「上方の窓を一部埋め、戻り売りの好機」

著者:黒岩泰
投稿:2015/09/30 19:51

「買い方は、最終脱出地点」

 本日の日経平均は457.31円高の17388.15円で取引を終了した。海外市場の落ち着いた動きを受けて、日経平均は買い先行の展開。その後はTPP関連銘柄などが買われ、さらに上値を試す展開となった。月末、期末ということもあり、ドレッシング(お化粧)買いへの期待も。前日の急落の反動もあり、後場に入ってから上昇幅を拡大させた。

 ただ、日経平均の日足チャートでは、テクニカル・リバウンドの域を出ていない。単に上方の窓(17366.95円―17562.60円)の一部を埋めただけであり、短期的な戻りであることを示している。この窓が強い抵抗帯として機能しており、明日には再度下値を試す動きとなりそうだ。

 「窓理論」では、上方の窓を一部埋めたことで、今度は下方の窓を埋める順番となる。短期的には上方の窓上限(17562.60円)までの上値余地はあるが、それ以上の上昇は許容できない。すぐに昨日埋め残した下方の窓(16864.34円―16901.49円)を目指すことになり、明日にも到達する可能性があるだろう。当然、軸が下向きのままであることから、その勢いで、さらに下方の窓(16533.91円―16592.57円) を埋めるかもしれない。今回の下落相場の短期的な下値メドはこの水準であり、あと850円程度の下落余地があると考える。

 したがって、この戻り局面は「絶好の売り場」となる。これから起こりうる悲劇の「最終脱出地点」でもあり、投資家は「一定の覚悟」を決めなくてはならない。のちに、「あのとき売っておけば良かった」と後悔するポイントであるということだ。そのつもりでこのリバウンド相場を眺めなければならない。

 日経平均8500円から見れば、今の株価水準は「倍」である。20900円の高値から下落したとはいえ、まだ17%程度。富士山で言えば、まだ8合目あたりであり、十分な“下山余地”はあるのだ。「もう、そろそろ下げ止まるのではないか?」などと考えるのは自由だが、現実はそんな甘いものではない。中国バブルの崩壊は確定的だし、各国政府・中央銀行も政策の限界に近づいている。いったん「創造的破壊」が起きても何ら不思議ではない状況であり、そのつもりで相場と対峙しなければならない。そのような意味でも、証券会社の言う「郵政上場を成功させるためには国が相場を支えますよ」的なセールストークは、一切耳を貸さないほうが良いだろう。そもそも小泉政権下での郵政民営化の動機が不純。結果的に郵政上場は、ゆうちょ・かんぽが保有する巨額資産を外資に売り払うのが目的であり、個人投資家の損得なんて二の次、三の次なのだ。売却資金を復興財源に充てるというが、オリンピックで血税を浪費しようとしていることもあり、そこには矛盾を感じざるを得ない。あとになって維持・管理に困る巨大スタジアムを建設し、結局、大手ゼネコンに金をバラ撒いているだけだ。外資や巨大資本のための政治が行われており、庶民は切り捨てられている。そういえば、「NISA」なんていうのもあったなあ。これも株価上昇のために、個人マネーを利用しただけ。アベノミクスとはそういうものだ。だから、「GDP600兆円」なんて誇張したところで、誰も見向きもしない。具体策がまったくないからだ。株価が下方向に向いている以上、買いだけで立ち向かうのは至難の業。信用売り・先物・オプションなどを駆使しながら、この強敵に立ち向かわなければならない。日経平均8500円までの道のりはかなり長い。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想