ECB前に手控え強まる、中期先高期待感は根強い

著者:冨田康夫
投稿:2015/12/02 19:03

明日の東京株式市場見通し

 3日の東京株式市場は、欧州中央銀行(ECB)定例理事会での追加的な金融緩和の判断を目前にして、売り買いともに手控え姿勢が強まりそうだ。

 ただ、市場関係者からは「2万円台にようやく乗せた割には、達成感に伴う“やれやれの売り”は予想より軽微にとどまっている。一方で、中期的な先高期待感は根強いようで、中小型の材料株物色は続いている」との見方も出ており、きょうと同様に日経平均株価2万円を挟んでの売り買い交錯の状態となりそうだ。

 2日の東京株式市場は、利益確定売りに押される展開となり日経平均株価終値は、前日比74円27銭安の1万9938円13銭と反落した。ところが、東証1部の値上がり銘柄数は873、対して値下がり銘柄数は885(変わらずは163銘柄)と値上がりと値下がり銘柄数は拮抗している。とくに、ファーストリテイリング<9983>TDK<6762>といった日経平均株価への寄与度の高い銘柄の下げが目立った。

2日の動意株

 森組<1853>=後場一段高で7連騰。
同社は11月6日に16年3月期の単体業績予想を売上高で従来予想の315億円から325億円(前期比4.7%増)へ、営業利益を8億5000万円から15億円(同13.3%増)へ上方修正しており、好調な業績への評価が継続している。建設工事では工事採算が向上、大株主が長谷工コーポレーション<1808>阪急阪神ホールディングス<9042>傘下の阪急電鉄であることから、これに絡む受注増期待もある。

 フライトホールディングス<3753>=後場急上昇。
この日正午ごろ、子会社フライトシステムコンサルティングが、ソフトバンクグループ<9984>が提供する人型ロボット「Pepper」の法人モデル「Pepper for Biz」向けロボアプリの開発者などを総合的に支援する「Pepperパートナープログラム」で、ロボアプリパートナーとして認定されたと発表しており、これを好感した買いが入っている。

 フリービット<3843.T>=後場一段高。
同社は午後0時30分ごろ、子会社フルスピード<2159>と共同で開始した訪日外国人観光客向けメディア事業を刷新すると発表しており、業績への寄与を期待した買いが入った。まず、第1弾として発刊したフリーペーパーを刷新し、名称を「ゴウウータオ SHOPPING JAPAN」から「GO日本(ゴージャパン)」と改め、隔月10万部の発刊を12月より開始する予定。

 シャープ<6753>=買われる。
きょう付の読売新聞で、「官民ファンドの産業革新機構は、シャープの株式の過半を取得する検討に入った」と報じられており、これを好感した買いが入っている。記事によると「シャープ側は不振の液晶事業を本体から切り離して別会社にした上で、革新機構などの出資を受けることを軸に検討している」という。シャープは経営再建の中でこれまで以上に抜本的な構造改革が求められており、革新機構による子会社化でそれが進むとの期待がある。また、需給面での思惑も働いているようだ。

 日精樹脂工業<6293>=5日続伸。
射出成形機では専業メーカーとして国内屈指の実績を有し、前日発表された7~9月期の法人企業統計で全産業の設備投資額が前年比2ケタの伸びを示すなかで、企業の投資意欲が追い風として意識されている。16年3月期営業利益は前期比7%増の24億5000万円を見込んでいるが、製品ミックスの改善効果が発現しているほか、受注も好調に推移しており、市場では上方修正観測が浮上している。

 オンコリスバイオファーマ<4588>=続急伸。
1日の取引終了後、同社が開発中の検査薬「OBP-401(テロメスキャン)」を用いた血液循環がん細胞(CTC)の測定が、米創薬会社の抗がん剤開発の臨床試験で有効性の検証に用いられることになったと発表しており、これを好感した買いが入っている。同社では、がん検査薬テロメスキャンをキナーゼ阻害剤の開発に特化した米ディサイフィラ社(マサチューセッツ州)へ販売しているが、検証実験を経て、新規分子標的抗がん剤開発の臨床試験における副次的な有効性評価項目測定のために活用されることになったという。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想