短期金融相場が来た

著者:堀篤
投稿:2015/10/26 18:35

◆短期金融相場が来た

ここへ来て、市場をめぐる環境は大きくかわりつつある。
先週一週間の市場の雰囲気は、これまでと潮目が変わった、と言わざるを得ないだろう。

その正体は、世界的な短期金融相場の到来だ。
米国が金利引き上げを見送り、欧州が年末に量的緩和の追加を示唆し、中国が金融緩和に出た。
この動きに、資金は敏感に反応している。

今年春頃までは、米国の景気回復により、世界経済は上向き、企業業績を中心とした株価の価値形成が進むことで、世界の株式市場は、景気回復を前提とした、次のステップへ移行すると思われてきた。
しかし、中国経済の失速はアジア圏のみならず、難民問題が直撃した欧州経済にも大きな影響を与えつつある。このことが、徐々に景気回復シナリオに疑念を抱かせ、株式市場は、方向性を失いつつあった。
景気が思ったほど浮上しない、それどころか、まだ大きなダウンサイドリスクを持っている、という認識が、世界の共通認識になりつつあるのだ。

しかし、先週から欧州、中国の金融緩和措置がニュースになり、市場の雰囲気は一変した。
景気への不安よりも、金融緩和という飴玉に、株式市場はついていったと言える。そこに、短期的ではあるが、金融相場的上昇期が来た可能性がある。
特に、東京市場は、狙われやすい。日銀はまだ金融政策の態度を鮮明にしておらず、「追加緩和があるだろう」と予測する専門家が多いからだ。
実際、先週の東京市場の強さは、近時にないものだった。もちろん、PKO的な買いも散見されているが、それ以上に、世界的な金融緩和、そして日銀の追加緩和を催促する買いが本格的に入ってきたように感じる。


◆金融株の動きを見る

このような上昇が断続的に続く可能性は十分に高い。
今週からは、FOMCでの要人の発言などにも注目がいくが、恐らく景気への楽観論は少ないのではないだろうか。
これまでは、景気への慎重論が出ると、相場は気迷いの動きを見せたが、今後は、上昇する可能性がある。金融緩和を想定するからだ。
逆に、FRBの金利引き上げ時期が早期になる観測が出ると、下落するような相場になるのではないか。
特に見ておくべきは、金融株だ。


みずほFG、野村HDなど、動きの良い金融株を観察しておくべきだろう。金融株のボラティリティは上がり、短期売買になじむ環境ができてきた。


◆11月以降の市場観測は強気に変更か

前回のコラムまでは、11月4日の郵政上場以降の市場環境には疑問を持っていた。従って、そのころからは空売りを軸にすることを勧めていた。

しかし・・・

中国の金融緩和で、状況は変わったと言える。
代表的な企業の業績下方修正が続いたとしても、金融相場的な展開がそれを、カバーしてしまう可能性が出てきた。
さらに、日銀の追加緩和についても、私は否定的だったが、これも中国の金緩和によって、多少の可能性が出てきた、と言える。
その結果として、東京市場は、もう一つ水準を引き上げるだろう。21000円に、年内にタッチするかもしれない。

ただし・・

このシナリオは、決して「好ましい」シナリオではない。目の前の壁を乗り切るには良いだろうが、そのあとの継続的な上昇が難しくなる、という副作用があるだろう。
もちろん、日銀がそこを気にするなら、追加緩和は無い。
ここは政策判断で、予測がつけづらいところだ。

11月~12月にかけ、力強い相場が来たとすると、その反動は年末、あるいは来年早々に来るだろう。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想