカクコム <2371> [東証P]は、グルメサイト「食べログ」の運営に加えて、「食べログオーダー」を展開する。「食べログ」アプリの知見を生かしたUI(ユーザーインターフェイス)が特徴で、モバイルオーダー定着化を促すほか、「食べログノート」と連携することで、予約管理の工数削減や集客力の向上が期待できるという。
ぐるなび <2440> [東証P]はグルメ情報サイト「ぐるなび」の運営に加えて、「ぐるなびFineOrder」を展開する。LINEや楽天ポイントとの連携により効果的な販促活動を可能にしたのが特徴で、集客率の向上が期待できる。
スマレジ <4431> [東証G]は、クラウドPOSレジ「スマレジ」や キャッシュレス決済端末「PAYGATE」などを展開しているが、飲食店向けにオーダーエントリーシステム「スマレジWaiter」も展開している。利用客がテーブルに設置されているiPadなどの専用端末を利用することで、注文データは厨房やレジにもシームレスに情報が共有されるので、スタッフが注文業務から解放され、人件費の削減にもつながるという。
U-NEXT HOLDINGS <9418> [東証P]は、POSレジを中心にキャッシュレス決済、オーダーシステム、予約システムなどの連携機能を充実させた「USENレジ」シリーズを展開しており、その一環としてモバイルオーダーシステムを提供している。LINEと連携することで集客にも効果を発揮し、人手不足解消のほか売り上げアップにも寄与する。
●ほかにもある飲食店向けDX
タイミー <215A> [東証G]は、「働きたい時間」と「働いて欲しい時間」をマッチングするスキマバイトアプリ「Timee」を運営する。労働条件通知書が自動で生成され、そのほか想定されるさまざまな労務コストを削減できる機能を搭載しているなどの特徴があり、登録ワーカー数は775万人(24年4月末時点)に及ぶ。
インフォマート <2492> [東証P]は飲食業界の受発注システム「BtoBプラットフォーム 受発注」を展開している。Web上で受注・発注ができるシステムで、取引で発生した請求データを一元管理でき、日々の受注・発注のほか、月次決算の効率化などにも貢献する。
スタメン <4019> [東証G]は従業員エンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG」を運営している。日常的な業務連絡や日報、申し送りなどの連絡を集約するほか、業務マニュアルのWeb化や動画マニュアルの運用なども可能で、アルバイトの定着化などにも効果を発揮している。
また、今や飲食店の集客や予約に欠かせないツールとなっているのがグルメサイトだ。集客に加えてWebから予約を受け付けることで不要な電話対応をせずに済み、顧客データの収集もできることから急速に広まっており、前述のカカクコムやぐるなびはこちらがいわば“本業”。また同業で実名型グルメサービス「Retty」を運営するRetty <7356> [東証G]にも注目したい。
●省人化で広がるロボット
また、急速に普及が広まっているのが ロボットの導入だ。調理や配膳などの分野で導入が進み、人手不足の解消に貢献している。
鈴茂器工 <6405> [東証S]は、「シャリ玉ロボット」などの寿司ロボットをはじめとして海苔巻きロボット、おむすびロボット、ご飯盛り付けロボットなどを製造・販売している。同社のロボットは飲食店だけではなく、スーパーマーケットやホテル、旅館、給食などの分野で採用。また、海外売上高も全体の約3割を占めている。
アルファクス・フード・システム <3814> [東証G]は外食チェーン向けに、食材在庫管理を詳細にコントロールする外食企業専用基幹業務システムの「飲食店経営管理システム」などをASP/クラウドで提供しているほか、中国社製案内ロボットや配膳・配送ロボットも展開している。特に配膳ロボットはAIが静止位置を記憶し、配膳時の障害物をセンサーが感知しながら、AIが走行ルートを導き出して店内を走行する完全自律走行型で、納入実績を積み上げている。
UNEXTも完全自律走行型の中国社製配膳ロボットを展開している。豊富なラインアップで店舗の規模や業種に合わせたロボットを提案できるのが特徴という。
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