金相場からドル円を眺めてみる

著者:菊川弘之
投稿:2015/11/06 16:59

雇用統計の注目点

 ドル円は、再び年内の米利上げ観測を受けて200日移動平均線を回復、122円水準まで値を戻してきた。一方、ドルと逆相関のNY金は、200日移動平均線を割り込み、前回の雇用統計発表前の水準にまで値を沈めている。1100ドル以下は、今年何回か安値を買い拾われた下値支持水準でもある。今晩の雇用統計が年内利上げを示唆するような強気予想になることを織り込みながら、足元は推移してきた訳だが、よほど強気の数字とならなければ、ドルの上値・NY金の下値は限定的、もしくは一時的になる可能性も想定される。FRB当局者の最近の発言を見ると、年内利上げに向けた地ならし的な感触も受けるが、仮に年内利上げが実施されても、その後の利上げのペースは緩やかで小幅なものになる事が予想され、既に年内利上げ観測のかなりの部分を織り込みながら推移してきたが故に、利上げ観測に伴うドルの高値・NY金の安値は、大きなものにならないのではないか?特に、NY金の1080ドル水準は、長期上昇トレンドの半値押し水準であり、モノの顔としての生産コストも意識される水準である。

 NY株価も実体経済が回復しての上昇ではなく、中国の緩和や、欧州・日本の追加緩和期待などから反発し史上最高値圏まで値を戻しているだけで、実際に年内利上げ観測が高まると、利食いを含めた巻き戻しの売りが出やすいだろう。強い雇用統計が株安に繋がると、ドル円はファーストアクションで買われても、株安によるリスク回避で売られる流れもあろう。雇用統計が強気となった場合は、今回はNY株価の反応がより重要だ。利上げに対する耐久性が出てきたのか、それとも、これまで同様、引き締め観測にマイナスで反応するかに注意を払いたい。また、最近は静観視しているが、ドル高に対する米財務省当局者発言にも注意だ。ドル円の125円水準では牽制が入る可能性もある。

 反対に弱気の雇用統計となった場合は、10月~11月初旬にかけて動いた調整の展開となろう。この場合は、ドル円もNY金も、新たなトレンド発生ではなく、これまでのレンジを継続して、改めて12月の利上げ動向を各マクロ経済指標で見極めようとする流れとなろう。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想