「窓空け下落、軸は下向きに」

著者:黒岩泰
投稿:2015/12/04 19:33

「今晩は米雇用統計も、所詮バックミラー」

 本日の日経平均は435.42円安の19504.48円で取引を終了した。朝方からドラギ・ショックを受けて全面安の商状。積極的な押し目買いも入らず、その後は下落幅を拡大させる展開となった。

 ただ、日経平均の窓下限(19451.09円)に到達すると、下落はいったんストップ。引けにかけてはやや下げ渋る動きとなり、それほど売り圧力が強くないことを示している。

 それでも日経平均の日足チャートでは、窓を空けて下落。チャートが完全に崩れており、軸が下向きに変化した可能性が高いことを示している。2万円付近にファンダメンタルズの壁(割高の壁)が存在していることになり、しばらくは下方向を目指すことになりそうだ。短期的なリバウンド余地はあるものの、いずれは18900円付近の窓に引き寄せられる展開となるだろう。

 今晩は米雇用統計だ。市場参加者が注目している経済指標だが、この指標自体にあまり意味はない。なぜならば、就職をあきらめてしまった人が失業者としてカウントされていないほか、非農業部門の雇用者数も、ある数値モデルを使った推計値にすぎない。鉛筆ナメナメの数値であることから、政策サイドの強い意思を感じざるを得ないのだ。もし、FRBが本気で利上げをしようとしているのであれば、雇用統計は強い数字が出てくるだろうし、逆に利上げしたくないのであれば、かなり弱い数字が出てくるかもしれない。イエレン議長あたりが、「利上げしようと思ったけど、こんな悪い数値ならば、利上げはできない」などと、言い訳に使う可能性もあるのだ。それくらい恣意性の高い数字であると言えよう。これをいまだにマーケット参加者が重要視しているのであるから、そのレベルは知れたというもの。当局はそういった投資家心理も巧みに利用し、金融・経済そして株価を操っている。彼らの手の中で我々は完全に踊らされているのである。

 だから、こういった経済指標をみて、右往左往するのはまったくの得策ではない。なぜならば、当局が投資家心理を操るために利用しているからであり、教科書通りに売買すると逆をつかれてしまのだ。「米雇用統計が良いから買い」「米雇用統計が悪いから売り」なんていう御託を並べても何の意味もないということになる。だいたい、どっちに反応するかも分からないのだから、こういった経済指標に対して過剰に神経質になってはいけない。夜中に米国株なんて見ていても、明け方には大逆転していることもよくある。今晩は気にせずぐっすり眠るようにしたい。所詮、経済指標なんて、これまで来た道をバックミラーで見ているようなもの。――そう割り切ってしまえば、大したイベントではないのだ。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想