「弱気相場が継続、下方の窓埋めへ」

著者:黒岩泰
投稿:2015/06/26 19:04

「上海株急落もリスク要因」

 本日の日経平均は65.25円安の20706.15円で取引を終了した。朝方はもみ合いスタートとなったものの、ギリシャ問題への警戒感などから、一時下落幅を拡大。それでも後場に入ってからは、日銀ETF買いへの期待もあり、下げ渋る動きとなった。

 日経平均の日足チャートでは、連日で陰線が出現。弱気相場が継続していることを示唆しており、先安観は残っている。短期的には下方の窓(20433.30円-20531.13円)までの下落余地があり、あと270円程度は下落できそうだ。

 市場が警戒しているのは、ギリシャ問題の行方。現時点でも平行線を辿っており、月末までに決着するかは不透明。場合によっては、いったんテクニカル・デフォルトのような形となり、トロイカがギリシャを見放すかもしれない。ギリシャ国内で混乱が起き、政治的な動揺が高まったあとに、ギリシャ政府が妥協するといったシナリオのようにも思える。いずれにせよ、ギリシャのユーロ圏からの離脱は大きな流れからは想像しづらく、最終的には「雨降って、地固まる」というふうになるのだろう。

 そのようななか、米国ではTPA法案が成立する見通しとなっている。大統領に交渉の権限を移譲するこの法案は、日本にとってもTPP加盟へ大きな布石となっている。それが成立したのだから、早ければ来月にも日本のTPP加盟が正式に決定することになるのだろう。安倍政権もそれを願っている。

 だが、ご存知の通り、日本によってTPP参加は、ある意味、主権を喪失する危険な行為である。「ISD条項」という外国企業が日本政府を訴えることができる制度が盛り込まれており、これによって日本の資産・既得権益が侵される可能性が高いからだ。TPPを単なる自由貿易協定と思っているのであれば、それは大きな間違い。米国が日本をより属国にする手段であり、日本国民にとってはマイナスの面が多いのだ。仮にマーケットがTPP加盟を好感して上昇するのであれば、それは完全なる勘違い。日本の企業が不利益を被るケースも十分に予想され、株価はマイナスで反応すべきなのだ。

 また、TPPに加盟すれば、「脱原発」のシナリオも遠のくことになる。日本と米国は以前から「日米原子力協定」なるものを結んでおり、この協定にしたがって日本は米国から濃縮ウランを輸入している。いわば「お客さん」であり、もし、政府が原発再稼働を中止した場合には、米企業から訴えられる恐れが高まるのだ。財政危機にあえぐ米国が、日本を「お財布代わり」にしようとしているということ。ゆうちょ・かんぽ資金を強奪する「郵政民営化」と同様の流れであり、日本国民はその点を理解しなければならない。

 なお、本日は上海総合指数が7%の急落。「中国がくしゃみをすれば、日本が風邪を引く」という時代でもあり、週明けのインバウンド関連には注意をしたい。中国バブルが崩壊すれば、いわゆる「爆買い」連中が訪日しなくなるとの連想が働くからだ。日本株の「軸下向き」を後押しする材料になり、日経平均は下方の窓を一段と埋めやすくなるだろう。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想